2013/9/24 7:00
韓国が9月から、福島県など日本でとれた水産物の輸入規制強化に踏み切った。五輪開催地決定の直前というタイミングもあり、日本では反発の声もあがった。在韓日本企業の間では、また別の懸念が浮上している。戦時徴用工への補償問題でも、韓国政府が「心変わり」するのではないかというものだ。
■水産物輸入で「手のひら返し」
「完全に手のひらを返しましたね。残念です」。6日、韓国政府が福島県など8県産の水産物輸入全面禁止を発表すると、ある日本政府関係者はこう述べた。韓国はこれまで、韓国で流通する日本の水産物は安全だと繰り返してきたが、一転して輸入規制を拡大したためだ。日本政府は「科学的根拠に基づく対応」を要請。規制強化の撤回を求めている。
韓国政府の判断には、日本産に限らない水産物消費全体の落ち込みが影響したようだ。原発汚染水の流出問題は韓国でも大きく報道されており、不安感が産地を問わない水産品の買い控えにつながっている。メディアや与野党からも規制強化を求める声が相次ぎ、押し切られた格好だ。
「日本の反発は必至なのに韓国政府は世論を優先して態度を変えた。徴用工問題もどうなることか」。ある日本の大手企業韓国支社長はまゆをひそめる。
韓国では現在、戦時中に強制労働を余儀なくされた韓国人元徴用工が日本企業を相手取った賠償請求訴訟が進む。日本の最高裁では、1965年の日韓国交正常化に伴う請求権協定により賠償請求はできなくなったとの判断が確定済みだ。だが2012年、韓国の最高裁に相当する大法院が「請求権は有効」と初めて判断。13年7月にはソウル高裁と釜山高裁がそれぞれ新日鉄住金と三菱重工業に対し、賠償支払いを命令した。
両社は控訴し大法院でも争うが、注目は韓国政府の対応だ。司法は行政から独立しているとはいえ、この問題は請求権協定という国家間の合意がかかわるためだ。韓国政府も日本政府同様、国家間では解決済みとの立場をとってきた経緯もある。
実際、韓国政府は現在、元徴用工ら10万人弱に総額5352億ウォン(約490億円)の支給を準備中だ。70年代にも徴用工遺族らに合計約25億ウォンを支払った。05年に韓国内で請求権協定の効力を再検討した際も、徴用工問題は解決済みとの認識を示した。徴用工問題に国内問題として取り組んできた。
■高裁判決後の立場はっきりせず
こんな姿勢が変わるのではないかと日本企業が懸念するのは、水産物問題からの連想からだけではない。12年に韓国大法院が「請求権は有効」と判断した際、当時の外交通商省は「我々(政府)の立場に変わりはない」と明言したが、今回ははっきりしないのだ。7月のソウル高裁判決を受けた政府の立場を聞かれ、外務省報道官は「関連部署と共に検討していく」と述べるにとどめた。大韓弁護士協会が朴槿恵(パク・クネ)大統領に「問題解決に向け日本政府と交渉せよ」と求めるなど韓国内での突き上げもある。
仮に韓国政府が「解決済み」との立場を変更し、大法院が高裁判決を支持した場合、日本企業はどうなるか。和解にも賠償にも応じなければ韓国内の資産を差し押さえられかねない。「韓国の新たなカントリーリスクと認識され、日本企業の投資判断にも大きく影響するだろう」(邦銀ソウル支店幹部)
影響は新日鉄住金など現在訴訟が進む一部の企業だけにとどまらない。徴用など戦時中の強制動員について調査した韓国政府の委員会は、現存被害者として22万人を認定。動員に関与した日本企業もリストアップしており、与党セヌリ党の李明洙(イ・ミョンス)議員によると、ここには三菱商事やパナソニックなど日本を代表する企業299社が掲載されている。訴訟が一気に拡大するとは考えにくいが、将来的なリスクはある。
日韓の経済関係に既に深刻な影響が出ているという声は今のところ聞かれない。だが、不安の芽はある。8月にソウルで開いた有識者による交流会議「日韓フォーラム」の議長声明は、日韓摩擦が「民間交流と経済関係にまで否定的な影響を及ぼす可能性が高まっている」と指摘。日本側代表幹事の小此木政夫九州大特任教授は「それぐらい危機感がある」と説明する。
