北朝鮮リスク、息を殺して見守る韓国経済

「金正恩(キム・ジョンウン)氏は死亡したか、無能力の状態だとほぼ確信している」
米国のリンゼー・グラム上院議員(共和党)は4月26日、FOXニュースとのインタビューで、北朝鮮の金正恩国務委員長の健康状態についてそう言及した。トランプ米大統領の側近であり、米政界のムードを物語る発言だ。
青瓦台と韓国政府は金委員長の健康異常説について、「特に(変わった)動向はない」との立場だ。しかし、海外メディアからは金平日(キム・ピョンイル)氏、金与正(キム・ヨジョン)氏ら北朝鮮の後継体制にまで言及する報道が流れている。
昨年2月、金委員長がトランプ大統領と核問題を巡る交渉に臨むため、60時間以上も列車に乗り、ベトナムに向かった当時、韓半島には新たな時代が訪れそうだった。米朝交渉が進展し、金委員長がサムスン電子のベトナムのスマートフォン工場を視察する可能性も指摘された。北朝鮮がベトナム式の開放路線を選ぶきっかけになるという期待感も示された。
韓国企業も北朝鮮に工場を建てて大規模投資を進めることなど投資カードの検討に入った。しかし、ベトナムでの交渉決裂以降、米朝、南北関係には進展がない。むしろ先月浮上した北朝鮮指導者の健康異常説は連鎖的にリスク要因となっている。
米シンクタンク、ランド研究所が発行した「韓半島の4つの問題」と題する報告書によると、北朝鮮の体制崩壊時の中国の役割が明示されている。中国軍が北朝鮮領内に200キロメートルの緩衝地帯を設け、北朝鮮の軍人や民間人の脱出を阻止するとの見方だ。
韓半島には世界1、2位のメモリー半導体メーカーであるサムスン電子、SKハイニックスの本社、工場がある。次世代ディスプレーとされる有機発光ダイオード(OLED)で先頭をひた走るLGディスプレー、サムスンディスプレーも本社、工場を置いている。仮に北朝鮮で突発事態が生じれば、これら企業の生産に支障が生じるだけでなく、外国人の投資心理も冷え込みかねない。
韓国企業は昨年7月以降の日本政府による輸出規制、今年の新型コロナウイルスのよる外国人入国制限強化などを経験した。そのたびに、誰にも頼らず単独で問題を解決するために国内外を飛び回らなければならなかった。
現在進行系の「北朝鮮リスク」もどこにボールが弾んでいくのかが分からず、息を殺して見守るしかない状況だ。海外では連日事実かうそか不明の推測と報道が飛び交っているが、不安な経済活動を続ける企業は誰を信じ、将来に備えるべきなのか。