アメリカでは、イギリスの植民地時代から陪審制が導入されていました。
独立後も多くの州で陪審制度が維持され、1787年に制定されたアメリカ合衆国憲法第3編は、すべての犯罪の公判は陪審裁判によってなされなければならない旨を規定しました。さらに、第5修正は刑事大陪審を、第6および第7修正は刑事及び民事事件で陪審を受ける権利を保障しました。
その後、陪審は、連邦及び州の刑事、民事事件に広く導入され、今日まで、アメリカ社会において重要な役割を果たしています。
◆陪審の人数と評決の成立に必要な多数
(State Court Organization: http://www.ncsc.org/microsites/sco/home 2016.4.による)
・民事小陪審(courts of general jurisdiction について)
12人:22州,8人:3州,6人:13州,5人:1州,12/6人:8州,12/10人:1州,12/8人:1州,8/4人:1州。
全員一致:22州,5/6:14州,3/4:12州, 2/3:1州,5/6 or 3/4:1州。
・刑事小陪審(重罪について)
12人全員一致:43州,12/6人全員一致:3州,12/8人全員一致:1州,8人全員一致:1州,その他:2州(as of May 2013)。
・刑事大陪審――23人から5人まで多種多様,必要多数も多種多様。役割についても,CAのように市民のためのオンブズマンの役割を果たさせるところもある。
(4) 連邦制――国のあり方
◆unitary state(単一国家)
◆federal state(連邦国家)――国法(米国の場合は合衆国憲法)上の国家の結合,連邦の法は各state の国民にも直接効果を及ぼす。
◆confederation of states(国家連合)――条約に基づく諸国家の平等な結合,諸国家の関係は国際法上の関係]
◆“Federal”のことば――中央集権的/地方分権的
◆「連邦(federal)」の言葉=「合衆国(United States)」と同じ意味で用いることが多い。
① 州が第一次的統治権を持つ
◆制度的にも――連邦は合衆国憲法によって州から委譲された権限のみを行使できる。州の統治権は一般的,連邦の統治権は合衆国憲法に掲げられたものに限られる。
◆歴史的にも
13州の独立:1776年7月4日。
合衆国(The United States of America)の成立:合衆国憲法の発効日――1788年6月21日(合衆国憲法が必要な邦の承認を得て成立した日)
(合衆国憲法が憲法制定会議で可決された日=1787年9月17日)
(国家連合であるアメリカ連合を成立させた連合規約が大陸会議で可決された日=1777年11月15日,連合規約がすべての邦の批准を受けアメリカ連合が成立した日=1781年3月1日)
② 法の形成という面でみると,実体法については,一般刑法や民法や商法の分野などは合衆国(連邦)にそれを形成する権限が与えられておらず,州の議会や裁判所によって形成された州法が適用される。
もっとも,刑法の領域でも,麻薬事件,密輸事件,郵便事件などについては連邦の刑法の適用があり,その執行のための連邦刑訴がある。
民事については,連邦法事件および州法が適用される事件について連邦裁で処理される場合があり,その関係で連邦民訴がある。
なお,憲法については,州憲法もある(念のため)。
合衆国(連邦)が扱うことができるためには,合衆国憲法上の権限(たとえば州際通商・歳出権限・郵便権限)の根拠が必要。
※ 米国民事訴訟手続の概要
○訴状(complaint)の裁判所への提出;裁判所による呼出状(summons)の発行
↓
○訴状・呼出状の被告への送達(service)(または呼出状送達の省略〔=免除〕の依頼の郵送)
呼出状の文面(要旨)
あなたに対して訴訟が提起されました。この呼出状があなたに対して送達された後21日以内に,あなたは,添付の訴状に対する答弁書または[訴えの却下を求める]申立書を原告に送達しなければなりません。もし,あなたがその対応をしなければ,訴状で請求された救済についてあなたが敗訴の欠席判決が下されることになります。併せて,答弁書または申立書を裁判所に提出することも必要です。
呼出状送達の省略〔=免除〕の依頼の文面(要旨)
あなたに対して訴訟が提起されました。訴状の写しを添付しています。この書面は呼出状や裁判所からの正式の通知ではありません。これは,費用節約のために,あなたが正式の呼出状送達を免除するよう求める依頼状です。費用を節約するためには,本状の発信日から[ ]日(30日以上)以内に,同封の免除書面に署名のうえ,返送して頂くことが必要です。
あなたが免除書面に署名のうえ返送して頂ければ,わたしはそれを裁判所に提出します。その場合には,免除書面が提出された日に呼出状送達があった場合と同様に訴訟が進行します。あなたは,本状の発信日から60日以内に訴状に対する答弁[答弁書または申立書の送達・提出]をする必要があります。
↓
○21日(60日)以内に答弁書(answer)または訴えの却下を求める申立てがなされないとき→欠席判決(judgment by default)の申立て
↓
