森繁久弥追悼番組の「駅前飯店」をやってるのだが
王貞治出演
若い^^
澤里昌吉
第三回「駅前飯店」
今月の「まだ観ぬキミ」=元HiVi編集部 イチさん
映画界が元気だった昭和30年代。日本喜劇映画の原点がここにあった。
↑DVDには、復刻された当時のポスターが封入されている。コミカルに描かれた出演者の中には、若き日の王貞治(現・ソフトバンク監督)の姿も見られる
「ALWAYS三丁目の夕日」にかぎらず、ここ数年、昭和30年代にスポットがあたっているでしょ。その分析はさておくとして、テレビの出現で観客動員数は減少しはじめたものの、昭和30年代というのは日本映画がまだ元気であった時代でね。文芸作品あり、時代劇あり、アクションあり、とプログラムはバラエティに富んでいた。松竹や東宝の喜劇映画もあったし。喜劇映画ではとりわけ東宝の「駅前シリーズ」に人気があって、言わば固定客がついていた。興味深いのは、第一作「駅前旅館」の監督が名匠と言われた豊田四郎であること。これは井伏鱒二の小説が原作で、喜劇映画とは言わず、人間模様を描いた“文芸喜劇”と呼ばれている。それが爆笑喜劇になったのは、久松静児監督や佐伯幸三監督の時代。シリーズ作品と言えば「フーテンの寅」や「釣りバカ日誌」を思い浮かべる人が多いはずだが、ある時期まで「駅前」はヒット・シリーズの代名詞だった。全24作品。一人の監督の作品ではないけれど、日本喜劇映画史に残るシリーズだと思う。
ま、そんな背景はともかく、若いキミには先入観なしで「駅前飯店」を観てもらいたいなあ。まあ、出演陣の芸達者なこと。一般的には森繁久彌、伴淳三郎、フランキー堺が“駅前トリオ”と呼ばれているが、個人的には三木のり平も加えて“駅前カルテット”と称したい気分。この四人の丁々発止の芸を目にしたらキミだって「古いよ」とは言わない、いや、言えないだろうね。女優も多士済々だ。男優陣と渡り合う淡島千景、乙羽信子。淡島や乙羽は文芸作品で演技、「駅前シリーズ」では芸を見せてくれる。このシリーズ、時流にも敏感でね。学園騒動の時代には「駅前学園」、漫画がブームになれば「駅前漫画」というように。時の人を出演させるのも特色。ジャイアント馬場や横綱・佐田の山が出ている作品もある。「駅前飯店」では一本足打法が話題になっていた巨人軍の王貞治さんが特別出演している。リクツぬきで笑える映画。高画質DVDではないが、この作品なら再生の苦労も笑い飛ばしてくれるかもね。