キプロスを助けても感謝されないドイツの恨み節
強い通貨マルクを手放したのは亡国への道だったのか
2013.03.27(水)
川口マーン 惠美
キプロスなどという、日頃あまり話題にならない地中海の島のせいで、EUが揺れている。
キプロスは南北に分かれているが、現在問題になっているのは南のキプロス共和国で、人口約87万人(北はイスラム系の住民が住んでいて、トルコが仕切っている)。
キプロスは2004年にEUに加盟した〔AFPBB News〕マネーロンダリング天国だったキプロス
ドイツでは去年からしばしば、この国のバブル崩壊が話題になっていた。
長年、キプロスの銀行は、魅力的な金利を売り物に投資家のお金を集めていた。税金は安く、法律は抜け道がいっぱいで、マネーロンダリングはし放題。
一時は国家経済の70%が金融による収入。その挙句、銀行資産が経済規模の8倍と、まことに不健全な状態となり、しかし、まさにそのおかげで、長い間、キプロスは好景気で潤っていた。
キプロスが脱税天国になったのは、何も最近の話ではない。政府はすでに1970年代に、ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という地の利を生かして、自国を、スイスとまではいかなくても、リヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンにしようと図った。
さらに、1990年にソ連が崩壊すると、好景気は絶頂となった。まもなく郵便箱だけの幽霊会社が4万を超えたが、そのお金がどこから来たものかはやはり一切問われることがなかった(2012年11月3日付 Der Spiegl)。
現在、キプロスに投資されているお金のうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だという。
ロシアとキプロスは伝統的に縁が深い。第2次世界大戦後、キプロスは非同盟運動国(NAM) の1つとして、公式には東西どちらの陣営にも属していなかったが、ロシアはキプロスを積極的に支援していた。
多くのキプロスの若者がモスクワへ留学し、一方、ロシア人は、キプロスをヨーロッパへの架け橋と見なしていた。キプロスの高級品店ではロシア語が通じ、ロシア人相手の商売が大いに繁盛した。
キプロスの好景気にもう一度拍車がかかったのが、2004年のEU加盟だ。2008年にはユーロが導入された。
そこでキプロスは、裕福なロシア人が容易にキプロス籍を取れるように計らい、ドイツ情報局の調べでは、すでに80人のロシアの権力者、富裕層の人々がキプロス国籍となり、EU市民としての権利を享受しているという。
ちなみに、投資家でロシアの次に多いのが、英国だそうだ。キプロスは1960年まで英国の植民地だったこともあり、今でも3500人の英国兵が駐屯している。
キプロス大統領はロシアの大口投資家を守りたかった?
いずれにしても、キプロスのバブルは破裂すべくして破裂した。今月の末までに175億ユーロのお金を都合することができなければ、キプロスは破産する。EUのユーロ国は、3月15日に緊急会議を開き、100億ユーロの援助を決めた。
ただし援助の条件は、キプロスが自国の銀行に預けられているお金から58億ユーロを拠出するというもの。EUの血税がつぎ込まれるのだから、キプロスも少しは努力してほしいということだが、問題は、いったい誰の預金が犠牲になるかだ。
16日の早朝に発表されたのは、全預金者に一度限りの税金をかけるという案だった。税率は、10万ユーロ以下の預金者は預金額の6.75%、それ以上は9.9%。つまり、小口預金者も虎の子の一部を失うことになる。
今までの常識では、たとえ銀行が破産しても、10万ユーロ以下の預金は失われないというのが原則だった。投機とは縁のない人々が金融破綻の責任を負わされるのは、誰が考えても不公平だからだ。
ただし、今回起こっているのは銀行の破産ではなく、救済であるから、事態は複雑だ。
寝耳に水のキプロス国民は、その朝、銀行のATMに殺到し、虎の子を守ろうとしたが、すでに一定以上の金額は引き出せなくなっていた。
しかも銀行は業務を停止。いつ開くかも分からない。瞬く間に大規模なデモが発生し、怒った国民で、国内は騒然となった。
ただ、デモの様子を見ると、牙をはやしたメルケルの人形や、メルケルとナチのカギ十字の写真などが登場しており、あたかもドイツがこの非情な措置を計画実行した首謀者のような感じだった。この映像に、「ちょっと待って」と思ったドイツ人は多いはずだ。
ドイツ第1テレビの報道によると、ブリュッセルで行われたEUの会議では、最初、小口預金者の虎の子には手を付けない方針で話が進められていたという。
ところが、これに抵抗したのが当のキプロスのアナスタシアディス大統領だった。