日韓はこれまで政治関係が悪化しても「政冷経熱」で乗り切ってきた。もし経済にまで悪影響が及べば、双方にとって失う物は大きい。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1701J_X10C13A9000000/?n_cid=DSTPCS013
たぶん韓国はやる。止まらない。
国交断絶の用意と、
条約で解決したことを無視して日本企業の資産を強奪した場合には、
在日韓国企業の資産を差し押さえて被害企業の補償に充てる法律作れよ。
はよ
大合併から1年 新日鉄住金に国家資本主義の壁
(1/4ページ)
2013/9/25 7:00
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
この記事をtwitterでつぶやく
この記事をフェイスブックに追加
共有
いよいよ名実ともに復活してきたのだろうか――。「世紀の合併」と騒がれた新日鉄住金の誕生からもうすぐ1年。合併効果などで業績は急回復。製造業の日本代表として復権しつつあるが、心配の種が至るところで生まれている。とりわけ、「鉄は国家なり」を地で行くアジアの隣国から、かつてない逆風が吹いている。
■狙われた「日鉄」
「思いのほか、合併は順調。先が見えてきた。半年前なら引き受けられなかっただろう」
8月下旬、全日本柔道連盟の新会長就任会見。新会長として初仕事に臨んだ新日鉄住金の会長兼最高経営責任者(CEO)、宗岡正二は言葉の端々に自信をのぞかせた。
宗岡は「柔道に育てられた」が口癖。東京大学在学中は柔道部で主将を務めた。だが、そんな経歴だけで不祥事続きの全柔連の立て直しを託されたわけではない。
あるエネルギー大手OBは「業績も合併で安定したし、公職を頼みやすくなっている」と解説する。実際、旧新日本製鉄の会長として旧住友金属工業との合併を押し進めた三村明夫(現相談役)は今年11月、日本商工会議所の会頭に就任する。
計画発表時に「大型再編時代の再来を告げる」と脚光を浴びた新日鉄と住金の合併。昨年10月1日の新日鉄住金発足から1年たち、経済界や株式市場の視線は一変したが、会社そのものが強くなっても、解決しにくい難題が持ち上がっている。
東京都千代田区丸の内1丁目1番地――。
内堀通りを挟んで皇居が目の前の一等地に、新日鉄住金を悩ませる「幻」のような会社が本社住所を置いている。
その名は「日本製鉄」。日鉄は明治時代の官営製鉄所を始祖とし、第2次世界大戦前の1934年に官民の鉄鋼会社が統合して発足。軍需産業の要の役割も果たした。終戦後には、新日鉄の前身となる八幡製鉄や富士製鉄などに分割・解体され、歴史の表舞台から消えたはずだった。
ところが、日鉄は、法律上は消滅していなかった。日本政府が今も260万株を持っている。そして、この日鉄時代の問題を巡り、この夏、新日鉄住金が揺れた。7月10日、ソウル高裁が下した判決。「戦時中に日鉄で強制的な労働に従事させられた」として、新日鉄住金が韓国人徴用工4人に対し、合計4億ウォン(約3500万円)の賠償金を支払うよう命じられたのだった。
■起こるはずがないことが起きた
「韓国の司法も政府も、過去には、こんな見解はしていなかったのに」。知らせを受けた新日鉄住金首脳は、落胆を隠せない。
新日鉄住金はもちろん、過去の新日鉄、八幡や富士も日本製鉄の法的責任を継承していない。そもそも日韓国交正常化の際、請求問題が「完全かつ最終的に解決した」という合意も政府間で結ばれている。なぜ、こうした判断が下ったのだろうか。
国際法に詳しい日本の弁護士は「法律論以前に日本企業に有利な判決を出せない雰囲気があるのだろう」とみる。日韓関係はそこまで冷え込み、その渦に新日鉄住金が飲み込まれたという文脈だ。
新日鉄住金は徴用工への賠償命令について上告し、最高裁で争う姿勢を崩していない。ただ、韓国は、日本の鉄鋼メーカーにとって全輸出量の2割近くを占める最大の輸出相手国。新日鉄住金にとっては、事態を早く落ち着かせたいところだ。
