私はかつて岸信介元首相に次の話を聞いたことがある。
朴正煕氏が1961年に軍事クーデターを起こして国家再建最高会議議長になったあと、来日して岸さんに会っている。そのとき、岸さんはすでに首相を辞していた。
朴正煕氏が岸信介氏に頼んだ二つのこと
朴正煕氏は岸さんに二つの頼みごとをした。一つは、スイスの銀行を紹介してほしいというもの。初代大統領の李承晩氏がそうだったように大統領が失脚すると亡命して身を守るしかない。亡命するためにはお金が必要で、スイスの銀行にお金を貯めておかなければならないと考えたのだ。
岸さんは「日本では首相を辞めた後に逮捕された例はない。暗殺もない。韓国で大統領になるのは命がけだ。大変だねえ」と言っていた。
朴正煕氏のもう一つの頼みごとは、「岸さん、韓国人は誰も信用できない。だから日本から大臣を3、4人貸してくれ」というものだった。そういうわけにはいかないので、岸さんの舞台裏を全部引き受けていた矢次一夫氏を紹介した。
韓国では、大統領になるのに必死の覚悟が必要だ。それに比べ日本の首相で亡命や逮捕、死を覚悟している人は誰もいない。
私は何度か韓国へ行き、その度に韓国の野党国会議員と会談している。彼らは次のように言う。
「韓国は、大統領が代わるとすべて変わる。それまで普通に議員として活動してきた者が急に逮捕されるということも起きる。政策も大きく変わり、北朝鮮寄りになったかと思うと、逆にアンチ北朝鮮になったりする。我々は日本を見習いたい」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120828/321047/?ST=business&P=5