「ウサギ耳男」犯人捜し過熱 韓国・梨泰院雑踏事故 現場で5、6人が「押せ」と叫ぶ声 耳は黒?白?ネット捜査めぐり中傷被害も
韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で156人が死亡した事故が、「事件」に発展する可能性が浮上している。事故現場で当時、何者かが「押せ」と叫んでいたという証言が出ているのだ。韓国に詳しい専門家は、人物が特定されれば迅速に捜査が進み、最終的には厳刑が下る可能性があると指摘。インターネット上でも〝犯人〟捜しが過熱している。
耳は黒?白? 中傷被害も
「『押せ、押せ』という声が聞こえ、周りの人たちが押されてドミノみたいに倒れた」。韓国メディアによると、事故をめぐって、このような証言が相次いでいる。
ネットに動画を投稿するユーチューバーで、現場にいたという女性は交流サイト(SNS)で、後ろから「押せ、俺らが勝とう」という声がし、「突然、強い力が加わった」と振り返った。ウサギの耳の形をしたヘアバンドの男性ら5、6人が「押せ」と言って押し始めたとの証言もある。
人物を特定しようという〝ネット捜査〟が過熱するあまり、個人攻撃を受けた男性もいる。ウサギの耳形ヘアバンドをして現場周辺にいたという男性は1日、SNSで事故前には別の場所に移っていたと説明し、「魔女狩りはもうやめてほしい」と訴えた。
「押せ」と叫んだとされるウサギ耳の男をめぐっては、異なる情報もある。韓国紙、中央日報(日本語版)によると、ネットでの中傷被害を訴えた男性は黒のウサギの耳をしていたが、実際に押した男は白のウサギの耳をしていたという主張も登場しているという。
〝犯人〟捜しが過剰に進む韓国社会だが、「押せ」という発言を契機に惨劇が起きたのが事実だった場合、立件される可能性はあるのか。
韓国の事情に詳しい龍谷大学の李相哲教授は「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、野党が政権退陣運動につなげる流れが作られつつあることに神経をとがらせている。故意に群衆を押した人物などが特定されれば、捜査は迅速に進められていくだろう」と説明する。
事故による被害の大きさを考えると、厳しい刑が予想されるが、死刑については難しいとの見方がある。韓国に死刑制度はあるものの、金泳三(キム・ヨンサム)政権下の1997年12月に23人に執行されてからは、行われていないからだ。
李教授は「もし、犯人が特定されたとしても、意図しなかった未必の故意で、殺人未遂に問うのがやっとではないか。ただ、韓国の裁判所は、冷静に法的な判断を下すよりも国民の情緒に流されやすく、迎合する傾向にある。相当な騒ぎになっている以上、厳罰が下される可能性がある」と指摘した。