小口預金を課税対象から外すと、大口預金者への課税率が上がってしまう。彼は、ロシア人など大口投資家のお金を守りたい一心で、最高課税率を10パーセント以上にすることを断固拒否し、その代わり、小口預金者のお金に課税すると言い張った。
そして、「それはまずい」とEUの財務大臣たちに説得されそうになると、一時、怒って、あるいは、怒ったふりをして、会議の席を立ったという。
融資の条件である58億ユーロを、誰がどのように負担するか決めるのは、結局はキプロス政府である。ドイツ政府は、「累進税率法則についてはキプロス政府が決定することである」と口をつぐんでおり、ショイブレ財務相も、「小口預金者の預金が課税対象から外されることに異議はない」と言っている。
また、他の財務相たちも、小口預金者を課税対象から外すべきだと思っていたようだ。だから、この案がアナスタシアディス大統領から出たことはおそらく間違いない。そしてそれが発表された途端、キプロス国内は案の定、前述の大騒ぎになった。

キプロスの首都ニコシアのATMで預金を引き出そうとする人たち(2013年3月17日撮影)〔AFPBB News〕
EU憎悪のキプロス国民、大統領はロシアに頼るもあえなく失敗
アナスタシアディス大統領は、国内が騒然としたのを見て、慌てて国民に向かって言った。「このEUの決定を覆すよう、大いなる努力をしたい」と。
大統領が、大口投資家からの圧力と一般国民の板挟みになっているのは分かるが、だからと言って、責任をEU、あるいは、ドイツになすりつけるのは卑怯だ。本はと言えば、責任のほとんどは自国にある。
キプロス政府は、法案を急遽修正し、20万ユーロ以下の預金には手を付けず、20万から100万ユーロの預金者に6.75%、100万ユーロ以上には9.9%課税という新案をひねり出したが、これでは58億ユーロに達しないことは初めから分かり切っていたというから、彼らが本気でやっていたとは思えない。
そして、19日の夜、その新案が議会に掛けられたが、賛成した議員が1人もいなかったというのが、また凄い。つまりキプロスは、EUからの援助を拒絶したのである。
銀行が破産すれば10%の預金損失では済まない。国も破産する。ドイツから眺めている限り、キプロス政府がいったい何をどうしたいのかが分からない。
デモをしている人々の掲げているプラカードを見ても、「ヨーロッパなど糞くらえ!」といったEU憎悪のセリフが多い。
市民のインタビューでも、「我々もヨーロッパの一員として、ちゃんとした扱いを受ける権利がある」とか、「金の問題ではない。誇りの問題だ」という声ばかりだし、そもそも大統領自身がEUに大変不満な様子だ。だからだろう、彼の口からは、「腐敗した銀行システムの改革を!」などという殊勝な意見は出てこない。
挙句の果て、キプロスはロシアに支援を求めようとした。この大統領は、あくまでも正攻法が嫌いなようだ。
20日にはキプロス財務相が大急ぎでモスクワへ赴いたが、EUの委員長バローゾの方が一歩早かった。EUにしてみれば、キプロスのような極小国の問題を自力で解決できず、ロシアが手を差し伸べるとなると、面目丸つぶれとなるので、それはどうしても避けたい。
バローゾがロシアのウラジーミル・プーチン大統領と何をどう取引したのかは分からないが、キプロスの財務相はまもなく、肩を落としてロシアから戻ってきた。プーチン大統領にしてみても、自国からキプロスに資産を持ち出している人間を敢えて助けたいと思わなかったのかもしれない。
一方、ギリシャ正教会がキプロス援助を申し出ているという話もあった。アナスタシアディス大統領が司教と会見している映像が20日に出ていたが、これも失敗。EUが突きつけた最後通牒は25日だったので、緊張は否応なく高まった。
ドイツでも、EUの1国が破産するといったいどうなるのかという不安で、人々の目はキプロスにくぎ付けになり、そのニュースばかりが刻々と流れた。EUは、アナスタシアディス大統領に恐喝されていたのである。
24日の夜、再度ブリュッセルで会議が開かれ、結局、キプロスの銀行システムの改革を条件に、援助は行われることになった。キプロスで2番目に大きい銀行に大ナタが振るわれ、蘇生できる部門と切り捨てる部門に分けられるそうだ。
しかし、驚くべきことに、アナスタシアディス大統領は、国内最大のキプロス銀行の方は、この整理の措置から外すことに成功した。
EUの財務相たちは、キプロス破産の回避に一応ホッとした表情は見せているが、心の中は、キプロス政府の不誠実な態度に、怒りが沸騰していることだろう。
キプロスの中央銀行は25日、混乱回避策としての国内全ての銀行の休業措置を28日まで延長すると発表〔AFPBB News〕強いマルクを手放したのは痛恨の失策だったのか・・・
