これは、大阪市在住の朝鮮人労働者の実情についての調査報告です。大正末期のこの頃から第一次世界大戦による好況のため労働力の需要が高まり、それまで日本内地での季節労働・出稼ぎを主としていた朝鮮人が定住・長期雇用主体となったのです。
で、それら内地流入朝鮮人の生活や労働状況が社会問題になり調査報告がされたというわけです。
その調査報告のp95~96におもしろいものがあったのでテキスト起こしします。近代デジタルライブラリーに収録されている画像の52・53コマ目を見てください。
例三
●世帯の有様 主色染工場職工 妻飲食店主 子供1人(6歳) ○収入 戸主収入55.000 家族収入104.000 内訳 酒、ビール、サイダア、ラムネ水、空瓶共36.000 牛豚等の臓物より製せし食物の売上35.000 魚類、乾物、果実36.000 麹(ママ)類其他36.000 計159.000 外に貸売掛23.000 ○支出 家族生活費25.000 家賃17.000 畳数8畳庭2坪強 営業費61.000 内訳 酒、ビール、サイダア、ラムネ氷26.000 牛豚等の臓物15.000 麺類其他7.000 魚類、乾物5.000 果実3.000 其他調味料3.000 器物破損補充2.000 被服4.000 雑費20.000 家族の小遣等一切 計127.000 ○差引残高32.000 *収入欄の「麹類」はおそらく「麺類」の誤植。
とある朝鮮人一家の生活についての経済状況です。夫は色染工場の工員、妻は飲食店経営で収入を得ているのですが、飲食店の状況がおもしろい。
この店では「牛豚等の臓物より製せし食物」を売っているのですが、これは所謂「もつ」「ホルモン」です。その他にも麺類、魚類・乾物なども売っていますね。飲料の方を見ると空き瓶も売れているのかw 何に再利用したんだろう?
なお、日本語版ウィキペディアの「もつ」の項目には「1924年の調査によると、大阪市に住むある在日朝鮮人が営む飲食店の1ヶ月の売り上げは104円で、そのトップは「牛豚等の臓物より製せし食物の売上」35円であった。この内臓の調理法は汁物がメインと思われる[12]。」とあり、その根拠資料として注12「食肉文化 さばく・あきなう・たべる」、1996年10月17日、大坂人権博物館」をあげていますが、その『食肉文化 さばく・あきなう・たべる』(大阪人権博物館、1996)を見ると、この『労働調査報告28号 朝鮮人労働者問題』がその元ネタであったことが分かります。

さて、『食肉文化 さばく・あきなう・たべる』では、臓物所謂ホルモンの料理を「個人の家庭などにおいてはホルモンを手に入れては、焼いて食べていたという証言はあるが、店舗をかまえたホルモン焼き屋が戦前からあったということを示す確証は得られていない」ということで「汁物」としています。
たしかに、明治以降の内蔵の調理法としては煮込むのが主流でしたから、焼いたという積極的な根拠が見られない以上は消去法的に煮込みつまり「もつ煮」だろうとして「汁物」と推測したんだろうなぁ。あ、「もつ鍋」はこの時期は博多或いは山口あたりのものでまだ全国的に普及してなかったはずですよ。
寒い日が続きますが、もつ鍋やもつ煮、ホルモン焼きを食べて酒を飲んで温まってみてはいかがでしょう。
しゃおこー☆息抜き中
