日本酒がワイン大国「フランス」に攻め込む理由 総輸出金額ではわずか1%にすぎないが…
東洋経済オンライン / 2019年2月9日 9時40分

昨年、パリで開催された「Kura Master(クラマスター)」という日本酒コンクール(品評会)の様子(写真:クラマスター協会)
日本酒やビール、ウイスキーといった「日本の酒」の世界進出が止まらない。財務省の貿易統計によると、日本の酒の2018年海外輸出は数量が1億7000万リットル、金額にして600億円を突破。数量、金額ともに過去最高を更新した。この10年間で、どちらも4倍にまで拡大している。
カテゴリー別では輸出金額のトップは日本酒で、2018年には前年比19%増の222億円だった。次いでウイスキーが約150億円、ビールが約130億円と続く。10年前は日本酒76億円、ビール30億円、ウイスキー14億円という順だった。
■最大輸出先はアメリカ
ビールとウイスキーはもともと海外でもなじみがあるが、数字で表われているように、日本酒もいっそう広がりを見せている。背景には、世界的な日本食ブームの中で日本食レストランが増え、そこでの取り扱いが増えていることがある。
日本酒の最大輸出先はアメリカで、3割弱を占める。そして、韓国や中国などアジア圏が続く。これらの地域を合わせると輸出シェアは7割を超える。アメリカとアジア圏では、和食レストランの数は合計9.4万店と、3年間で実に1.3倍となっている(2017年10月時点、経済産業省調査)。
和食レストランの拡大という追い風が吹く一方で、一部の日本酒の蔵元の間では「和食ブームに頼らない海外展開」を狙う動きもある。その象徴とも言える存在が、2017年5月からフランスで開催されている「Kura Master(クラマスター)」という日本酒コンクール(品評会)だ。
このコンクールは、「フランスにおけるフランス人によるフランス人のための、日本酒のコンクール」を標榜する。運営主体のクラマスター協会はパリ市公認の非営利組織で、審査員もフランスのレストランやホテルに務めるフランス人ソムリエが顔をそろえる。
2回目のコンクールが開催された2018年5月には、中小の蔵元を中心に257蔵が参加した。全国にはおよそ1400蔵があるため、全国の蔵元の約2割が参加したことになる。3回目のコンクールも今年5月に予定されている。1月末から申し込み受け付けが始まり、すでに300蔵の参加が見込まれている。
同コンクールが輸出のターゲットに見据えるのは、もちろんフランス。とはいえ、日本酒のフランスへの輸出金額は3億円程度(2018年)。10年前に比べて3倍以上に増えているものの、日本酒の総輸出金額のわずか1パーセントにすぎない。輸出先の国別ランキングでは、16位と下位に位置する。なぜ、日本酒の蔵元はフランスを目指すのか。
■ワインとの類似性
複数の関係者は、フランスでは日本酒の潜在需要が高いことを強調する。「日本酒は、製造された地域の気候や風土によってさまざまな個性が出る。ワインと同じように、フランス料理の食中酒として浸透するポテンシャルがある」。パリの三つ星高級ホテル「ホテル・ドゥ・クリヨン」でトップソムリエを務める、コンクール審査員長のグザビエ・チュイザ氏はそう語る。
最近は、ホテル・ドゥ・クリヨンはもちろんのこと、ほかの多くの星付きホテルやレストランで「日本酒の導入が進んでいる」(同)という。
また、クラマスター運営委員長の宮川圭一郎氏は、日本酒が合うシンプルな味付けの料理がフランスで増えていることを説明する。「フランスでも日本のように健康志向が進み、バターや生クリームなどこってりした食材を使う量や頻度が少なくなってきている」。
蔵元がフランスを目指すことは、戦略的にも有効なようだ。「世界のベンチマークになるようなパリの高級飲食店で日本酒が導入されることは、全世界にあるフレンチレストランに日本酒が導入されることにつながる」(酒類業界に詳しい酒文化研究所の山田聡昭氏)。
実際に、2018年最高賞を受賞した中野酒造(大分県)の中野淳之代表は、「受賞した直後から輸出を中心に引き合いが急増した」と話す。
■ワイングラス1杯で10~20ユーロ
さらに、クラマスター運営委員長の宮川氏は、「フランスでは、コンクールは有効なマーケティング手法」と言う。同国では、法律によってテレビや公共の場におけるアルコール飲料の広告が大幅に規制されていることもあり、「アルコール飲料は有名ソムリエの“お墨付き”をラベルに貼って消費者に訴求することが効果的」と見られているのだ。
現地の飲食店で提供される日本酒は、ワイングラス1杯で10~20ユーロ(1200円~2400円)が相場。製造量が限られる中小の蔵元にとって、純米大吟醸など高単価な商品を輸出できることもメリットだ。
フランスでの本格的浸透に期待は高まるが、一朝一夕にはいかないだろう。「フランスでは取り扱っている輸入代理店や問屋が少ない」と、JETRO佐賀の吉田健氏は指摘する。今後の輸出拡大には消費者への認知度向上だけでなく、販路や代理店の開拓も同時に進めていくことが求められるというわけだ。
和食ブームの裏で動き出した日本酒のフランス深耕戦略。日本酒が本当の意味で「世界の酒」になるには、舌の肥えたフランス人に認められる必要がある。
石阪 友貴:東洋経済 記者
これは...、やはり日本酒の世界化は無理だ。トンスルには負けるnida