iPhone超えの高性能カメラが売りだったのに…
韓国サムスン電子の「100倍ズームスマホ」というフェイク
10:17 配信

2023年2月8日、韓国・ソウルで、サムスンGalaxy S23の広告の前を歩く歩行者たち。 - 写真=Penta Press/時事通信フォト
■サムスンのスマホに海外ユーザーが大激怒している
韓国・サムスン電子のスマートフォン「Galaxy(ギャラクシー)」に搭載されている高性能カメラをめぐり、海外のユーザーから「100倍ズーム機能は偽りである」という指摘が相次いている。サムスンが弁解をする事態に発展した。
ここ数年のGalaxyシリーズは「100倍スペースズーム」が最大の売りだった。この機能を使った月の画像をPRに利用し、月面のクレーターすら鮮明に映し出すことができるとうたう。
だが実際は、撮影した画像にAIがディテールを描き足す仕組みになっていた。海外ユーザーの指摘をきっかけに炎上し、欧米のテックメディアを中心に広く報じられている。
米大手テックメディアのヴァージは3月、「サムスンによる月の写真の捏造(ねつぞう)が発覚」と報じた。米有力テックメディアのエンガジェットは、AI技術の進展に理解を示しつつも、「サムスンの月の写真は偽物だ。サムスンのマーケティングは事実と異なる」と指摘する。
該当する機種は、ここ数年のうちに発売されたGalaxyシリーズのフラッグシップ(最上位)モデルだ。2020年発売のGalaxy S20 Ultraから、今年2月に発売されたばかりのGalaxy S23 Ultraまでが影響を受ける。折りたたみ式ハイエンド機種のGalaxy Z Foldシリーズでは全モデルが影響を受ける。
■美しすぎる月面は、AIによる加筆だった
だが、世界のユーザーが息をのんだ月の画像には、大きな「嘘」があった。
実際にはぼやけた画像しか撮影できないにもかかわらず、リアルな月面の凹凸感をAIが加筆していたことが発覚した。純粋な光学では10倍にとどまり、画像が劣化するデジタルズームを含めても30倍にしかならないところ、AIによる加筆で100倍相当の解像感を演出している。
■騒動のきっかけとなったネット掲示板の投稿
騒動のきっかけは今年3月11日、アメリカの大手ネット掲示板「レディット」に投稿された1つのメッセージだった。
「サムスンの『スペースズーム』写真はフェイクである」と題されたこの投稿は、大きな議論を巻き起こした。現在までに1万4500件以上のVoting(高評価票から低評価票の数を差し引いた賛同者数)を集めている。
投稿によると、このユーザーは実験のため、ネットから高解像度の月の画像をダウンロードしたという。これを170ピクセル四方にまで縮小した。スマホ画面の縦の長さがおおむね2000ピクセル前後なので、その10分の1以下という小さなサイズだ。
さらにソフトウェア処理でぼかしをかけたことで、ディテールは完全に失われた。拡大しても、ぼやけた円にまだらな模様が見える程度だ。このミニ画像をパソコンのモニターに表示し、室内を真っ暗にしてサムスン携帯でズーム撮影したところ、月面の凹凸感までリアルに再現された「月」の画像が撮影されたという。
公開されている比較画像では、撮影元の画像には存在しなかったクレーターの陰影などが、撮影後の画像にはっきりと出現していることがわかる。元画像の段階ですでに失われたはずのディテールが、Galaxyで撮影するとよみがえるという、なんとも不思議な現象だ。存在しない情報を、明らかにAIで描き足しているとみられる。
■インフルエンサーの独自検証で大炎上
ヴァージは、通常行われる鮮明化の範疇を超え、「単に新しい月、フェイクの月が現れたのだ」と指摘する。コントラストの強調などにとどまらず、ディテールを「創造してしまう」ため、「良くも悪くも、この時点で多くの人は、得られる画像が捏造だと感じることだろう」と記事は論じている。
レディットのユーザーはその後、さらなる検証を行った。月の画像の一部をグレーで四角く塗りつぶし、それをS23 Ultraで再撮影するテストだ。元画像では平坦なグレーとなっている四角の領域だが、S23 Ultraで撮影すると再び、不思議なことに月面のディテールが出現した。
この投稿を受け、テクノロジーに詳しいイギリスの著名YouTuberのアルン・マイニ氏は、独自に追加検証を行っている。
登録者1300万人の彼は、「サムスンは何年も、自社の携帯が最大100倍のスペースズーム能力を備えると広告している。実際にサムスンの携帯を手に取れば、信じられないほど月にズームし、5000ドル(約66万円)のプロ用カメラ機材で撮るよりもむしろ鮮明な写真を撮ることができる。とても感動的だ」と述べる。
そして氏は続ける。「しかし、ネットではっきりと証明されたのだ。フェイクだった、と」
氏は検証として、ぼかした月の画像を紙に印刷して円く切り抜き、これを真っ暗な空間に糸で吊(つ)るしてズーム撮影した。すると、氏のGalaxy S23 Ultraは、当該の紙片を月だと認識。得られた画像には、印刷された紙には存在しなかった月面のディテールが、はっきりと描き込まれていた。