(いつもどおり、引用先はwiki)
法律用語としての緊急避難
法学における緊急避難とは、急な危険・危難を避けるためにやむを得ず他者の権利を侵害したり危難を生じさせている物を破壊したりする行為であり、本来ならば法的責任を問われるところ、一定の条件の下にそれを免除されるものをいう。
刑法、民法、国際法においてそれぞれ意味が異なるので、以下、個別に検討する。
刑法上の緊急避難
刑法における緊急避難は、人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益(生命、身体、自由、または財産など)を守るため、他の手段が無いためにやむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪とはならない(違法性が阻却される)というものである。刑法37条1項本文に規定されている。
もしも生じてしまった損害が避けようとした損害よりも大きければ情状によって刑が減免されうるに過ぎない。これを過剰避難(かじょうひなん)といい、刑法37条1項但書に規定されている。
以下、緊急避難の概念を、具体例を挙げて説明する。
船が難破して乗客のAとBが海に投げ出された。そこに一人ならつかまって浮いていられるが、二人なら沈んでしまう程度の大きさをした舟板が流れてきた。この板につかまって救助を待つよりほかに助かる術は無い。二人はこの板につかまろうとしたが、AはBを蹴り離して溺死させ、その後Aは救助された(いわゆる「カルネアデスの板」)。
Aが道を歩いていると、鉄パイプを持った暴¥漢に突如として襲われた。Aは逃げたが追いつめられ、仕方が無いので赤の他人であるBの家へ勝手に侵入し、ここに隠れて難を逃れた。
心臓発作を起こし路上で倒れたB。通りかかったAが救急車を呼ぶ一方で閉胸心臓マッサージを施したが、余りに強く押したのでBの肋骨にひびを入れてしまった。(=応急手当)
Aの行為は、通常ならば殺人罪や住居侵入罪、過失傷害罪として罰せられる。しかしこれらの行為は、生命身体という正当な利益が危険に晒されており、その危険を回避する手段が他に無いためやむを得ずしたものである。そして、生命身体への侵害を回避したことによって生じる損害の方が小さいか少なくとも同等であるので、Aの行為は緊急避難であるとして犯罪にはならないこととなる。
この緊急避難と似た概念として刑法36条1項に正当防衛が規定されている。正当防衛も緊急避難も、本来なら処罰される不正な行為であっても一定の理由がある場合には例外として刑事責任を問われない、という点は共通している。しかし以下のように異なる点もある。
まず緊急避難は危険を回避するために他の手段が無く、やむを得ずした行為でなければならない。これを補充性の要件という。上記2の例で考えてみる。仮に交番がすぐ近くにあってそこへ逃げ込むことができたのに敢えて暴¥漢に立ち向かったとする。この場合、正当防衛が成立する余地はある。しかし交番へ逃げ込むという他の手段があるのに敢えてBの家に上がり込んだのであれば緊急避難は成立しない。
また、危険が回避されたことで得られた利益とそれによって侵害されてしまった利益を比較することが要件になっているのも正当防衛にはない特徴であり、これは法益均衡の要件といわれる。例えば子犬に追いかけられただけなのに他人の家へ勝手に上がり込んで難を逃れるというのは緊急避難とはならない(但し犬嫌いの人もいる事から、過剰避難として情状が考慮される余地はある)。
このように、一般にいって緊急避難の方が正当防衛よりも成立するための要件が厳しい。これは緊急避難が利益侵害とは無関係の者の利益を犠牲にして危険を回避する制度である点に起因する。ここに正当防衛と緊急避難の本質的な差異がある。以下の例でその点を説明する。
Aが道を歩いていると、突然日本刀を持った暴¥漢が襲いかかってきた。そこでAは空手を駆使して反撃し、これを撃退した。
Aが道を歩いていると、突然日本刀を持った暴¥漢が襲いかかってきた。ひ弱なAは立ち向かうことができず、近くにあったBの家に逃げ込もうとした。しかしBは不在だったので勝手に屋内へ侵入して電話を使い、警察へ通報して難を逃れた。
Aの行為は、1では正当防衛、2では緊急避難であるとして犯罪は成立しない。1の例のように、正当防衛は侵害者の違法な侵害行為に対して直接反撃することより生命身体や財産などの正当な権利を防衛するものである。言い換えれば、侵害行為と防衛される利益の間には「不正」対「正」という関係がある。これに対して2の例のような緊急避難は、侵害とは関係のない第三者に対して損害を転化することで危難を回避し、正当な権利への侵害を免れるものである。ここでは緊急避難行為によって侵害される権利と緊急避難行為によって危難から逃れた権利はどちらも正当なものであるから、両者には「正」対「正」の関係があるといえる。であればこそ緊急避難を容易に認めるべきではなく、要件が厳しくなっているのである。
また、正当防衛の前提である「不正の侵害」は人間でなければすることができないと考えられているため、例えば襲ってきた飼い犬を撃退した場合には正当防衛ではなく緊急避難の問題となるとされている(いわゆる対物防衛の問題)。
なお、刑法上の緊急避難には、「前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。」(刑法第37条第2項)と言う規定もある。警察官や消防吏員は、危険を前にしてもぎりぎりまで踏み留まり、最後に避難する義務があるのである。
民法上の緊急避難
民法における緊急避難は、他人の物によって生じた急迫の危難に対して、自己または第三者の権利を防衛するためにその物を毀損する行為については不法行為による責任を問わないというものである。民法720条2項に規定がある。
例えば、他人の飼い犬(生物であるが民法上はあくまで「物」として扱われる)が暴¥走して襲ってきた場合にこれを撃退する、のが民法上の緊急避難である。他にも、今にも崩れそうなブロック塀がある場合に所有者の確認をとらないままこれを取り壊してしまう行為などが緊急避難にあてはまる。
なお、正当防衛は民法にも規定されている(民法720条1項本文)。両者の違いは、正当防衛が「他人の不法行為」に対する防衛であるのに対して、緊急避難は「他人の物から生じた急迫の危険」に対する防衛であることである。つまり、正当防衛は他人の行為からの防衛であり、緊急避難は他人の所有する物からの防衛が問題となる。例えば、暴¥漢から逃れるため他人の家の門を壊して敷地内へ逃げ込んだ場合、刑法上では緊急避難の問題となるが、民法上は正当防衛の問題となる。
なお、被害者(飼い犬の権利者)から不法行為者(飼い犬をして襲わしめる事につき責任のあるもの)への損害賠償請求を妨げない(第720条第1項但書、同条第2項)。例えば、持ち主Aから飼い犬を預かって散歩に連れて行ったCが、過失により犬を放してしまい、結果犬がBを襲ったため、やむをえずBが犬を撃退した場合、AはBではなくCに対して損害賠償請求をする事ができる。
国際法上の緊急避難
(省略)
【ちゃんと書き写しも出来ない、刺身へ】
「緊急避難」の用語解説。
「緊急回避」という言葉は、こういう法律用語としては、聞いた事が無いねえ。