もう続けちゃうもんねw
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#02:NORAに騙されて
出てきたのは、一見中年の女性。だが、ワタシのデッサン力は違和感を感じていた。
半身を引いて、中をうかがう。
中からは、ノラ・ジョーンズが聴こえてきた。
店にいるのは、違和感のあるママが一人だけ。客は誰もいない。
あのカウンターはそのままだ。イスも、後の鏡も、壁紙も、バックBARも。物が減ってすっきりしてはいるものの、あの空間はまだそこに在った。
少しの拍子抜け気分と同時に、懐かしさがこみ上げてきた。
ここは仲の良いあのバーテンダーが、初めて開いた自分のお店。そしてワタシが始めてこの街を楽しいと思った場所。この地下の狭い空間で、そのバーテンダーと、そしてたくさんの人と出会って笑った、そんな場所。たくさんの友達ができたし、たくさんの友達を連れてきたっけ。
しかし、その懐かしい空間に足を踏み入れるには、目の前にいるデッサンの狂ったママをどうにかしなくてはならない。
意を決して話しかける。
「あの、この場所ってBAR・・・でしたよね?」
「あ、そんなことを聞いたような気もするわ。それよか飲むの?だったらうちでどぉ?」
いきなり全力で営業を仕掛けてくるママ。
肉の固まりに猛獣が食らいつかんばかりの勢いを笑顔で隠し、ワタシに迫ってくる。
ワタシは体を店の外に置いたまま、話を続けた。
「ここは・・・スナック? ですか?」
「そうねぇ、なんていっていいのかしらぁ」
この時点で、ワタシは確信した。
「オカマ・・・BAR、ですか?」
「・・・そうねぇ、そんな感じかしら」
ゲイBARを想定していたワタシに、安堵の気持ちが湧き上がる。ゲイBARなら身の危険を考える必要もあるが、オカマBARなら安全度は高い。
そんなワタシの気持ちを察したのか、ママが畳み掛けてくる。
「ねぇ、どう?安くしてあげるから飲みましょうよぉ」
「安くって・・・ここ、いくら?」
「本当はね、1万円。あ、でもぉ、食べ放題だし飲み放題だしぃ、歌い放題、朝まで居たって1万円。ね、そう考えると安いでしょぉ」
「い、いや、そんな金ないし、時間もあまりないし・・・」
時間の無いのは本当だった。明日は仕事が早いので、早々に切り上げる予定だったのだ。しかも仕事でタクシーに何度も乗る予定だったので、お金もそんなには使えない。
「えー、じゃあ、いくらなら払えるのぉ?」
猛獣はワタシを咥えて離そうとはしない。正確にはワタシのポケットの中にある、たった1枚の1万円札に喰らい付きたいのだろう。
「ねぇねぇ、半分の5千円でもいいわよぉ」
まだ計算は成り立たない。
が、好奇心も衰えない。
「5千円でも無理だって」
「いくらでもいいわよぉ」
どうやらお茶っ引きになるなら、ディスカウントしてもいいから客が欲しいらしい。
半分、諦めてもらうつもりで答えた。
「うーん、使えるのは2千円までだな」
「いいわよぉ、それで」
曲はいつの間にか、サッチモに変わっていた。