【社説】裁判官を脅迫する韓国与党、沈黙する大法院長
共に民主党は金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事に対する有罪判決について、「梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長の積弊グループが組織的に抵抗している。警告する」と表明した。民主党は裁判官らに対する人的清算が必要だとし、「弾劾を検討する」とも述べた。自分たちの意向にそぐわない判決を出した裁判官を追い出すというのだ。これが民主化運動をしてきた人々の素顔だ。
実際に民主社会のための弁護士会(民弁)は、司法行政権乱用事件をめぐる弾劾判事リストを発表し、金知事の事件の裁判長もリストに含めるかどうか検討すると表明した。大統領府(青瓦台)には担当判事全員を辞任させるべきだとする請願が1日で18万件も集まった。インターネット上では裁判所に対する露骨な非難であふれている。極端な勢力が総動員される典型的な状況だ。民主党の政策委員長は「控訴審を担当するソウル高裁の判事は絶対多数が司法介入による判事なので心配だ」と語った。二審を担当する判事を脅迫する発言だ。今は独裁時代だとでも言うのか。これこそ司法介入ではないのか。
判決に対する批判は自由であるべきだが、合理的で根拠がなければならない。裁判所は金知事への有罪判決で多くの証拠を示した。金知事がドルイドキングの事務所を訪ねたその時間にコメント操作プログラム「キングスクラブ」に16分間接続されていた。ドルイドキング側の3人が「当時はキングスクラブの実演をした」と供述している。また、金知事とドルイドキングが秘密のメッセンジャーでやりとりした報告に「キングスクラブの完成度は98%」という内容があり、ドルイドキングがコメント操作の作業を終えた記事のリストを送ると、金知事は「ありがとう」と答えていたとされる。金知事は報告を確認することなく自動削除したと主張するが、削除は相手がメッセージを確認しないとできない。金知事はドルイドキングに記事のURLを送ったことを「広報目的」と主張したが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領候補に批判的な記事を送ったのも広報目的だと言い切れるのか。コメント操作が目的だったと言わざるを得ない。ところが民主党はそうした核心には一切触れず、裁判長が「積弊」であり、「法律の常識では納得できない判決を下した」と決めつけた。頑として無理を通そうとするばかりだ。
金知事の事件で裁判長を務めた判事は、朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領の国家情報院特別費授受事件では懲役8年を言い渡している。青瓦台の元秘書室長と政務首席秘書官の逮捕状も交付した。民主党は当時、「裁判所の賢明な判断だ」「尊重する」としていた。文在寅支持勢力はインターネット上で、「韓国では珍しい本当の判事だ」「司法機関の宝だ」などと持ち上げた。ところが、金知事に対する有罪判決が下されると、「弾劾対象」「積弊」「判事のごみ」などと非難を始めた。民主党は国家情報院による世論操作事件を「想像もできない犯罪」だと批判していた。ところが、それよりも規模がはるかに大きいドルイドキングによる世論操作事件については「個人レベルの犯罪」「国家情報院の世論操作が鳥ならば、ドルイドキングはハエ程度だ」と主張した。韓国には男女関係にたとえて、「自分のことならばロマンス、他人のことならば不倫」という意味の「ネロナムブル」という言葉がある。自分たちのすることは善で反対勢力がすることは全て悪だと都合よく考えることを指す。彼らの「ネロナムブル」ぶりは体質化した不治の病だ。
到底理解できないのは、金命洙(キム・ミョンス)大法院長(最高裁長官に相当)の態度だ。大法院長は就任時に「裁判官の独立を侵害する試みを体を張って防ぐ」と表明していた。そんな意志は皆無で、ただ格好をつけただけの空言だった。企業の会長に執行猶予を言い渡した判事の解任を青瓦台が求めてきても反発せずに押し黙り、大統領による司法機関への捜査指示には同調した。そして、今回の金知事の裁判をめぐり、与党が裁判官の独立を露骨に侵害しても沈黙している。法曹界からは「大法院長ではなく、まるで青瓦台の秘書だ」という声も漏れる。こんな国の有り様はあまりにひどい。