
船底の汚れが勝敗を決した、こんな逸話が残されている。
東郷平八郎司令長官率いる日本海軍連合艦隊が、ロシアのバルチック艦隊を打ち破った日本海海戦のあった1905年(明治38年)。バルト海を出航したバルチック艦隊の本隊は、アフリカの喜望峰を回航するコースで日本に攻め入ったが、その距離3万7千キロ、9ヵ月にもおよぷ大遠征で船底が汚れきっていたといわれている。
インドあたりで船底をきれいにできればよかったが、当時は日英同盟が結ばれていたためにイギリスが統治するインドヘの寄港もままならず、日本海へ直進。船底に海中生物がこびりつき、艇速が思うように伸びないバルチック艦隊は、待ち構えた日本艦隊のT字戦法に翻弄され、全滅してしまった……。極めて特異な例ではあるが、船底の汚れがもたらす影響を物語るエピソードである。
古代ギリシャ時代にタールが用いられたと文献に残されるほど船底塗料の歴史は長いが、今の流れにつながる樹脂系塗料が登場したのは1950年代。ちなみに、1885年(明治18年)に堀田瑞松が日本特許第1号として考案した船底塗料には、漆、鉄粉、柿渋、酒清、生姜、酢などが混合されていたと記録されている。
一般の塗料と船底塗料との大きな違いは、前者は表面の美観と防錆性に重きをおいて調合されるのに対し、後者は海中生物の付着を防ぐ特殊な防汚剤(薬剤)を混合していること。堀田瑞松が考案した当時は、漆や柿渋などが海中生物を寄せ付けないと考えられていたのだろう。
船底塗料、燃費10%改善 日本ペイントと商船三井が開発
日本ペイントと商船三井は従来より燃費が10%改善する船底塗料を共同開発する。
塗料の表面を固体と液体の中間の性質を持つゲル膜で覆い、航行中に生じる水と船体の
摩擦抵抗を減らすことで燃費を改善する仕組み。共同開発後は日本ペイントが商品化し、
2013年中の発売を目指す。
日本ペイントと子会社の日本ペイントマリン(神戸市)が材料と塗料の開発を担当し、
商船三井が実際に船に塗装して性能を試験する。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100120ATDD1906719012010.html