俺が住んでいる地域は、宗教と暴力団の町と呼ばれるほど、宗教団体と暴力団の建物がたくさんある地域だ。
田舎だから、土地代が安いらしくそういう人が集まるらしい。
当時の俺はエアガンにハマっていた。だが、10歳以上のエアガンの威力に飽きた俺は、同じくエアガン好きの父親を言葉巧みに騙し、18歳以上のエアガンを購入した。
買ったのはコルト ガバメントというエアガンだ。
買った時はまさかこのエアガンのせいであの事件が起こるとは思いもしなかった。
7ある日学校の帰りのHRで、先生が真剣な顔で話し始めた。
「近々○○(地名)周辺で、暴力団の抗争が起こるかもしれないということだ。みんなしばらくの間外出を控えるように。」
といった話だった。
「俺の後ろの家○○組の人だぜーwwww」
とか
「俺○○組の人と話したことあるぜーwwww意外に優しいんだぜーwwww」
とか、クラスがざわめき色々な話が聞こえてくる。
しかし俺は震えていた。
ヤクザの抗争なんて、つまり銃撃戦ってことなのか?もしかしたら流れ弾が当たるかもしれないのか?色々な事が頭をよぎった。そして俺は決意した。
『ヤクザをエアガンで狙撃しよう』
好奇心旺盛で無駄に行動力のある俺は早速、少ない小遣いで武器を調達することにした。
おもちゃ屋に行き、1500円のキャットナックルというメリケンを購入。そして駄菓子屋にて、煙玉を大人買いした。火をつけると青っぽい煙の出る玉だ。友達には内緒で俺はこの計画を練っていった。もちろん家族にもだ。周りの人を危険な目にさらしたくなかった。そして0.25gのバイオBB弾を購入。外で撃つことになるのでと思い、土に還るバイオBB弾にした。我ながら環境に優しい子だと思った。俺の考えた作戦はこうだ。まずヤクザの家の近くのアパートを探す。そのアパートの階段に潜伏。↓
車や玄関から出てきたヤクザをエアガンで狙撃↓
状況に応じて煙玉やメリケンを使用
完璧だった。本当に自分がプロの殺し屋になったような感覚でワクワクしていた。
そして次の日、俺は作戦を実行することにした。
当時の俺は2軒しかヤクザの家を知らなかった。1軒は庭にヤシの木や滝があるような家で、近所では有名なヤクザの家だった。もう1軒も、めちゃくちゃデカい家だった。いつも黒い高級車が沢山止まっていて、警察が押し入ったこともある有名なヤクザの家だった。
そして俺は、ヤシの木の家のヤクザを狙撃することにした。ちょうど向かい側にアパートがあったからだ。
早速俺はアパートの階段の1番上に行く。3階建てだったので、こちら側からは見やすく、向こうからは見にくいという絶好の狙撃ポイントだった。時間は夕方。ヤクザの家の駐車場を見ると、2台分空いていたので、ちょうど外出中のようだった。ドキドキしながらマガジンに弾を詰め込み、ヤクザの帰宅を待つ俺。時折アパートの人が来ると、エアガンを隠し階段から景色を眺める少年のフリをした。アパートの人達は、まさか俺が今からヤクザをエアガンで狙撃するなど想像できなかっただろう。
3時間くらいヤクザを待ち、今日は来ないからやめようかどうか迷っていた時だった。来た。黒のジャガーが1台、駐車場にバックで駐車しようとしているのだ。俺は最高にドキドキしていた。今からあいつらをエアガンで撃つのかと思うと、ニヤニヤが止まらなかった。
そして俺は、威嚇射撃ということで車に向かい3発ほど撃ち込む。パンッ!パンッ!パンッ!と乾いた音が鳴り響く。アパートだったせいか、想像以上に音が響きテンパった。
BB弾は全てヤクザの車ボンネットに命中。
降りて来たヤクザが、ボンネットの傷を確認するように手で擦りながらキョロキョロしていた。
俺はそれを見つつ、「ふほおおおおおおお!」と喜びぴょんぴょん跳ねていた。3人ほど車から降りてきて、ボンネットの周りで何やら話している。そして3人でキョロキョロして、そのうち1人がこのアパートを指を差した。慌てて階段の陰に隠れる俺。そしてエアガンをリュックに詰め、アパートから逃げ出すことにした。
