前回の投稿でいただいた返信が私の紹介した資料に対する批判なのか、私の意見に対する批判なのか区別がつきにくかったため、今回は資料と意見で分けて投稿してみます。これは資料の投稿です。
資料1 「国際信義と公娼廃止」(報知新聞 1931年4月5日)
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これは1931年(昭和6年)に国際連盟の実施された「東洋における婦人児童売買実地調査」についての新聞記事です。
この調査は1910年の「醜業(※売春業)を行わしむるための婦女売買の禁止に関する国際条約」や1921年の「婦人児童の売買禁止に関する国際条約」に基づく調査のようです。
日本はこの条約を批准していたため、現在の慰安婦問題を議論するときに話題になることもあります。
資料2 「婦女売買の実地調査 連盟調査委員の入城」(京城日報1931年6月4日)

この調査は朝鮮でも行われました。日本統治時代ですから、日本政府の意向をうけた朝鮮総督府が対応しています。
調査を実施するに際して、調査団は質問書を日本政府に渡していたようです。そこで調査団はどのような質問をして、朝鮮総督府がどのように回答したのか抜粋して見ていきます。
(質問)将来においてこの国際的弊害(※婦人児童売買)と戦うべき貴国政府の計画及びその計画成功の予想は如何
(回答)朝鮮においては婦人児童売買の事実はこれを認めざるもって積極的にこの国際的弊害と戦うべき計画なし。しかれども消極的にこれが発生を予防禁圧するため、停車場及び港その他出入多き場所においては常に警察官を配置し、これが監視に努め不法または不当なる行為の行われざるよう留意するのほか、一般紹介営業として渡航婦女のため職業紹介所の取締りをなしつつあり。
(質問)過去5カ年の各年において他人の情欲を満たすための不道徳的目的をもって婦人または児童を周旋、誘引、または誘拐せるを発見せられたる者及びこれらの犯罪未遂を発見せられたる者に関する事実の中、国際連盟に未報告の分の詳細を提示されたし(1910年の条約第1条及び第2条、1921年の条約第3条)。
(回答)最近5カ年の各年において略取誘拐の罪により検挙せられたる者にして1910年条約第1条第2条及び1921年条約第3条に該当する者の数・国籍等は別紙のとおり(別紙第3号)。

1 国内のみの者
1925年 17歳 甘言を以って誘拐し飲食店にて前借せんとして未遂に終わりたるものなり 1926年 20歳 婦女を誘拐し前借せしめてこれを詐取せんとしたるも未遂に終わりたるものなり 1926年 17歳 ハルピンに誘拐せんとするを車中にて発見され未遂に終わりたるものなり 1927年 18歳 嫁に媒酌すべしと詐称し飲食店にて前借せしめ詐取したり 1927年 17歳 良夫を媒酌し裕福なる生活をなさしむべしと詐称し前借せしめたり 1927年 19歳 同上 1927年 17歳 貧女に対し裕福なる生活をなさしむべしとして前借せしめたり 1927年 18歳 同上 1927年 18歳 同上

2 国外に亘る者
1927年 20歳 家出し数ヵ月後父宛ての手紙により誘引せられし奉天にて前借飲食店にいる旨通信あり 1927年 不詳 全南光州にて酌婦稼業中誘引せられて支那奉天料理屋にて前借せしめられたり 1925年 15歳 富豪の養女または富豪に嫁がせしめ将来生活の安定し保護すべしと詐り売買したり 1925年 15歳 同上 1925年 15歳 同上 1925年 16歳 同上 1925年 17歳 同上 1925年 18歳 同上 1925年 18歳 同上 1925年 18歳 同上 1925年 18歳 同上 1925年 18歳 同上 1925年 19歳 同上 1927年 6歳 同上 1927年 6歳 同上

1 国内のみの者
1927年 21歳 朝鮮人男1名支那人3名とともに共謀、被害者を良家の養女に世話すべしと欺罔し飲食店に前借なさしめ、うち30円を騙取す 1924年 26歳 夫婦となるべしと詐称し内縁関係を続け飲食店にて前借せしむ 1926年 21歳 婦女を誘拐し前借せしめ、これを詐取せんとしたるも未遂となりたり
2 国外に渡る者
1924年 22歳 京城カフェー女給より誘拐せられて支那ハルピンまたは天津前借したり 1927年 22歳 富豪の養女または富豪に嫁がせしめんと甘言し、もって売買す
(参考)醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女売買禁止ニ関スル国際条約
第一条
何人たるを問はず他人の情欲を満足せしむる為醜業を目的として未成年の婦女を勧誘し誘引し又は拐去したる者は本人の承諾を得たるときと雖又右犯罪の構成要素たる各行為が異りたる国に亘りて遂行せられたるときと雖罰せらるべし
第二条
何人たるを問わず他人の欲情を満足せしむる為醜業を目的として詐欺に依り又は暴行、脅迫、権力乱用其の他一切の強制手段を以て成年の婦女を勧誘し誘引し拐去したる者は又右犯罪の構成要素たる各行為が異なりたる国に亘りて遂行せられたるときと雖罰せらるべし
韓国人の翻訳のため簡単に書くと、調査団の「売春目的の人身売買について将来的に朝鮮総督府はどのような対策を考えているのか」という質問に対して、朝鮮総督府は「朝鮮では売春目的の人身売買は行われていない。したがって積極的な対策は考えていない。ただし、今後も行われることがないように警察による予防的な監視を続け、渡航する婦女のため職業紹介所を取り締まりつつある」と回答しています。
また「過去5年間に国際連盟に報告されたもの以外で売春目的で斡旋や誘拐された夫人や児童がいたか」という質問に対して、上の表のとおり30名程度を検挙したと回答しています。
この資料に関する私の意見はまた別に投稿する予定です。
(※)しゃおこーbe 10-11 23:34:52 により修正(ありがとうございました)
------------------データ追加「朝鮮総督府統計年報」より---------------------
【略取及び誘拐】
発生 検挙 検挙者 日本人 朝鮮人 その他 1935年 1,528 1,559 2,482 24 2,450 8 1936年 1,477 1,509 2,304 21 2,271 12 1937年 1,164 1,173 1,853 38 1,804 11 1938年 1,123 1,136 1,709 10 1,699 0 1939年 1,191 1,188 1,865 16 1,849 0 1940年 943 951 1,480 16 1,464 0