いずれにしても、今回のキプロス事件により、ドイツ人は急速にEU、そして、ユーロに対する信頼を失いかけている。
「私たちの通貨はどうなるのだろう? 私たちの預金は?」
通貨を信用できないというのは、最悪のことだ。ドイツでは、すでに不動産はどんどん値が上がっている。皆、考えることは同じなので、金相場も世界的に高騰してしまった。
ドイツ人の不安は破綻国への度重なる援助にもある。今まで政府は、ドイツはEUの一員として生きるのがベストであり、援助は自国の救済でもあると国民を説得し続けてきた。
しかし、国民はどんどん泥沼にはまっていくような不安に苛まれている。ザルを相手にしているような感じだ。キプロスの場合、「なぜ我々の税金でロシアの金持ちの預金を守らなければいけないのか?」という疑問も、怒りとなって噴出している。
しかも、これだけ犠牲を払っているのに、EUの誰からも感謝されず、恨まれるばかりなのだ。
先週、取材でノルウェーに行ったので、現地の人にEUについて尋ねてみたら、やはり「加盟しなくてよかった」ということだった。スイス人もそう思っているだろう。
あれほど強かったマルクという貨幣を手放したのは、亡国につながる愚行であったのではないかと、多くのドイツ人が思い始めている。しかし、後戻りはできない。目を瞑って前進するのみ?
ドイツ人の悪夢はまだまだ続きそうだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37413
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ユーロ危機と「ドイツ的な欧州」の誕生
対立を防ぐはずのプロジェクトが敵意を生んだ理由
2013.03.27(水)
Financial Times
(2013年3月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
キプロス救済策でECBが合意期限、預金封鎖にロシア政府も苦言

南欧では特にドイツに対する反感が強まっている(写真はキプロスの抗議デモの一幕)〔AFPBB News〕
結局、キプロスは苦い薬を飲むことになった。国家的な屈辱と暗い将来に直面した国民の多くは、小さな母国は無慈悲な大国の意思に屈するよう強いられたのだと不満の声を上げている。
無慈悲な大国とは、そう、ドイツのことだ。
キプロスの新聞は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を「ドイツ野郎*1」と表現し、ヴォルフガング・ショイブレ財務相は「ファシスト」のような話し方をするとこき下ろした。ギリシャやイタリアですっかりお馴染みとなった反ドイツの感情がここにも広がった格好だ。
危機下で力を増すドイツと各地に広がる「ドイツ嫌い」
このドイツ嫌いは不当だ。怒号が飛び交うその陰で、ドイツの納税者は今回もまた、ユーロ加盟国の救済資金をどの国よりも多く負担することになる。近隣諸国に数千億ユーロもの資金を融資しても、ネオナチだという批判しか返ってこないという状況は、少しひどいように思える。
しかし、ドイツの力が増していること――そして、その力に対する怒りの気持ちも強まっていること――は、今や欧州政治のメーンテーマとなっている。
何とも皮肉な話である。統合を目指して1950年代から続けられている「欧州プロジェクト」全体の最大の目的は、ドイツは強大すぎて近隣諸国と気持ちよく共存することなどできないという見方を根絶することにあったからだ。
実際ベルリンでは、パリやブリュッセルと同じくらい、「ドイツ的な欧州ではなく、欧州的なドイツ」が必要だという言い方が何度も繰り返されてきた。
ところが、キプロス危機が勃発してからは、「ドイツ的な欧州」の色彩が次第に濃くなっているように見える。危機下で取られている欧州大陸の方向性は、ベルリンの政治家と官僚の思想や意向によって形成されている面が強いからだ。
確かに、キプロスとの交渉を主導したのは欧州委員会、国際通貨基金(IMF)、および欧州中央銀行(ECB)の3者だった。だが、ドイツ政府の意見を聞いたり同意を得たりしなければ、どんな取引も成立し得ないことは最初から明らかだった。
今回の危機が始まってから、ECB側のリード役をイタリア人のマリオ・ドラギ総裁ではなくドイツ人のヨルク・アスムセン専務理事がずっと務めていることも、ドイツが危機対応の顔になる要因となった。
一連の騒動を少し離れたところから見ることができたら、ドイツの指導者たちは、どうしてこういうことになったのかと首をひねるに違いない。
ドイツと近隣諸国は対立しているという認識に終止符を打つための欧州プロジェクトが、反ドイツ感情の復活につながってしまったのはなぜなのか? そして、このダメージはずっと残るものなのか?
