(1)若者がおかれている経済的状況が良くない
韓国ではまだ儒教的な考えが根強く残っており、結婚してから出産するケースが多い。しかしながら、多くの若者は安定的な仕事を得ておらず、結婚という「贅沢」を選択できない立場に置かれている。韓国における 20~29歳の若者の失業率は 2020 年の 9.0%から 2022 年には6.4%に改善した。しかし、これは新型コロナウイルスのパンデミックによる落ち込みからの反動増の側面が強く、政府の財政支出が雇用を押し上げていること、人口構造的に若者人口が減少していること等が失業率改善の主な理由である。
しかしながら、2022 年の若者の失業率は全体失業率2.9%より 2.2倍以上も高く、同時点の日本の 20~24 歳と 25~29 歳の失業率である 4.8%と 3.8%を大きく上回っている。さらに、15~29歳の若者の「拡張失業率」は2022年時点で19.0%(15~29歳の失業率は6.4%)に達している(図表2)。「拡張失業率」とは、国が発表する失業者に、潜在失業者(就労を希望しつつも、様々な事情から求職活動をしていないので失業者としてカウントされない失業者)や不完全就業者(週18時間未満働いている者)を加えて失業率を再計算したものである。

図表2 失業率、若者(15~29歳)の失業率・拡張失業率の推移
韓国で若者の失業率が高い理由としては、大学進学者が多く卒業後の就職における需要と供給のミスマッチが発生していることに加え、サムスン電子、現代自動車などの大企業(一次労働市場)と中小企業(二次労働市場)の間の賃金格差が大きい等、労働市場の二極化が進んでいること等が挙げられる1。そこで、多くの若者は就職浪人をしてまで大企業に入ろうとするが、採用されるのは一部の人に過ぎない。
一次労働市場に入れなかった若者の多くは「公務員」になるために公務員試験の準備をしている(志願者の平均年齢は29.4歳で、全志願者に占める20代の割合は60.9%)。しかしながら、公務員になることは簡単ではない。志願倍率は年々下がっているものの、2022年には5,672人を採用する9級国家公務員採用試験に165,524人が志願し、志願倍率は34.3倍2に達した。
また、高い不動産価格も未婚化・晩婚化の一因になっている。韓国では結婚前に男性側が家を用意する慣習があるものの、近年の不動産価格の高騰は男性にとって結婚のハードルを高め、婚姻件数の減少にもつながっている。最近は、韓国銀行(中央銀行)の急速な利上げに伴う金利の上昇等で全国のマンション価格は下落しているものの、住宅ローンの金利は上がっており、若者にとってマイホームの夢は実現が難しいままである。
1 韓国における労働市場は、一次労働市場と二次労働市場に区分することができる。一次労働市場は、相対的に高い賃金、良い労働環境、高い雇用の安定性、労働組合による保護、制度化された労使関係、長期的な雇用契約、内部労働市場による労働力の補充などが特徴づけられることに比べて、第二次労働市場は、相対的に低い賃金、劣悪な労働環境、不安定な雇用、制度化されていない労使関係、外部労働市場による労働力の補充などが特徴づけられる。
2 筆記試験を受けた人に対する倍率は29.2倍

図1:韓国における失業率と雇用問題の関係(2021年)
