国際司法裁判所(ICJ)の調査捕鯨訴訟、筆者も政府関係者に倣って判決文を精査しているところですが、読めば読むほど日本側に不利なことが明らかになってきた感じ。
例えば、ICJが認めているのは、国際捕鯨取締条約(ICRW)8条に書かれた定義上の調査捕鯨のみで、第一期のJARPAについては本件の争点ではないと判断を完全に保留しています。双方の言い分を一応紹介したうえで、「今回の件とは関係ないから、あんたたちの意見の不一致にコートは取り合わないよ」といっているわけです。巷で言われているように、決して日本の調査捕鯨を認めたわけではありません(#99-108:ICJ判決文)。認めたのはIWCへの事務手続きだけ。
また、非致死調査の検討がきわめて不十分だったことについては、AUS側の主張をそのまま認めており、「ザトウとナガスの致死調査なしでも一定の成果が挙がっているのに、なぜクロミンクで致死調査にこだわるのか?」と問題視しています。「ザトウとナガスを計画数どおりに殺せ(さ)なかったことが問題で、もっと増やしゃよかったんだ」という擁護派の主張は明らかに誤っています(:ICJ判決文)
その中で、敗訴を決定付けた日本側の致命的なポカを発見しました。
これはオーストラリア(AUS)側が昨年6/28の口頭弁論時に指摘してみせたもの。
第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))
○本川政府参考人
少し補足をさせていただきます。
被災前でありますが、調査捕鯨として大体八割、三千八百トン、七百トン前後をとってきておりますが、そのうち南極海が二千トンであります。ただ、これはミンククジラというものを中心にとっております。ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。
それから、北西太平洋で千七百トン程度、二十二年はとっておりますが、そのうち百二十トンが沿岸の調査捕鯨であります。千五百トン強はいわゆる鯨類研究所がとっている鯨であります。ただ、こちらはイワシクジラとかニタリクジラというものを中心にとっております。
それから、沿岸の小型捕鯨というのが二十二年で四百十七トン捕獲しておりますが、これはツチクジラという、イルカに非常に形が似た鯨でありまして、ジャー
キーのような、干し肉になるようなものでございます。この前、鮎川に行かれたときに、鮎川の捕鯨の方がとっておられましたが、これはまさにツチクジラをと
る業を営んでおられる方でありまして、この方が南氷洋でとられるミンククジラを扱うということはまずないのではないかなというふうに思っております。
したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
それから、今のデータにつきましては私どものホームページで公開させていただいております。積極的に提供申し上げなかったことについては申しわけないというふうに申し上げたいと思います。
(中略)
○小野寺小委員
長官、これは誰が見たって今回違和感がありますよ。復興の予算でこうやってつけるというのはおかしい。だから、もうこれはだめということになるんだけれども、迷惑しているんだ、あなたのおかげで。
誰が迷惑しているかというと、鯨産業の人全体が迷惑しているんですよ。こうやって、何か捕鯨がいかにも復興予算の流用の悪い人にとられてしまったら、捕鯨
事業全体が困ってしまう。実際、この石巻地区だって、日本だって、やはり捕鯨というのは大事な文化ですよ。ですから、あなた方がそういう変なことをするか
ら逆にこういうことに迷惑がかかるんだから、しっかり必要な予算はとっていく、しかも本予算でとっていく、それをはっきり言っていただきたい。(引用、強調筆者)
まあ・・誰がどう見たって、調査捕鯨が商業捕鯨に他ならないことを自ら白状しているとしか思えませんわな・・・
とはいえ、ここで本川長官個人のうかつさを責めたてても始まりません。「そういうことをこれまで申し上げてきた」とは、歴代の水産庁長官が調査捕鯨についてそのように説明してきたことを意味するのですから。
そして、質問に立った国会議員らも、「調査捕鯨に対する疑義を招きかねない問題発言だ」として撤回・修正を求めることなど誰もしていないわけです。〝風評被害〟を心配して啖呵を切った代表的な捕鯨族議員、小野寺氏も含め。
これは言わば、捕鯨サークルという組織の慢心からきた〝身から出たサビ〟。
このときの衆院委員会質疑は、東北大震災復興予算流用に関するもの。
水産官僚だって、族議員に「何とかしろ」と尻をたたかれ、深刻な鯨研の赤字問題を解決するために復興予算に飛びついたんでしょうが・・。
調査捕鯨の本質を最もわかりやすい形で、当事者の口から、国会という場で説明させたのは、まさに復興予算を平気で流用してしまう捕鯨サークルの体質でした。
この問題が海外メディアに取り上げられたことで、AUS政府にも証拠として提供されることになったのでしょうね。
ちなみに、AUS側の審議前の提出資料には含まれていないため、隠し玉として用意されたのでしょう。AUSの今回の提訴が、国内受けを狙った内向きのパフォーマンスではなく、本気で結果を出そうと知恵を絞った証ともいえますが。