これについては、最近は非常に大きな利害が絡むようになっており、ドイツといえども国益を主張するのをためらうわけにはいかなくなっている、という見方でかなり説明がつくだろう。何しろ現在、欧州単一通貨の存続が疑問視されており、ドイツの納税者は様々な救済基金に巨額の資金を拠出しなければならない状況が続いている。
ドイツはまた、この問題について明快で一貫性のある分析を行っている。危機の中心にあるのは放漫財政かお粗末なビジネスモデルであり、従ってその解決策は構造改革に関連した緊縮財政である、という見方だ。
この処方箋は危険だと指摘する向きは多い。だが、そうした緊縮財政反対論者は、昨今の思潮を変えられるほど筋の通った代替策をまだ提示できていない。
しかし、これはドイツが強いというだけの話ではない。実は、最近までドイツと拮抗していた欧州のほかの大国が極端に弱くなっているという話でもある。例えば、スペインとイタリアの政府は財政難にあり、弱体化している。英国はユーロ圏のメンバーではないため、一歩下がった立場を取っている。
何より際立つフランスの「不在」
だが、今回の危機の最も顕著な特徴は、交渉のテーブルに有力なフランス人がほぼ皆無だったことだ。
ジャン・モネ氏からジャック・ドロール氏に至るまで、フランス人は常に、欧州プロジェクトのために知的な指導力を発揮することを誇りにしてきた。仏独同盟が引っ張る形で欧州を前進させるべきだという考えはフランス人の思考の要であり、メルケル首相と緊密な協力関係を築こうとしたニコラ・サルコジ前大統領の決意にも反映されていた。
「メルコジ」のコンビが欧州を動かしているという考えはかねて、ちょっとした錯覚だったものの、少なくともそれは舞台の中心にいようとするフランスの決意を表していた。
ところがフランソワ・オランド大統領の下で、フランスがドイツと同等の役割を果たしているという考えは完全に消え去った。キプロスを巡っては、フィンランドさえもがフランスより議論に大きな影響を与えたように見えた。
問題の一端は、オランド大統領が緊縮に対するドイツのこだわりに反対していることを世に知らしめながら、首尾一貫した対案を提示しなかったことにある。大統領はドイツを押し返せるような南欧諸国の同盟の先頭に立つことはなかったが、かと言ってメルケル首相と良い協力関係を築くこともなかった。
フランス政府高官も、もはや昔のように欧州の中心部で重要な役割を果たすことはなくなった。ジャン・クロード・トリシェ氏の退任を受け、ECBを率いる総裁はフランス人ではなくなった。EUの域内市場を担当するフランス出身の欧州委員、ミシェル・バルニエ氏はどちらかと言えば軽量級だ。
欧州にとってもドイツ自身にとっても危険な状況
ドイツの政策立案者でさえ、この状況が一時的であることを望んでおり、事態が正常化し、EUの新機構が創設された暁には、ドイツがこれほど公然と指揮を執る必要はなくなるかもしれないと考えている。だが、それは恐らく実現しそうにない望みだ。
ユーロ圏の危機は決して終わっていないし、危機の終わりにどんなEU新機構が誕生するのか、さらには、それがドイツの力を弱めるのか、それとも強めるのか、ということも不透明だ。
その結果、ドイツが監督者の立場に立たされたまま、小切手を書き、ルールを執行し、さらにはルールをどんどん作っていくことになる。これは欧州にとって、そして最終的にはドイツ自身にとって危険な状況だ。
By Gideon Rachman
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*1=原語は「Hun」、第1次・第2次大戦中に使われたドイツ人をののしる言葉
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37447
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「東アジア共同体」だとか「統一通貨」だとか言ってるポッポなんかの脳内お花畑な連中は、
日本をこのドイツのような立場に追い込もうとしているのか。
( ´-д-)
中凶や朝鮮の不始末の尻ぬぐいをさせられ、
それでも恩を仇で返され続ける。
・・・・・
・・・
現状、既にそうなってるか。
(;´・ω・)
~ 以上 ~