巨大リコールが襲う新生GM 女性CEOに負の遺産
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0900W_Z00C14A4000000/
日本経済新聞 2014.4.9

4月1日から2日間にわたり、米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)はGMリコール問題に関する米連邦議会の公聴会での集中砲火に耐えた。固い口調を保ち、感情もほとんど見せずに、バーラ氏は謝罪。現在のGMは「新生GM」であると繰り返し強調し、徹底的な調査の実施を約束した。

米上院商業科学運輸委員会で証言するGMのバーラCEO。大事故につながる欠陥の事実を把握しておきながら、その事実を公にしてこなかったと指摘され、同社は「隠ぺい体質」だとして批判を浴びた(2日、ワシントン)=ロイター
しかし、バーラ氏が上下院の証言席に数時間つくなか、ネット上の掲示板やちまたの会話の中ではこんな疑問が繰り返された。「バーラ氏はGMの犠牲になるのか?」
2日に、ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のトーク番組「On Point」に電話をかけた人がいたように、人々がこの疑問を抱くのは当然だ。バーラ氏はデトロイトを代表する同社初の女性CEOだ。就任は1月15日付で、CEOになってまだ3カ月もたっていない。バーラ氏はGMトップ候補の一人だったが、実際にCEO就任が決まると、そのタイミングの早さと、女性であるという2点で驚きの声が聞かれた。
■「いけにえ」の臆測
バーラ氏はダン・アカーソン前CEOの後継として最有力候補とみられていたが、デトロイトでも2014年のここまで早い時期に就任すると予想した人はあまりいなかった。そして、アカーソン氏が(後継者として)育ててきたにもかかわらず、バーラ氏がいずれCEOに就任するというのは「既成事実」ではなかった。自動車業界で白人男性の圧倒的優位はまだ厳然として残っている。バーラ氏が昨年10月に次期CEOに決まった時点で、GM、フォード、クライスラーの3社で女性の上級役員はわずか14人だった。
ここにきて当然ながら、バーラ氏が上層部におけるある種の「いけにえの子羊」のように仕立て上げられたのではないかという臆測がとんでいる。この臆測に沿って考えると、アカーソン氏は何が起こるか予想がついていて自分は逃げ出し、これから起こることに対して、何も知らなかったバーラ氏を盾に使ったということになる。
バーラ氏は下院の委員会で、昨年12月に初めて「シボレー・コバルト」に不具合が生じていると聞き、GMの経営陣が全容を知らされたのは1月31日だったと証言した。この時、同社は「シボレー」「サターン」「ポンティアック」の最初のリコールを発表した。
バーラ氏が意図的に犠牲者に仕立てられたという発想は性差別であるだけでなく、リーダーシップの根本的な原則を無視するものだ。上級役員という立場では、どんな時も危機に対処する準備ができていなければならない。だからこそ、彼らには責任があり、その分、報酬も得ている。
バーラ氏は、リコールという積み荷を乗せた列車が自分に向かってきているとは知らなかったかもしれない。しかし在任期間のどこかで大問題がおきて自分がスポットライトを浴びる時がくるのは、あり得ることだった。
自動車メーカーのトップたちはだれでも、GMのように政治的に非難を浴びるのではなくても、自社の名前がニュースの見出しに書き立てられるような批判に直面せざるを得ない。
■新生GMに転機
居心地は悪いだろうが、今回の一件でバーラ氏にはチャンスが来たともいえる。アカーソン氏はこれまでずっと、GMの伝統に縛られた企業文化に悩まされ、変革を切望してきた。バーラ氏は、過去のコスト至上主義を追放し企業価値を書き換えた「新生GM」を指揮していると強調した。
議会がバーラ氏を震え上がらせようとしたのと同じくらい、バーラ氏には会社を奮い立たせる勢いがある。歴史が示す通り、危機は企業の風土を変革する転機だ。もしバーラ氏が本気でGMを変えようとするなら、同氏自身や同社を取り巻くまさにこの状況ほどの好機はないだろう。
By Micheline Maynard, Contributor