一方、新日鉄住金同様、三菱重工業や不二越も徴用工訴訟を抱えている。新日鉄住金が和解に応じれば、日本企業に対するさらなる訴訟をまねきかねない。いずれにせよ、単独では解決できない問題の重みが新日鉄住金の動きを縛っている。
韓国とからむ訴訟は徴用工問題だけではない。
「起こるはずがないことが起きてしまった。よくある特許侵害といった議論ではなく、技術が不正に持ち出され、それを買った人がいたということだ」
合併発表以降、二人のリーダーが引っ張ってきた(左が新日鉄の宗岡正二社長、右が住金の友野宏社長、肩書は当時、2011年2月)
画像の拡大
合併発表以降、二人のリーダーが引っ張ってきた(左が新日鉄の宗岡正二社長、右が住金の友野宏社長、肩書は当時、2011年2月)
宗岡がこう断じるトラブルが合併直前の2011年に起きた鋼板技術の知的財産を巡る問題。相手は、韓国鉄鋼最大手のポスコだった。
■ミタルの脅威が去ったら、ポスコ
宗岡は「柔道で正論とルールを重んじる性格を培った」といわれ、曲がったことが大嫌いなことで知られている。裁判所の証拠保全命令を得ると、「一部の鋼板技術がポスコ側に漏れていた」という裏付けをとるため、OB技術者の自宅で関係書類を抑えにかかった。東京地裁での不正競争防止法に基づく訴訟では、実に1000億円の賠償を求め、係争は続いている。
ポスコは日韓請求権協定に基づく日本の無償・有償協力を使い、技術面では新日鉄の協力で生まれた経緯があるため、新日鉄社員の多くはポスコを「兄弟会社」のように思っていた。1990年代には、新日鉄首脳が、ポスコとの関係を強める構想を漏らしたこともあったが、今の空気は一変している。
急成長した韓国・現代自動車といったユーザー企業にポスコは技術力なども鍛えられ、日本勢を猛追。新日鉄住金社内では、こんな声が上がっている。
「ポスコとはアジアで直接、競り合っている。やはり、アルセロール・ミタルより脅威だ」
この10年間、新日鉄は、「21世紀の鉄鋼王」とも呼ばれたラクシュミ・ミタルが率いるミタルの脅威にさらされていた。ミタルは相次ぐ買収で急成長。新日鉄さえ買収のターゲットともいわれ、当時、社長だった三村ら経営陣を震え上がらせた。
だが、今やミタルは欧州経済の不振に襲われ、業績は低迷。かたや新日鉄住金は業績が回復し、4~6月期の営業利益はミタルより6割以上多い。合併以降は君津製鉄所で高炉休止を決めるなど生産体制の再編に踏み込み、株式市場の評価も上々。時価総額は今年に入りミタルを逆転。新日鉄住金の時価総額は3兆3000億円、ミタルが2兆3000億円と差をつけた。
■友好国も読み切れない
「買収の危機は遠のいている」。新日鉄の社長時代に何度もミタルと対峙した三村は今、ほっとしているが、そんなミタルとは別のライバルの存在感が急激に大きくなっている。規模や技術力を増すアジアの鉄鋼大手、その背後の「国家」だ。

政府、司法、世論……。その攻め口は、様々に形を変え、「資本の論理」で戦ったミタルとは別次元の攻防を強いられる。時には、日鉄時代の賠償問題のような重圧もかけてくる。新日鉄住金にとっては、1つ対処するのにも神経をすり減らし、「民間企業」の力だけでは抗えない相手である。
領土問題などで関係が微妙な韓国だけの話ではない。「日本や日本企業に対して友好的」と考えていたアジアの他国も、警戒しなくてはならない相手に変わろうとしている。
「懲罰的な税率をかけられた。我々の考え方が甘かったのだろうか」
今春、インドネシア政府が国内メーカーを守るために決めた反ダンピング課税(不当廉売)について、新日鉄住金の幹部らは、想定外の決定内容に驚かされた。
車や家電製品などに幅広く使われる冷延鋼板について日本、中国、韓国、台湾、ベトナム産の製品が関税を上乗せされるが、日本勢の新日鉄住金などは、最高の55.6%の税率をかけられる。中国が最高でも43.5%、韓国に至っては最高で11.0%。その差は歴然だったからだ。
そもそも、安値競争を繰り広げているのは中国勢。しかも、日本勢の冷延鋼板の大半は日系自動車メーカーなどが使う高級材で、インドネシアの国内メーカー品では代替できない。鉄鋼業界の関係者によると、輸出担当者が繰り返し、現地の政府関係者やユーザーの自動車各社にも接触、インドネシア政府の一部も反ダンピング措置回避に動いてくれていたはずだったという。
