トランプの関税再引き上げ宣言に狼狽する韓国、米中間でうまく立ち回ったかに見えた李在明の「戦略的曖昧性」が仇に
2026.2.3(火
2026年1月26日(現地時間)、トランプ大統領による対韓国関税の再引き上げ警告は、李在明(イ・ジェミョン)韓国政権の対米認識が現実とどれほど乖離しているかを端的に示す出来事だ。さらに、米国と中国の間で「戦略的曖昧性」を強調してきた李在明政権の実用外交が、今後深刻なブーメランを迎えかねないことを暗示する事件でもある。
トランプの関税攻勢、何とか凌いだと思われたが… 昨年7月30日、韓国の李在明大統領は米ワシントンでドナルド・トランプ大統領と初の首脳会談を行った直後、公式合意文や共同記者会見の代わりに、自身のフェイスブックを通じて「アメリカとの関税交渉が妥結した」と宣言した。なお、「競争国より低いか、同じ水準を確保した」という、日本を意識した書き込みを掲載し、成果を誇示した。 同じ時刻、ソウルでも金容範大統領府政策室長が緊急ブリーフィングを開き、「自動車関税などは15%に引き下げられた」と発表した。「両首脳の合意文はなぜ出なかったか」を質問する記者に、大統領府報道官は「合意文が必要ないほどうまくいった会談だった」という“希代の詭弁”を弄した。 ところがその後、韓国が約束した3500億ドルの対米投資金をめぐり、アメリカとの意見の隔たりが浮き彫りになり、米韓関税交渉は破局に向かって突き進んだ。 7月の関税妥結の際、韓国大統領府は、「対米投資3500億ドルの大部分が保証と貸し出しなどの形式で、現金投資は5%に過ぎない」と説明した。一方、米政府は、韓国の投資金がアメリカ国内の造船所の現代化、半導体工場の増設、バッテリー施設の拡充などに投入される「直接投資金」であることを明確にし、トランプ大統領も「前払い(Upfront)」だと主張するなど、韓国政府を強く圧迫した。 すると、李在明大統領は米『TIME』誌とのインタビューで、「米国の要求をすべて聞き入れれば(私は)弾劾されるだろう」と述べ、強力な背水の陣を敷いたのだった。韓国政府も外国為替市場の安定を理由に「無制限の米韓通貨スワップ」を現金投資の条件として掲げて執拗に食い下がった。
しかし、11月に発表された両国首脳の「共同ファクトシート」では、現金の割合が当初の主張より10倍以上も高い57%(2000億ドル)と確定し、米韓通貨スワップは締結されなかった。 それでもこの時、韓国政府は「4重の安全装置」を作ったとして、韓国国民を安心させた。具体的には、①2000億ドルを毎年200億ドルずつ10年間分割投資するという「年間投資上限制」、②韓国の外国為替市場が不安定な場合、アメリカ側に投資金額と時点の調整を要請できるという「外国為替市場の安全性連携」条項、③すべての投資には必ず元金回収の可能性と収益性が立証されなければならないという「商業的合理性」条項、④韓国の産業相が委員長を務める「米韓投資協議会の構成」条項などだ。 こうした条項を根拠に、韓国政府は「日本より有利な条件で合意した」と主張し、韓国の主張に同調する外国メディアもあった。
米韓の関税交渉、再び破局の道へ
だが、李在明大統領がみずから共同ファクトシートの発表者として登場しては「韓米同盟のルネサンス時代を大きく開いた」と自画自賛した関税交渉は、今年1月26日のトランプ大統領の「関税再引き上げ発言」によって再び破局に向かっている。トランプ大統領とアメリカ政府は、韓国がファクトシートを“履行していない”という次元を離れて、ファクトシートに“違反している”と見ている。 具体的には対米投資履行のための法的根拠づくりが遅れていることや、アメリカのテック企業が差別されたりしないことを保証する「デジタル非関税障壁の撤廃または緩和」という合意事項を韓国が守っていないことを問題視している。 最近、アメリカ政府は韓国政府と国会の立法状況について異例にも数回にわたって公式な懸念を表明した。代表的なのが「オンラインプラットフォーム仲介取引公正化法(以下、プラットフォーム法)」と「情報通信網法改正案」だ。
「クーパン」は狙い撃ちされたのか
プラットフォーム法とは、クーパンなどの一定規模以上のオンラインプラットフォーム事業者を「支配的事業者」としてあらかじめ指定し、彼らの反則行為を常時監視し迅速に摘発するという趣旨の法案だ。 小規模事業者の保護のためにプラットフォーム出店業者に対する不公正待遇などを強力に規制するものだが、そのためにプラットフォーム側にアルゴリズム公開を義務化している。反則行為が摘発された企業に対しては売上の数%に達する天文学的課徴金を賦課することができ、営業停止命令も下すことができる。 米国は、この法案が自国のビッグテック企業であるグーグルやアップル、メタ、クーパンなどを標的にしていると強く反発している。米国商工会議所と米政府は同法を「米国企業に対する標的規制」「革新に対する懲罰」と規定し、「両国は相手国のデジタルサービスおよびプラットフォーム事業者に対して自国企業と同等かそれに準ずる非差別的待遇を保障する」という共同ファクトシートの合意に反すると主張しているのである。 しかも、韓国市場におけるシェアがまだ低いアリエクスプレスやTemuなどの中国ビッグテック企業が、規制対象から外れることで反射利益を得る可能性があるとし、李在明政権の親中性向にまで疑いの目を向けている。個人情報流出事件を発端とするEコマース企業「クーパン」への李在明政権の集中砲火のような異常圧力に対して米政府・政界が3回も警告を発した背景には、米国側のこのような状況認識があるのだ。
テック企業に対する規制で大幅譲歩を飲まざるを得ない展開に
情報通信網法改正案も米国政府が強く反対を示している法案だ。 海外のビッグテック企業に対して韓国内の代理人指定を強化し、韓国内のサーバー(データセンター)設置を義務付け、虚偽やねつ造された情報の作成当事者はもちろん流通プラットフォームに対して懲罰的損害賠償制を導入するという内容が核心だ。 この法案に対して、米国は「デジタル主権の侵害」と「表現の自由の侵害」という理由を挙げて強く反発している。 しかも、中国企業のアリエクスプレスやTemu、TikTokの場合、中国共産党の「データ保安法」統制下にあるため、事実上この法案適用から除外されるとし、ここでも「中国の反射利益」を疑っている。米下院予算委員会の報告書(2026年会計年度)などは、「同法が結果的に中国企業の市場支配力を高める結果をもたらす」と警告しているほどだ。 韓国が「安全装置」の側面だけを強調した米韓間の共同ファクトシートには、「韓国の投資履行に支障が生じた場合」や「相互互恵的ビジネス環境が毀損される場合」に対して、「関税恩恵を再検討することができる」というペナルティ条項も含まれている。 結局、「4重の安全装置」が機能しなくなったファクトシートを持って米国との関税再交渉に突入しなければならなくなった韓国政府は、対米投資履行の速度を上げるという約束とともに、米国側が問題視しているプラットフォーム法などについての再検討または廃止を約束しなければならないものと見られる。