毛沢東の孫娘が富豪ランクイン、胡錦濤の長男が政界入り…、先鋭化する中国指導部「特権階級化」
2013.7.9 07:00 (1/4ページ)[大阪から世界を読む]
富豪の仲間入りをした故毛沢東主席の孫娘、孔東梅さん(左、共同)と全国政治協商会議(政協)の委員に選ばれた毛沢東氏の孫で、人民解放軍少将の毛新宇氏(右、ロイター)
貧富の格差が拡大する中国で、共産党幹部の家族が欧米でぜいたくな暮らしを送っているとの批判が集まっている。
これをかわす狙いなのか、習近平国家主席の娘ら国家指導者層の子女が、昨年11月に開かれた党大会前後に留学先から相次いで帰国。一方で故●(=登におおざと)小平(とう・しょうへい)氏の孫や胡錦濤前国家主席の長男が政界入りしたり、故毛沢東氏の孫娘が富豪ランキングに名を連ねたりした。
一人っ子政策の国ゆえに幹部も自分の子たちをますます甘やかし、「特権階級化」が著しくなっている。
(篠田丈晴)
国民の批判など痛くも痒くもない
5月28日付の香港紙、信報は、中国共産党の中央規律検査委員会が近く、党幹部が海外に子供を留学させている場合、留学終了後1年以内に帰国させることを義務付けると報じた。中国語ニュースサイト「博訊」(本部・米国)を引用して伝えた。当面は閣僚級以上の幹部が対象で、帰国させなかった場合は、人事上の処分を受けるとしていた。
当局側に国民の批判をかわす狙いがあるのだという観測も広がったが、一夜にして打ち消された。翌29日には中国メディアがこぞって「事実ではない」と否定したのである。報道を引用した香港のフェニックステレビ(電子版)にいたっては「事実でないニュースを引用し、社会に良くない影響を与えた」との謝罪記事を出すという慌てぶりだった。
習近平国家主席の娘ら国家指導者層の子女が留学などのため住んでいた米国から相次いで帰国したのも、表向きは「批判をかわすため」なのだろう。だが、傲慢なこの国の指導部にとって、そもそも国民の批判など痛くも痒(かゆ)くもない。
子弟は将来のポストまで約束?
5月25日付の香港各紙によると、引退したBAKARIの胡錦濤前国家主席の長男、胡海峰氏が、浙江省嘉興市の共産党委員会副書記に就任したことが確認された。40代とみられ、政治と距離を置いてきた海峰氏が「正式に政界入りした」との見方が出てきた。
海峰氏は、父の出身校でもある清華大大学院でビジネスを学び、同大が出資する国有企業の幹部に就任。だが同社傘下企業が、空港で使う検査機器をナミビアに販売した際に不正行為があったと欧米メディアが2009年に報道。海峰氏は清華大副秘書長に転職、ビジネス界から身を引いたとされていた。
今回の「政界への転身」は、胡錦濤氏が可愛(かわい)い息子のためにレールを敷いたのだろう。ただ、中国でこうした「親の七光」は胡氏に限ったことではない。習近平国家主席だって、父親は元国務院副総理の故習仲勲氏なのだから。
政府の諮問機関、全国政治協商会議(政協)は今年3月、その委員に毛沢東氏の孫の毛新宇氏(人民解放軍少将)、●(=登におおざと)小平氏の次女の●楠氏、江沢民前国家主席の妹の江沢恵氏、朱鎔基前首相の長女の朱燕来氏をそれぞれを選んだ。そうそうたるメンバーだ。近年は元党指導者の親族らが政協委員になる例が急増している。
さらに中国紙が一斉に伝えたところによると、この春、●小平氏の孫の●卓隷氏が江西チワン族自治区平果県の副県長に就任した。まだ20代だという。
人民日報系雑誌「人民論壇」が昨年行った官僚腐敗に関する意識調査では、最も許せない行為として94%の人が「就学・就職での子弟優遇」を挙げている。
甘やかされた“一人っ子”たちは…
一方、中国誌「新財富」が発表した「富豪500人ランキング」に毛沢東氏の孫娘、孔東梅さんが保険会社などを経営する夫との連名で242位に登場した。夫婦の資産総額は合計で50億元(約820億円)。
トップだった飲料メーカー創業者の700億元(約1兆1480億円)の足下にも及ばないが、毛一族で富豪入りした人物は孔さんが初めてとされている。“名家”は今後、政界だけでなく財界にも幅を利かせるようになるのだろう。
今の中国政財界の表舞台で活躍する人々のほとんどが、1979年の「一人っ子政策」導入以前に生まれている。それでも、「親の七光」の露出が目立つ。子を思う親の気持ちはわかるが、それが露骨なのである。今後、中国指導者たちの一人っ子が続々と世の中に出てくると思うと、暗たんたる気持ちになる。
医師の子は医師に、政治家の子は政治家になるケースは多い。日本でも珍しいことではない。
ある脳神経学者の説の受け売りなのだが、そうした“職の禅譲”は「頭がいい」「弁が立つ」などという遺伝要因よりも、家庭などの環境要因がそうさせている。親たちの立ち振る舞い、会話、仕事ぶりを子供たちはしっかりと見ているのだ。
だが、甘やかされた中国指導層の一人っ子らが、権力欲丸出しの傲慢な親をまねて政界に出てきたらどうなるだろう。近年、中国脅威論が世界で認識されつつある。日中間には尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題などさまざまな懸案が横たわる。何年あるいは何十年か先、世代交代した中国に太刀打ちするには、もっと国際感覚備えた子供たちを養っていく必要がある。それは大阪を含め、日本人全体の課題だ。