○訴えの却下を求める申立て(事物・対人管轄権の欠如;裁判地の不適正;訴状・呼出状の不適切;送達の不適切;救済が与えられうるような請求の原因を主張していないこと(motion to dismiss for failure to state a claim upon which relief can be granted; demurrer))→訴えの却下
↓
○答弁書の原告への送達,裁判所への提出→事実・法律問題について争う。
↓
○開示手続(depositions(証言録取書); written interrogatories(質問書); production of documents or things or permission to enter upon land or other property(文書・物件の提出,土地等への立入許可); physical and mental examinations(身体検査・精神学的検査); requests for admission(自白の要求))
両当事者は一定の事項について自発的に開示をすることが求められる(required disclosures〔義務的開示〕)
↓
○略式判決(summary judgment)の申立て――書面証拠によって主要事実に関する争いが現実には存在しないthere is no genuine dispute as to any
material fact ことが証明でき,その争いのない事実に法を適用すると当然に自分が勝訴することを主張できる場合に認められる。
↓
○事実審理前協議(pretrial conference)
↓
○事実審理(trial)(陪審が用いられる場合)
陪審の編成
冒頭陳述(opening statement)
証拠調
原告の主たる証明(case in chief)
原告側証人① 直接尋問(direct examination)→反対尋問(cross examination)→再直接尋問→再反対尋問[直接尋問における誘導尋問(leading questions)の禁止]
原告側証人②…………
原告の主たる証明の終了(rest)
↓
○法律上当然の判決(judgment as a matter of law);指図評決(directed verdict);訴えの却下(nonsuit; involuntary dismissal)を求める申立て
↓
被告の主たる証明(case in chief) [法律上当然の判決を求める申立て]
原告の反証(rebuttal) [法律上当然の判決を求める申立て]
被告の反証(surrebuttal / rejoinder) [法律上当然の判決を求める申立て]
最終弁論(closing argument)
原告→被告→原告
↓
○陪審に対する説示(charge; instruction)
↓
○陪審の評議(deliberation)
↓
○評決(verdict)――general verdict / special verdict
↓
○判決の登録(entry of judgment)
↓
○法律上当然の判決を求める再度の申立て(renewed motion for judgment as a matter of law ) ; 評決無視判決を求める申立て( motion for judgment notwithstanding the verdict; judgment non obstante veredicto; judgment n.o.v.)
○再審理の申立て(motion for a new trial)

アメリカでも捜査の主体は警察です。警察は捜査した事件を検察官に送致します。検察官は、送致を受けた事件を振るいにかけ、事件処理の方針を決め、「公訴提起」と「公判維持」が仕事です。基本的には日本と同じです。
ただアメリカでは、訴追する場合には、逮捕後48時間以内に裁判所に訴追状を提出し、また被疑者を裁判所に連行して保釈条件の設定をしなければなりません。これらの手続きは検察官の仕事です。
この「訴追」とは、起訴ではありません。訴追の後、「予備審問」を経て起訴になりますが、この一連の手続きは、法廷で検察官が関与して行われます。この間に、検察官と弁護人との間で司法取引が行われて有罪ではあっても起訴に至らないこともあります。
なお、「予備審問」の代わりに「大陪審」といって起訴するかどうかだけを決める陪審もあります。
この正式起訴に至るまでの、「訴追」から「予備審問(大陪審)」の手続きは日本にはありません。これらの手続きは、証拠の保全や開示の重要なチャンスとなるのですが、主役は当然検察官です。
このようにアメリカでは早い段階から法廷で検察官が関与して事件を振るいにかけながら起訴に向けて進んでいきます。
警察の仕事と検察の仕事は、日米で基本的には変わらないのですが、そのやり方は全く違っています。それは、日米で裁判のあり方が全く違っているからです。日本では、捜査段階での供述(調書)が決定的でした。捜査は有罪の証拠集めが目的です。アメリカでは法廷での証言がすべてです。法廷での証言が決定的なアメリカでは、公判を担当する検察官が早い段階から自ら事件に関与するのは当然なのです。