ウクライナ侵略で潤う米欧軍需産業、ロシアの脅威で「戦後」も好況か
2024.03.07 19:50ロンドン(CNN) 3年目に入ったロシアによるウクライナ侵略の「特需」を受けるような形で西側諸国の国防関連企業の業績が好調となっている。
欧州などの地政学的な脅威も拡散する様相を示しており、軍需産業の活況はウクライナ戦争後も続く見通しとなっている。
ロシアがウクライナ内への部隊の送り込みを始めた2022年2月24日の前日となる23日以降、米欧の上位の軍事企業5社の株価は全て上昇した。
欧州のBAEシステムズ、タレスにラインメタル、米国のロッキード・マーチンとノースロップ・グラマンの5社で、いずれもウクライナへの兵器を送るか、その旨の契約に合意していた。
金融関連企業「リフィニティブ」のデータによると、ドイツのラインメタルの株価は侵攻以降、315%増を記録。BAEシステムズは105%増を得ていた。
西側諸国の政府はウクライナへ弾薬、戦車や戦闘機を引き渡す考えで、それだけ縮小する在庫分の補給にも動いている。国防費をさらに数十億米ドル単位で積み上げる意向も表明している。
北大西洋条約機構(NATO)の一員でもあるカナダと欧州諸国の昨年の国防費は前年比で11%膨らんだ。
NATOのストルテンベルグ事務総長は「かつてない増加幅」と誇示。スウェーデン加入が決まる前の31加盟国のうち18カ国が今年には国内総生産(GDP)比で少なくとも2%を達成する見込みで、14年に設けられたこの目標値を実現する加盟国数では最多になると予想されている。
同年にはロシアがウクライナ南部クリミア半島を強制併合する危機を迎えてもいた。
ロンドンに拠点があるシンクタンク「RUSI」の幹部はCNNの取材に、増大する国防費は民間部門の受注拡大を意味すると指摘。
少なくとも今後10年余にわたってロシアが脅威を及ばさないとみることは難しい情勢にあるとし、特にこれは欧州にあてはまるとも述べた。
スウェーデンの軍事関連企業「サーブ」のヨハンソン最高経営責任者(CEO)は「過去2年は劇的な展開を見せた時期だった」と総括。
生産能力を強化するために数十億ドルを投じ、従業員数は22年が始まった後、3600人増やしたとした。
CNNの取材に今年はさらに2000人の新規雇用を明かした。同社の収益は昨年、30%も伸びていたという。
サーブの最大の顧客でもあるスウェーデン政府は最近、ウクライナに対する新たな軍事支援を発表。砲弾や対戦車兵器などが含まれた。
ウクライナの隣国であるポーランドもウクライナ侵略が始まって以降、大手の得意先に浮上してきた。
BAEシステムズの業績も好況で、先には23年の収益が前年比で8%増の約26億ポンドになったと報告していた。
米国のウクライナ向けの新たな軍事支援は野党・共和党の抵抗もあって連邦議会での調整が手詰まり状態にあり、実現していない。
今年の米大統領選の共和党候補の争いで独走するトランプ前大統領は新規の軍事支援を盛り込んだ法案は拒む姿勢を打ち出している。
欧州諸国は米国でのこの足踏みを受けて武器弾薬提供の不足を補う措置を模索している。
独シンクタンク「キール世界経済研究所」は、欧州連合(EU)は米国の援助分を十分に肩代わりするためウクライナへの軍事支援を現行の規模の2倍にすることが今年求められるとも主張している。
軍事アナリストらは、西側諸国に国防費増強を迫る圧力はウクライナ戦争後にも低減することはないだろうと分析。
この兆候はウクライナ侵略が始まる前から高まっていたとも説いている。
トランプ氏は大統領時代にGDP比で2%分の国防費支出を果たしていない加盟国を叱責(しっせき)してもいた。
英国際戦略研究所(IISS)は先月、世界各国の国防費は昨年、9%増となる過去最高の2兆2000億ドルに上ったと発表。
「不安定な時代」への対応が背景要因ともみていた。
特に中国が台湾に突きつける脅威やパレスチナ自治区ガザ地区での軍事衝突、イエメンの反政府武装組織「フーシ」が紅海で繰り返す船舶へのミサイル攻撃などに注意を向けていた。