大臣の一声で認可左右 自由主義の否定にもつながる危険な権力行使
2012.11.7 11:16 (1/2ページ)[野田内閣]18世紀初頭のロンドンは株式ブームに沸いていた。新規ベンチャー企業が続々と設立されていた。自分の会社へ資金が回らなくなることを恐れた南海 会社のジョン・ブラントは政治力を発揮して1720年6月に「The Bubble Act(泡沫(ほうまつ)会社禁止法)」を成立させた。質の悪い会社 の誕生を阻止するために設立特許取得に厳しいハードルを設けたのである(特許主義)。(フジサンケイビジネスアイ)
これ以降、英国では新規会社設立には膨大な費用と時間が要求されるようになり、政治家や有力者とのコネが重要な要素となった。この法律は100年後に廃止 されるが、18世紀英国の株式会社の発展を阻害したとされている。そして皮肉なことにジョン・ブラントの南海会社は質の悪い会社の代表として「南海バブ ル」と呼ばれ、歴史に名を残すことになった。
特許主義や認可主義は、許認可を官庁の裁量に依存することになり、かつての国家社会主義国や共産圏諸国のように進歩や発展が役所の能力の範囲に限定されかねない。広く人知を集める資本主義社会には向いていないのである。腐敗も生じやすい。
そこで考えられた方法が準則主義である。参入は自由が原則であるが、淘汰(とうた)による退出もある。低品質なものを排除するために一定のガイドラインを 設けて開示し、それらをクリアしたものに関しては基本的に平等に認可しようという方法である。ここでは既得権益者による反対圧力も、有力政治家のコネも、 天下りの受け入れも不要である(はずだ)。従って逆にいうならば、もしも基準のクリアが明確な申請者に対して認可を与えないのであれば、それ相当の特別の 事由が必要になる。さもなければすべてが裁量次第ということになってしまうからだ。
筆者は専門家ではないが、文部科学省のHPによると日本の大学設置基準においても規制緩和がすすめられ、すでに認可を得るためにクリアすべき規則 や法的な問題点が明示され準則化されている。申請から当局の審査、学生募集、開校までのおおよその時間的ガイドラインも示されているようだ。
一方で規制緩和により多くの大学が開校され大学の質の低下が指摘されている。少子化もあって今後は大学の破綻も予想される。これらは間違いなく今後取り組むべき課題である。
準則主義にのっとり準備をすすめていた3大学の認可が田中真紀子文科相によって否定された。新基準の下、もう一度審査するということのようだが、この問題 は大臣の許認可における裁量権の逸脱の問題だけでなく、準則主義、ひいては自由主義の否定につながる非常に危険な権力行使である。大学設立に一定の基準を 設けるのは当然である。質の低下が問題であるならば準則の基準を上げればよい。しかし大臣の鶴の一声で自由の府であるべき大学の認可が左右される国など 真っ平ごめんなのである。(作家 板谷敏彦)