ところが、ふたを開けたら、結論はクロ。ある鉄鋼商社幹部は「現地政府にすると、自動車産業の成長に合わせて、鉄鋼などの裾野産業も国内で育てたい。『高級鋼板で、今はインドネシア産の鋼板と競合していない』からといって、直ちにシロとはならなかったのかもしれない」と推察する。
■トヨタと値上げ決着しても……
新日鉄住金は日本政府などと連携して見直しを訴えているが、事態は好転しない。アジアで断トツの鉄鋼メーカーとして、ポスコなどの製鉄所づくりを助ける余裕まで見せていた全盛期だったら、相手国の対応も姿勢も違っていたのかもしれない。しかし、そんな強力なリーダーシップは、新日鉄住金になっても取り戻せていない。
7月にトヨタとの間で決着した2013年4~9月期の自動車用鋼板の価格交渉。1万円(約10%)の値上げで合意できたが、ある新日鉄住金幹部は焦りを隠さなかった。
「技術開発など将来の競争力の強化へ投じる分まで獲得できたとは思っていない」
有力顧客であるトヨタとの「チャンピオン交渉」で一定の果実を得られれば、一安心できるはず。なぜ、満足できないのか、不安が尽きないのか。
その原因は隣の中国で生まれている。
「記事通りに、業界再編が進んでくれたら市況も回復し、我々も助かるのになあ」。ある新日鉄住金の役員は7月中旬、中国の国営メディアが流した記事に思わず苦笑した。
「日本の鉄鋼業・輝きを取り戻したのはなぜ」
こんなヘッドラインの記事は、日本勢の経営改革を引き合いに出し、「中国の鉄鋼業の競争力は日本には及ばない。これから合併再編の波に直面することは確実だ」と予言めいた結論で締めくくられていた。
しかし、現実は正反対。中国政府が鉄鋼業の再編を掲げても、雇用減を警戒する地方政府の抵抗もあり、遅々として進まない。
結果、鋼材市況の動きを示す汎用品「ホットコイル(熱延鋼板)」の価格は現在、2008年のリーマン・ショック前と比べ、およそ半値。市況が回復するたびに、中国の地方中小メーカーが増産に走り、アジア市場にあふれ出てくるためだ。国内外の鋼材価格に下押し圧力がかかり、新日鉄住金など日本メーカーは、いつ価格競争の泥沼に入り込んでもおかしくない。
■周辺国はまだ「鉄は国家なり」の時代
粗鋼生産という「規模」で見れば、新日鉄住金は世界首位のミタルに次ぐ2番手に浮上したが、世界上位10社中、6社が中国勢。そして、中国という国そのものの生産量は7億トンを超える。世界の半分近くを占め、2位の日本の約7倍。新日鉄住金が世界2位になっても、過剰設備の廃棄などリストラに努力しても、「鉄鋼国家」といえる中国の動き一つで翻弄されかねない。
「鉄は国家なり」――。19世紀プロイセン王国の首相、ビスマルクの演説に由来する、ともされる有名なフレーズは、経済のソフト・サービス化が進んだ日本では、とうの昔に古びてしまっている。
一方、中国や韓国は違う。そのフレーズは政府や産業界が今も大事に守っている。日中韓を追いかける他のアジアの国では、国営鉄鋼会社も健在。これからも「鉄は国家なり」と叫ぶ政治家や経営者が、後を絶たないはずだ。それらの国は、時に国家や基幹産業のプライドをかけて、日本の代表である新日鉄住金との競争に臨むだろう。
稲山嘉寛ら新日鉄の歴代トップは過去、アジアの鉄鋼大手と友好を温めてきた。そのかいあってか、目立った衝突は起きてこなかったが、これからはどうか。
ある新日鉄OBは「日本の停滞とアジア各国の成長で、鉄鋼メーカー間のパワーバランスは変わった。『上から目線』だったら、相手のメーカーや政府の反感を招き、想定外のことが起きる」と警告する。
合併によって財務諸表の数字は確かに良くなった。しかし、合併の成果をもう一段引き出し、「アジアの盟主」の座に戻るには、時には国家すら相手に立ち回る懐の深さが必要になる。
=敬称略
(檀上誠)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2001F_Q3A920C1000000/?n_cid=DSTPCS001