第198回
九条があるから拉致されたと大ウソをつく石原慎太郎 韓国人だって拉致されてるよ
2013年1月12日号
この雑誌が街に出るころには、政権も確定しているだろう。ボクは僅かなのぞみを抱いていたが、やはり倉本聰さんの言う通りになってしまった。倉本 さんは本誌のグラビアで、日本人の忘れっぽさを嘆いておられた。「震災の悲しみも、原発事故への怒りも、たった1年半で忘れてしまった」と言っておられた が、全くその通りで、自民党圧勝だ。
震災も原発事故も、元を正せば自民党行政の結果である。ハコモノ行政で、意味のない公民館などに金を使わず、防潮堤などの防災に予算を組んでいれ ば、少くともあれ程の大災害にはならなかった筈だ。しかも今回の選挙でも安倍総裁は「建設国債」の大量発行など、全く同じ公共投資を謳っていた。そんな自 民党に入れたのだから、「忘れっぽい」と言われても仕方がない。
原発にしても、誰が考えたって自民党政権が、電力会社と組んで「安全神話」をつくり上げたのである。しかも自民党は「原発ゼロ」よりも「電力確 保」を優先させていた数少ない政党だった。だから忘れっぽい国民は、今後も原発事故の恐怖とともに生きて行かねばならない。ボクら老い先短かい世代だが、 子供や孫のことを考えたら、間違っても「自民党」と書く人は少ないと考えたが、ボクが甘かった。倉本さん、率直にあやまります。貴方が正しかった。でも信 じられないよね。
たしかに選挙中は、候補者は言いたい放題を言う。いつか、石原慎太郎候補がこんな事を叫んでいた。「(憲法)九条があるから、北朝鮮に拉致された んだ。九条がなくて・戦争するぞ・と言えば拉致されない。悪いのは九条なんだ!」。ウソもここまで来ると、アキレるのを通り越して笑ってしまった。石原さ ん、北朝鮮が拉致したのは日本人だけではない。多くの韓国人も拉致された。そして韓国には「九条」はなく、それどころか徴兵制(2年間の軍役義務)さえあ る国だ。戦争はいつでも出来る。でも沢山の人が拉致されている。北朝鮮が拉致するのは九条があるからではないことくらい、百も承知でこういう演説をするか ら、政治家はウソツキと言われるんだ。でも石原さん、こんなウソをついて、お互いいつ死んでもオカしくない年で、寝覚めが悪くないかね。
しかしよく考えてみると、消去法で自民党を選んでしまった人も多いと思う。まずウソツキ野田の率いる民主党には入れたくない。石原と橋下と、どっ ちが言ってる事が本音なのか解らない維新の会は信じ切れない。原発ゼロは買うが、どうしても小沢一郎の影がちらつく未来の党も心配だ。そうなると、保守的 で・忘れっぽい・日本人は、自民党と書いてしまったのだ。要するに他にチョイスがない、可哀そうな人達だったのかも知れない。その証拠に、日本という国を 捨てる人々が、年々増え続けている。
外務省の数字によれば、あの大震災後、海外での永住のため日本を去る人の数は、3倍以上に増えているという。昨年の10月(震災から7ヵ月)の時 点で、約4万人というから、大きな数字である。そしてその後のパスポートの申請や発行数から見て、今年の数字は、更に上昇するだろうと言う。勿論あの震災 と福島の原発事故の経過から、この国の将来に不安を抱く人が居るのは理解できる。ところがそれだけではないらしい。
ボクは初め、中高年の富裕層を想像していたが、実は若い層に多いことが解った。勿論独身の青年も居るが、二人くらい子供の居る30代から40代の 家族という意外な例に驚いた。要するに文字通り子供の将来が不安なのだ。そして新聞のインタビュー記事を読むと、必ずしも地震や津波だけが理由ではなく、 この国の政治に絶望したという意見も見られたのである。
この記事を読んでから、ボクの経営するOKギフトで働く若い日本人の若者に直接聞いてみた。すると天災より、むしろ日本の政治、経済に望みがない こと、つまり彼らに・機会・がないことに見切りをつけた答えが多く、実は改めて考えさせられている。そしてオーストラリアやニュージーランドの、主として 英国系の友人の意見を聞くと、もっと衝撃的であった。彼らは、あれ程保守的で、内向的な日本人が、ここまで変って来ているのは、日本の政治、経済が相当 「ヤバイ」からではないかと感じているのだ。
ボクは長い間「巨泉の外国かぶれ」と嫌われて来たから、よく解る。限りなく単一民族に近いこの国ほど、ゼノフォビア(外国人嫌い)の強い国は他に 例を見ない。これと200年の鎖国が、日本人の保守性と内向性を形成してしまった。ボクが日本の競馬や野球を、外国のそれと比較して論じる時、必ずボクは 「外国かぶれ」で、「日本には日本の」と言われた。
そんな人達が、日本を捨てて外国に住むなんて、余程のことである(断っておくが、ボクは日本を捨てた事はない。ただ自分の信念と設計に添って生き ているだけである)。インタビューで移住を考えている女性が、その希望を知られると、職場で差別を受けるから匿名にして欲しい、と言っているのを読んで、 日本人は変っていないと感じた。世界に何億人と居るであろう移民希望者は、「国を捨てる」のではなく、「新天地(機会)を求めて」、外国へ出てゆくのであ る。
現在ボクが住んでいる日本以外の国々は、みな移民で成り立っている国である。そして永住権や市民権をもっていれば、ガイジンとは見なされない国 だ。しかし能力の差では、きびしく区別される。その中で懸命に働く日本の若者を見ていると、政治のレベルの低さが、より多くの海外移民を生むなら、思わぬ 収穫かも知れないと思った。