駐輪場に停めてあった自転車に乗り、あえてヤクザの家の前を通って帰ることにした。困ったような顔をするヤクザの横を、ニヤニヤしながら自転車で猛スピードで通り抜けた。この時に俺は、ヤクザをエアガンで狙撃する快感を覚えてしまう。
翌日、学校が終わると俺はすぐに帰宅しエアガンを持ち、またヤクザの家の前のアパートに行った。
昨日の経験を活かし、今度は車ではなくヤクザ本体を撃つ事を考える。20mほど距離があったので、威力はさほど無いと考え、顔を狙うことを思いつく。
そしてまた階段の1番上に行き、階段の壁からヤクザの家を観察する。顔を狙うとなると、一発で当てるのは難しいと思い、俺は前から持っていたウージーというサブマシンガンで狙う事にした。ウージーは昨日のガバメントより威力は劣るものの、一度に沢山弾がでるからだ。そして俺はウージーを持ちドキドキしながらヤクザを待つ。すると、ヤクザの家の玄関が開く。何やら女の人が数人いて、談笑しているようだった。俺はとりあえず、威嚇射撃としてガバメントで一発玄関に撃ち込んだ。
パンッ!と音が鳴り響き、玄関から女性が2人ほど外に出てきて、キョロキョロ周りを見渡している。
「当たった!」と小さく声を出しガッツポーズをし、階段の壁から目だけを覗かせ様子を見る。
女の人2人は、何があったかわからない様子で、また家の中に入っていった。しかし今度は男の人が1人出てきた。黒のスーツをきたイカつい男性だった。絵に描いたようなヤクザだった。そしてそのヤクザがしゃがみこみ、何かを拾った。
俺の撃ったBB弾だった。
これは予想外だった。まさか犯行2日目で自分の武器がバレるとは思っていなかった。
そしてヤクザはBB弾をポケットに入れて、玄関に戻ろうとする。
何を思ったのか、俺はすかさずウージーを取り出し、ヤクザの後頭部めがけて発砲した。
タタタタタタタタタタタタタ!
と数十発のBB弾が発射され、いくつかは足や背中に当たったが、数発頭にも当たったように見えた。
俺の心臓の鼓動は、聞いた事ないくらいドキドキしていた。思わずそこにしゃがみこみ、自分のしたことの大きさに気づく。すると外から男性の叫ぶ声がした。
「オーイッ!オーイッ!」とヤクザが叫んでいるようだった。
俺は今外に出たら、マジモノの銃で狙撃されると思い、数十分その場にしゃがみこんでいた。
リュックにエアガンを詰め、そーっと駐輪場に向かい自転車に乗り、今度はヤクザの家の前を避けて帰宅した。
俺は家に帰り、冷静になって考えてみた。自分はなんということをしてしまったのだろうと。
だが同時に、達成感がわいてきた。ヤクザに一方的に狙撃するなんて、なんてカッコいいんだと。まるで本物のスパイのようだと。俺はその日活躍したガバメントとウージーをニヤニヤしながらウエットティッシュで拭き、その日は寝た。しかし次の日、学校の帰りのHRでまた先生から注意の話があった
「最近うちの制服を着た生徒が、○○というアパートの階段からおもちゃの鉄砲で歩行者を撃つというイタズラをしていると、アパートの方から通報があった。何か知ってるヤツがいたら先生に教えるように」
ということだった。完全に俺のことだった。制服でバレるというのは盲点だった。そして、狙撃しているのを見られているとは思わなかった。その日は帰宅し、ヤクザを狙撃しに行くことなく、エアガンのカタログを読みながら作戦を練り直していた。せっかく買ったメリケンと煙玉は、新品未開封のままだった。どうにかしてコレを使いたいと考え、次の日の放課後、新しい作戦を実行する。俺の考えた作戦はこうだった。ヤクザの敷地内に煙玉を投げ込み、煙であぶり出されたヤクザをエアガンで狙撃。
俺は早速放課後に家に帰り、エアガンと煙玉、ライターをリュックに詰め込みヤクザの家に向かった。今度は反省を活かし、周りをキョロキョロしながら人がいないのを確認することにした。しかし夕方だからか意外に一般人が多く、なかなか煙玉を敷地内に投げ込むことができなかった。しかし根気強く待っていると、周りに一般人がいなくなった。チャンス!と思い慌てて煙玉を取り出す。そしてもう一回周りを確認し、煙玉に着火。3つほどヤクザの家の庭に投げ込み、急いでチャリに飛び乗りアパートへ向かう。俺はニヤニヤとドキドキが止まらなかった。アパートの階段から様子を伺うと、青い煙がうっすらと見えた。所詮駄菓子屋の煙玉なので、そんなに煙は出ていなかった。そしてヤクザも出て来なかった。その日はヤクザを狙撃することなく、帰宅した。しかし次の日、思いもしない展開になった。
