さて……あるとき、とある国が何年もの間、赤道を越えた南極に向けてぶっ放し続けていたのは、人工衛星などではなく、国際条約に違反するミサイルだったと、世界で最も権威ある司法機関からきっぱりと駄目出しを受けました。
ところが、「人工衛星か? ミサイルか?」が問われていたにもかかわらず、その国の中ではどういうわけか、「うちのミサイルは、中世の花火に歴史をたどれる美しい伝統技術だ! 南極に向かって打ち上げ続けろ!」というわけのわからない屁理屈をマスコミが盛んに流し続けています。国民の大多数が、「あれが花火でも人工衛星でもない、ミサイルだってことは、とっくにわかってたさ・・」とつぶやいているのに。
前約束で、国際法を遵守する旨宣言した以上、「仕方ない、これ以上ミサイルを南極に飛ばすのはやめよう」と、現実に向き合う政府関係者も多い中、なおも「うるさい! 国際条約機関から脱退してでも、ともかくミサイルを南極に飛ばすんだっ!」と息巻いている人たちもいます・・
一体日本は、そんな目も当てられない国だと、世界から白い目を向けられるようになってもいいのですか??
アイルランドの提案、米国の打診、外部専門家を招き多くの関係者の時間と労力を注ぎ込んだIWCでの歩み寄り交渉──あたかもミサイルを人工衛星と嘯き続ける近くの独裁国家と見まがうような、強硬な唯我独尊の姿勢を貫き、テーブルをひっくり返してきたのが、捕鯨ニッポンに他なりません。
先日、地方紙の一紙で産経のポエムとは比較にならない、思わず読者をうならせる名コラムが掲載されました。以下はその一説。
(デ・ソト提案に沿った交渉の)当時「南極海での調査捕鯨中止」は、日本にとって強力な交渉カードだった。もし、このカードを交渉で切っていれば、得られたものは大きかったはずだ。だが、今回の判決でこのカードの意味はなくなってしまった。(引用~岐阜新聞・時言「捕鯨をめぐる幻の妥協」)
指摘されているとおり、裁判所で国際条約違反と認定されてしまった時点で、日本は立場も、代わりに何かを要求する権利も、すべて完全に失ってしまったのです。その時点では、一定範囲の沿岸捕鯨を許容してもらえる余地もまだあったというのに。
しかも、国際裁判至上にいつまでも汚名を刻み込まれる形で。
日本が自らの愚策の果てに失った誇りを取り戻すには、一体どうすればいいのでしょう?
なすべきことは、ひとつしかありません。
それは、世界中の人々に対し、ミサイルを人工衛星だとずーーっと偽り続けてきたことを、深々と頭を下げて心の底から謝ることです。
何年も国際条約を破り続けてきたことが明らかになったのに、一言の謝罪もなく、「失望した」などと逆ギレしたうえ、一切のペナルティなしに済ませようとするのは、あまりにも虫が好すぎるんじゃありませんか?
もし、日本との間で係争を抱えている国が、同じような振る舞いをしたなら、国内で増殖しつつある新世代のナショナリストたちはきっと、怒り狂って暴動を起こすことでしょうね・・・
実際、政府関係者はICJでAUS・NZを迎え撃つにあたり、今回の訴訟対応を、対中国・対韓国の領土問題を念頭に置いたICJでの紛争処理のモデルケースとして捉えていると、臆面もなくメディアに語っていたわけです。最強布陣の必勝体制で臨み、負けるはずがないと高を括っていたからなのでしょうが。
中国や韓国の人々はもちろん、今回のICJ判決を受けて日本がどのように振る舞うかに、非常に大きな関心をもって注目しているはずでしょう。
1.南極海からは即時、完全に撤退すること。
一年間だけ休んだら再びクジラたちの楽園を脅かすべく舞い戻ろうなどとは、二度と金輪際考えないことです。
2.北西太平洋からは段階的に撤退すること。
カードは失われてしまいました。南極海撤退だけで目こぼしをもらうことを、国際社会に乞うことはもうできません。
AUS・NZ・米国等には、あらかじめお願いして了承を取り付けることが必要でしょう。現実的な観点から、各国には土下座しつつ、少しばかり猶予期間をいただきましょう。せいぜい3、4年の期間が目処でしょうね。
