記事入力 : 2018/10/19 11:22
【コラム】韓国政府のフェイクニュース取り締まり、どこまで本気か
韓国政府は、いわゆる「捏造(ねつぞう)情報」の根絶のため、汎(はん)政府レベルの制度改善案を作っている。大々的な実態調査と取り締まり、処罰などが含まれているという。李洛淵(イ・ナクヨン)首相が10月初めに「国家のニュースに関するとんでもないフェイクニュースまで出回っている。(中略)検察と警察は速やかに捜査し、厳正に処罰すべき」と発言した後、瞬く間に物事は進んでいる。
世間には、明白なうそや誤り、誇張・歪曲(わいきょく)された情報と同じくらいに、真偽を判別し難い情報も多い。例えば、李明博(イ・ミョンバク)政権初期にその存立を揺るがすほどだった「米国産牛肉を食べたら狂牛病(牛海綿状脳症。BSE)にかかる」という主張は、10年もの歳月を経てようやく、多くの韓国国民が自然とフェイクニュースだと受け取るようになった。週末、大手スーパーの米国産牛肉試食コーナーに長い列ができているのを見れば、これが分かる。
「医療を民営化したら内視鏡診療費が数百万ウォン(100万ウォン=約10万円)になる」といった「民営化デマ」や「セウォル号米軍潜水艦衝突説」など、明白なうそにもかかわらず世間を一時騒がせて姿を消した、無数のフェイクニュースが存在する。未婚の女性大統領だった朴槿恵(パク・クンへ)前大統領の名前の後ろに「密会説」「バイアグラ」「ベッド」など、想像力を刺激するありとあらゆる単語を付けたタイトルの動画は、これまで堂々と出回っている。
国家は法と権能を利用して真実を判定してやるべきではあるが、今の韓国の政権勢力に、そうする真剣な意思があるのかどうか疑わしい。むしろ、フェイクニュースという「フレーム(枠組み)」で恥部を隠したり、政敵を攻撃したりする可能性の方が高いとみられる。
近ごろでは、世界で最も進んだ国といわれる米国でも、ドナルド・トランプ大統領のような政治家がニューヨーク・タイムズ、CNNテレビといった伝統的メディアの報道に「うそ(フェイク)」のレッテルをいともたやすく貼ってしまっているではないか。韓国の現政権もまた、このところ影響力が高まっている右派ユーチューバーのネット放送に対し、フェイクニュースのフレームを適用するのではないかという「合理的疑い」が持たれているのだ。現に、かつてセウォル号沈没事件や、朴槿恵大統領を追い詰めた「ろうそく政局」において左派ユーチューバーやポッドキャストが勢いづいた際、現在の与党勢力はフェイクニュースという言葉すら持ち出さなかった。
現在、政権側の相当数の人物は、青年時代に流言飛語流布罪や讃揚・鼓舞罪(国家保安法違反)と言われれば歯ぎしりした経験を持っている。そんな人々が、今度は虚偽・捏造情報処罰のための新たな法律を作りたいという。韓国人は幼いころから、いくら隠しても誰かが「王様の耳はロバの耳」と言い、広まっていくのだという「寓話」を聞いてきた。「裸の王様」の物語は、「真実は結局、うそに勝つ」という比喩として用いられもする。
韓国の現政権の人々は誰よりも「公正」という言葉を好み、ひんぱんに使っているが、その人々の最近の行いを見ていると「全ての動物は平等。しかしある動物は他の動物よりもっと平等」だという、ジョージ・オーウェルの『動物農場』をふと思い出す。