次の日の放課後、先生に呼ばれる俺。嫌な予感しかしなかったが、部活をサボっていることだな。と自分に言い聞かせつつ、職員室に向かった。そして別の部屋に連行され、生徒指導の先生3人と俺1人という状況で尋問が始まった。
先生「俺君、最近アパートの近くでイタズラあったことについて知ってることない?」
俺「えぇwwwそのことッすかぁ?wwwwなんにも知らないッすよぉwwww」
と明らかに動揺しながら答えた。
先生「そうか。実は俺君がアパートの階段にいたっていう情報を聞いてなあ。」
俺「あーwwwwあのアパート友達が住んでて、たまに遊びに行くんすよwwww」
先生「そうなのか。じゃあたまたまいただけなんだな。」
俺「そうッすねwwwwたまにしか行かないですけどwwww」
先生「時間とらせて悪かったな。まぁあんまりあそこらへんウロつくなよ。」
俺「わッかりましたwwww」
とヘラヘラしながら答える俺。正直、全身汗びしょびしょですごい怪しかったと思う。その日は素直に帰宅し、ヤクザの家に狙撃しに行くことなく寝た。
しかし次の日、また狙撃したい衝動に襲われた。
放課後、俺は今までの反省をフルに活かし、私服でアパートに向かった。煙玉は使えないということで、家に置いてきてが、メリケンはしっかりポケットに入れておいた。そしてアパートからヤクザの家の様子をみる。すると、向こうから大人が何人かぞろぞろ歩いてきた。うちの学校の先生方だった。
先生方は、ヤクザの家の周りやアパートの周りをウロウロし始めた。俺は階段に身を潜めながら怯えていた。リュックにはエアガン、ポケットにはメリケンと完全に不審者だったからだ。
そして何を思ったのか、俺は帰宅することにした。こういう時は、さりげなく逃げるのが正解と思っていたのだ。駐輪場にある自転車にまたがり、アパートから出ようとすると先生方に遭遇。
俺「あっwwwwこんちゃーすwwww」
と引きつった笑顔で自転車を発進させようとすると、1人の先生が近寄ってきた。
俺を尋問した生徒指導の先生だった。
先生「おーい俺君ー!何してんだー?」
とリュックをポンポンと触ってくる先生。
俺「いやぁwwwwちょっとwwwwはははwwww」
と汗だらだらで答える俺。こういう時に多汗症は不利である。
先生「リュックなんか色々入ってるなあ。ちょっと中身みてもいいか?」
俺「えwwww何でですかwwww別に何もないっすよwwwwwwww」
と半泣きで焦る俺。奥から数人先生方が寄ってきて、もうだめだと思った。
先生「なんか固いやつ入ってないか?ちょっと開けるぞ」
と言いリュックをあける先生。リュックにはガバメント、ウージー、バイオBB弾が入っていた。
先生方がこそこそ小言で話を始める。俺は自転車に乗りながらガタガタ震えていた。
先生「お前、これはどういうことだ?えぇ!?」
と1人の先生が急に怒鳴りだした。
俺「別に何でもないっすよ...」
と俯きながら答える俺。
先生方が何やらコソコソ話し合いを始め、俺は学校に連行されることになった。
またこの前と同じ教室に連れて行かれたが、様子が違った。学年の先生6人と、生徒指導の先生5人、総勢11人の先生が教室にいた。1人机に座らさられる俺。そして尋問が始まった。
先生「お前、なんでエアガン持ってあのアパートにいたんだ?なあ!?おい!!」
と机に叩きながら叫ぶ先生。黙り込む俺。
先生「お前正直に言ってみろよ!なあ!」
と俺の胸ぐらを掴み、席から立たせる先生。
俺「ちょ、ちょっと痛いっすよ...」
と手をどけようとする俺
先生「いてぇじゃねーだろうがよぉ!」
と思いっきり突き飛ばされる俺。そして転んだ時にメリケンがポケットから落ちる。
すぐさまメリケンを拾う俺だが、もう遅かった。
先生「お前そんなものも持ってたのか!えぇ!?」