その間に、市場縮小のロードマップを提示し、〝副産物〟だったハズのものの需給を調整するとともに、共同船舶の船員の一時補償と再雇用の支援を国が確実に行うこと。繰り返しになりますが、捕鯨批判派を含め、復興予算流用に厳しい目を向ける国民だって、誰一人文句を言いやしません。
〝副産物〟については、都市部の食通どもがネット通販で取り寄せていいものではありません。全量沿岸捕鯨地に回すべし。江
戸時代から続くという意味では、資格があるのは太地と和田浦くらいですが、鮎川、釧路は含めていいでしょう。そして、東北の被災地を尻目に自分たちだけ
20億の経済効果にありつこうとした、同情の余地など一片もない下関ではありますが、大マケにマケて一定の期間は認めてもいいでしょう。
どーしてもどーしてもどーーーーしても鯨肉が食べたい!という人は、沿岸捕鯨地に出向いて、現地にさまざまな形でカネを落とし、地域経済に貢献することです。
学校給食への活用などは無論禁止。こどもたちに食べさせるべきは、地産地消の究極のアンチテーゼというべき南極産の野生動物の肉などではなく、雑穀、地域野菜、地先の海で取れる小魚です。
捕鯨協会/国際PRがでっち上げた虚飾の鯨肉食ブンカは、ドングリ、ヒトデ、ヒザラガイなどと同じ、地産地消の文化に反しない、身の丈にあった地域の食習慣の水準に回帰するべき。
3.沿岸捕鯨については、乱獲と規制違反の歴史に対する真摯な謝罪と反省を世界に表明したうえで、国際機関の厳格な管理のもと、小規模な地場利用の形で認めてもらうよう、お願いすること。
今回のICJ判決報道の中で、和田の捕鯨会社は「罪悪感を伴うものにならなければいいが」などとコメントを寄せ、捕鯨業者でありながら日本の伝統捕鯨の精
神の真髄を何も理解していないことを露呈してしまいました。あまりにも情けないことです。何のための供養碑だと思っているのだろう? 自分たちも先祖に
倣ってやっていることは、形式だけのパフォーマンスにすぎないと思っているのでしょうか?
また、太地は凝りもせずに次回IWC総会への外遊予算
を確保したとのこと。国際会議への出席は、本当に必要ならば政府が費用をもって代表団に加えればいい話。視察に名を借りた地方自治体の議員・首長らの海外
旅行は、市民オンブズマンの批判を浴びて久しいですが、どこ吹く風という感じですね。伝統の真珠養殖を潰して画餅の「鯨の海構想」を強引に推し進めること
といい・・。太地はご神体への自縄自縛の状態から自らを解放しなくてはなりません。
捕 鯨と同様、イルカ猟も国際法の観点から問題があることは明らか。イルカフリークの皆さんには申し訳ないと思いますが、筆者はここであえて、かなり譲歩した 現実的な提案を示します。ガイアツで追い込まれる前にきちんと襟を正すことが生き残る唯一の道だと、関係者は胸に刻むべきです。
いやだとおっしゃる? どーしてもどーしてもどーーーーしてもいやだと?
日本はカードを失ったのですよ。そんな贅沢なことを言えた立場ではないのです。
東北大石井准教授が指摘されていますが、JARPNⅡ(北西太平洋調査捕鯨)は間違いなく、今回違法認定を受けたJARPAⅡと同様の問題を抱えています。NHK が報道したように、事業者も海域も船の規模も捕獲数も捕獲対象種も異なる沿岸調査にさえ、水産庁が慎重な検討を強いられているのは、もちろんそれが理由。 もっとも、族議員の反発が少ない沿岸調査にしわ寄せをできる限り押し付け、共同船舶の母船式捕鯨の傷をなるべく少なく済ませようとの意図もあるのかもしれ ませんが・・。
北太平洋の捕鯨に対して日本を訴える相手といったら、思いつくのはやっぱり米国。ただ、みなさんもご承知のとおり、日米関係は主軸となる貿易・防衛問題で重要な局面を迎えており、米国がクジラで日本にイチャモンをつける余裕はないかもしれません。
なら安心だと思いますか?
いや・・ワイルドカードも考えられます。
もし、どこかの国とどこかの国が、日本のJARPNⅡをICJに訴えたとしたら──日本はクジラよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ?