中国の「THAADいじめ」韓国に想像以上の打撃 現代自にロッテ、Kビューティーに直撃弾
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中国事業が不振の現代自動車の展示車両=韓国(ロイター)
中国政府が主導したとみられる中国人の嫌韓感情が、じわりと韓国企業を追い込んでいる。不買運動のあおりで代表格の韓国自動車や、中国でブームを起こした韓国化粧品はこぞって利益が約半減。ある程度覚悟をしていたものの、想定以上の業績の落ち込みに各社は動揺を隠せない。蜜月関係の崩壊は在韓米軍の最新鋭迎撃システム「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」がきっかけだが、韓国が北朝鮮の核の脅威に対応するための配備を撤回するのも難しい。韓国企業の中国進出は厳しさが増すばかりだ。
「自動車・化粧品業界は(中国の経済報復で)苦戦が予想されていたが、これほどの衝撃は予想できなかった」。現代自動車とアモーレパシフックの業界最大手2社が発表した今年4~6月期決算について、韓国の大手紙、中央日報(日本語電子版)はこう分析した。
現代自は売上高が前年同期比1.5%減の24兆3080億ウォン(約2兆4300億円)で、最終利益が9136億ウォンと48.2%も減少した。最終利益が1兆ウォンを下回ったのは欧州を中心に普及している国際会計基準(IFRS)が適用された2010年以降では初めてだ。
「中国現地合弁会社の北京現代(持ち株比率50%)の業績悪化で持ち分法の評価利益が大きく減少したため」。業績悪化について現代自の関係者はこう説明し、肩を落とす。現代自は昨年、世界販売台数の2割以上となる約110万台を中国で販売。国別首位の中国が最大の収益源となっているだけに、事態は深刻だ。値引きをしてもなかなか売れないようで、このほど完成した重慶市の工場の稼働率も低空飛行を続けているとみられる。現地の部品供給システムと流通システムに支障が出るほど打撃を受けているという。
韓国映画やドラマなど“韓流”コンテンツの普及で親近感がわいて好感度も上がった韓国産化粧品(Kビューティー)も「直撃弾を受けた」(中央日報日本語電子版)。韓国化粧品企業が中国で起こしたKビューティーブームの中心的な役割だったアモーレパシフックの4~6月期決算は、韓国離れが響き売上高が17.8%減の1兆4130億ウォン、最終利益は59.5%減の999億ウォンと大幅な減収減益となった。韓国化粧品業界は「THAAD報復による売上高への打撃が下半期まで続くだろう」と嘆く。
このほかの業種にも不買の影響は広がっている。韓国ロッテが中国国内で100店舗程度運営するスーパーは営業停止に追い込まれ、ほとんどの店舗が閉鎖。4~6月期の中国での売り上げは約95%も減少した。いまだ再開のメドが立たず、事業撤退に近い状況だ。ロッテの惨状を伝えた聯合ニュース(日本語電子版)は「中国の報復による打撃の大きさを物語っている」と強調した。
また、中国政府が韓国団体観光を禁止した影響で、6月に韓国を訪問した中国人旅行客は前年同月より60%以上も減少した。中国人観光客は他の国の観光客より旅先で使う金額が比較的多い。このため、韓国国内の免税店の売上高は軒並み急減した。韓国銀行(中央銀行)は7月の経済展望報告書で中韓の軋轢(あつれき)が今年の経済成長率を0.3ポイントほど引き下げたことを明らかにしている。
中国政府は米韓両国に「地域の戦略的均衡に懸念をもたらす動きだ」としてTHAADの撤去を繰り返し求めてきた。これに対し、韓国は文在寅(ムン・ジェイン)大統領がトランプ米大統領にTHAADを撤去する意思がないことを伝えるなど、中韓両国の溝は深い。今月6日にフィリピンの首都マニラで国際会議に合わせて行われた中韓外相会談ではTHAADに関する論議が多くを占めた。中国の王毅外相は「やむを得ず指摘しなければならない」としながらTHAADに関する韓国政府の決定に抗議の意を示した。
王外相は会談後も「安全保障に関連する韓国の関心事が中国の不安定要素となってはならない」などと自国の主張を繰り返し隔たりが大きい。両国とも歩み寄る気配がなく、中国による経済報復が長期化するのはほぼ決定的な情勢だ。
中国事業の不振が続きいらだちを募らせるばかりの韓国企業だが、今の韓国経済界には韓国政府を動かす力はない。政治力を発揮する際の「窓口」であった経済団体「全国経済人連合会(全経連)」が危機に陥っているためだ。全経連は朴槿恵(パク・クネ)前大統領とその友人の国政介入疑惑に巻き込まれ、財閥企業が続々と脱退。これまでにサムスングループやLGグループといった大手財閥が相次いで抜けた。まとめ役だった全経連は影響力が低下し、韓国企業が事態の打開を働き掛けることができないでいる。文氏は大統領就任直後に対中関係の改善を訴えていたものの、今のところなすすべがないのが実情だ。
韓国企業のある関係者は「THAADについてはまったく解決の兆しがみられない。中国関連の企業の実績が回復するのは容易ではない」とため息をつく。韓国企業が国内での成功をもとに「世界の市場」と呼ばれる中国に打って出る規模拡大戦略は曲がり角を迎えた。今後、韓国企業の中国撤退が相次ぐことも否定できない。(経済本部 佐藤克史)