若い女性を中心に、“第三次韓流ブーム”が起きている。一時期静まった新大久保は再び活気に溢れ、K-POPアイドルに憧れて韓国へダンス留学をする若者たちも多いという。そんな中、若者に紛れながら韓国語留学をしている、50代のいわゆる“おじさん”もいる。
⇒【写真】留学を満喫中の渡邊さん
留学するまでは建築業界で働いていたという渡邊雄二さん(50代・仮名)。昨年の夏、突然会社を辞めて渡韓した。その目的は、若い女性と同様、K-POPアイドルだ……。
◆K-POPアイドルを目的に会社を辞めた50代の日本人男性
お気に入りの女性アイドルグループに出会うまでは嫌韓だったという渡邊さん。
「韓国語を勉強するまでは、ヨン様ブームが起きた第一次韓流ブームも、東方神起や少女時代の第二次韓流ブームも、正直、うざったいと思っていました。韓国の話題が嫌いで、何が良いのか全くわかりませんでしたよ」ヨン様ブームが起きた第一次韓流ブームも、東方神起や少女時代の第二次韓流ブームも、正直、うざったいと思っていました。韓国の話題が嫌いで、何が良いのか全くわかりませんでしたよ」
日本のアイドルにもまったく興味がなく、ニュースや旅行番組を見るのが好きだった渡邊さんの、平凡な日常を変えたのはYouTubeの広告だった。
「あれだけ大々的なブームになると、YouTubeに韓流アイドルの『おすすめ動画』や『広告』が目に入るようになり、ある日、広告に出ていたKARAに釘付けになっていましたよ。1日10時間は見ていましたね。そして、いつしか“この子たちが住んでいる韓国って、どんなところなんだろう?”という気に変わり『KARAがあれだけ流暢に日本語を話しているのだから、自分も韓国語を話せるんじゃないかな?』って思ったんです。それに、韓国語が話せたらアイドルと会話ができるのかなって(笑)」KARAに釘付けになっていましたよ。1日10時間は見ていましたね。そして、いつしか“この子たちが住んでいる韓国って、どんなところなんだろう?”という気に変わり『KARAがあれだけ流暢に日本語を話しているのだから、自分も韓国語を話せるんじゃないかな?』って思ったんです。それに、韓国語が話せたらアイドルと会話ができるのかなって(笑)」
韓国に行くこと自体ありえないと思っていたほどの嫌韓から、180度気持ちが韓国に向いた。
2012年頃、まだ携帯電話がガラケーだった時代に、行き先をプリントアウトして出かけた韓国旅行。しかし、結果は言葉が通じないので3時間も迷子になったという。だが、懲りることなく、それから何度も韓国旅行に出かけた。
「今はある程度の韓国語がわかりますし、スマホもあるので、それなりにスムーズですよ(苦笑)」
◆夢の韓国留学「こんな楽しい日々は一生来ない」
現在は韓国に留学中の渡邊さん。とはいえ、会社を辞めてまで留学することにためらいはなかったのだろうか。
「実は、昨年の春頃から原因不明の目眩に襲われ、体調不良で会社も休みがちだったんですよね……。このままでは、会社に迷惑をかけると思って。ちょうどいいきっかけだったのかもしれません。退社をして、すぐさま韓国にやって来ました」
渡邊さんは独身だったこともあり、韓国に渡るまで時間はかからなかった。ともあれ、日本と韓国では文化が異なる。実際に生活をしてみて感じたことは?
「生活面では、日本と比べて不便さは感じないですが、いちばん違うのは“人”ですね。よく言えば“親切”、悪く言えば“おせっかい”です。『ご飯は食べたのか?』『どこへ行くのか?』の質問は当たり前。体調を崩したときはご飯を持って来てくれたことも……。初めて韓国に行った日、日本語が可能なタクシーに乗っていたのですが、運転手にお昼ご飯を誘われて一緒に冷麺を食べました(笑)。本当に人と人の距離感がとても近い。日本人は、そういった距離感に慣れてないので、受け入れることができないときもありますね」
そもそも留学といったら20代が中心で年齢がハンデになるのでは? と思われがちだ。しかし、そういった悩みは一切無く、“韓国語を勉強したい”という意思は増すばかりだったという。その原動力となったのは、やはりアイドルへの想いだ。
「ある程度の韓国語がわかっている状態で来たんですが、授業はぜんぶ韓国語だし、宿題も多くて、朝までかかったこともありました。でも、好きなアイドルがいる国に住んでいて、その子たちを理解するために語学を勉強していると思うだけで、辛さの中に楽しさがあります。また、たくさんの日本人の20代の女のコと友達にもなりましたよ。大体の子がアイドルを好きで留学しているので会話も合います。夜中の2時までカフェで話しても、周りから変な目で見られることもありませんよ。こんな楽しい日々は一生来ないと思っています」
◆追っかけに大忙しの日々
K-POP界では、アイドルは1年に1回程度アルバムをリリースする。そのタイミングを「カムバック」と呼び、カムバック後はアイドルがもっとも活動する期間となる。音楽番組の収録に並べば参加することができたり、サイン会に当選すればアイドルと会話したりすることも可能だ。
日本と似ている部分もあるが、直接会える確率は韓国の方が断然に高いため、渡韓する若い女のコが多い。渡邊さんの友人の中には、サイン会のためにCDを30万円以上買い、スーツケースにCDだけを詰め込んで帰っていくという人もいるそうだ。
「今は当初とは別のアイドルグループが好きなんですが、そのアイドルの韓国のイベント先でさらに友達が増えました。若い女のコから同年代まで。職業も一流企業から主婦まで様々ですよ。今回の留学の時期とカムバックがかぶったのでラッキーでした。運が良ければアイドルに遭遇できるポップアップカフェに1日いたり、イベント看板を撮りに行ったりと忙しいです(笑)。仲間は口を揃えて『韓国は夢の国』だって言います」
生き生きとした表情で話す渡邊さん。もともとは嫌韓だったが、今では多くの仲間たちと出会い、すっかりと韓国に魅了されてしまったようだ。しかし、今後のことや悩みなどはないのだろうか。
「韓国アイドルに出会って、人生がガラリと変わりました。日本に帰ったら1人暮らしですが、日韓の友達も増えたし、アイドルのYouTubeを見るのが忙しいので、特に寂しくはないですよ。韓国語を使ってアイドルと話すもの夢ですが、2020年の東京オリンピックで、ボランティアスタッフとして活かしてみたいです。あと、突発的に会社を辞めてしまったので、帰国したら転職活動をしようと思っています(笑)」<取材・文/南沙織>東京オリンピックで、ボランティアスタッフとして活かしてみたいです。あと、突発的に会社を辞めてしまったので、帰国したら転職活動をしようと思っています(笑)」