とその日は結局、なぜエアガンを持っていたか、なぜアパートにいたか、事件とは関係ないか、なぜメリケンを持っていたかを延々と聞かれた。
結局ずっと俺は黙り込み、夜の8時くらいまで尋問され、帰宅することになった。帰宅すると、俺はすぐ自室にこもり泣いた。なぜ俺は疑われるのだろうと。
すると我が家に電話が鳴り響く。母が電話に出て「いつもお世話になりますー」と話す声が聞こえた。学校からだった。2階の自室から出て、階段から1階での電話の内容を聞いていた。母がしきりに先生に謝っている。そして父が母から電話を代わり、母が俺の名前を叫ぶ。俺はしぶしぶ1階に降りると、ものすごい勢いで母にビンタを喰らった。初めて母が泣いているのをみた。そして父も何度も電話で謝り、電話が終わると真っ先にビンタされた。俺は泣きながら自分のやったことを正直に話した。許してくれるかと思ったら、もっと2人を怒らせてしまった。母は泣きじゃくり床に座り込んでしまい、父は怒鳴りながら俺を殴ったり蹴ったりした。その日は眠れなかった。ずっと自室でボーッとしていた。
次の日、親から学校を休むように言われた。そして父と母も仕事を休み、ヤクザの家に謝りに行こうということになった。母と父もずっと黙っていて、ものすごい気まずい空気だった。ヤクザの家につくと、まず父が玄関に向かい、ピンポンを押した。中から男の人が出てきて、父が何やら話しているのを車から見ていた。
そして母と俺も車を降りて、玄関に向かった。
ヤクザ「お上がりください」
とヤクザに言われた。震えながら家に上がる俺。人間、緊張すると本当にお腹が痛くなるのだ。
俺はヤクザにトイレを借りたいといい、トイレを借りた。ヤクザの家のトイレでウンコをした。
トイレは広く、トイレなのに本棚があって色々な本が入ってた。そして応接室のような所に連れていかれた。タバコの煙が充満していて、すごい臭かった。中には3人の男の人が座っていて、1人だけ白髪で上半身裸であぐらをかいていた。見るからにボスという感じだった。俺は周りの人を直視できないまま、座布団に正座した。すると白髪のボスが
ボス「まぁ楽に座れや。足くずせ。」
と言ってきた。俺は怖くて正座を直すことができなかった。
父と母も正座で2人してヤクザに謝罪を始めた。
父「うちの息子が大変失礼なことをしてしまいすいませんでしたッ!」
母「本当に申し訳ございませんでしたッ!」
と、土下座に近い姿勢で謝る両親。
俺も小さな声で
俺「す、すいませんでした...」
と謝った。
ボスはタバコをふかしながら、
ボス「まあ頭を上げてくれや。もう済んだことだからよぉ。」
と言ってくれた。俺はこのボスになら一生ついていけるなぁと考えたりした。しかしボス以外の男の人はめちゃくちゃこっちを睨んでいた。腕に花や魚の入れ墨が入っている人もいた。
ボス「子どもの時はみんなヤンチャするもんだよなあ?兄ちゃん。」
俺「いや...すいませんでした。」
ボス「もういいから。せっかく謝りに来てくれたんだしよ。」
と、ヤクザも意外に優しいなあと思ったりした。
ボス「うちもこんな身分でよぉ、近所の方々に嫌われて追い出されたりされたら困るんだわ。ガハハハハハ!」
と笑うボス。笑えなかった。
ヤクザの家でヤクザに囲まれ、さらに俺はこのヤクザを狙撃したり、庭に煙玉を放り込んだのだ。
笑えるはずがなかった。
ひたすら謝る両親と俺。
結局、そのまま帰っていいことになり、我が家族はヤクザの家を後にした。
そして勿論、俺はエアガン禁止になった。
次の日中学校に行くと、俺はヤクザをエアガンで狙撃したということで一躍ヒーローになった。
ヤクザの家にも行ったということで、みんなに自慢した。まったく反省をしていない自分は、本当にカスだと思った。当時は怖かったが、今となっては良い笑い話だ。今でもそのヤクザの家の前を通ると思い出す。
先日ヤクザのボスが病気で亡くなったという話を聞いた。
皆さんは、ヤクザをエアガンで狙撃したりしないようにして下さい。
そもそもエアガンは人や動物に向かって撃ってはいけません。
俺は運が良かっただけで、普通なら本当に怖い思いをすると思います。