「強い日本」望むアジア、ただし中国・韓国だけは例外

高市早苗首相の総選挙圧勝に対する反応は、アジア全域でほぼ一致している。「強い日本」は地域にとって良いという見方だ。ただし、中国と韓国だけは例外だ。
日本は1941-45年に東南アジアの多くの地域を占領。旧日本軍による激しい残虐行為もあった。中国と韓国はこの歴史と、自国のトラウマ的体験を常に引き合いに出し、日本の軍事的役割の復活に警鐘を鳴らし続けている。
だが、他のアジアは今という時代への対応を進めている。そうした再調整を促す力は2つある。トランプ米大統領が外交や協力よりも国益と影響力を重視しているという認識と、中国が威圧を国家運営の常套手段として用いる姿勢を強めていることだ。
元インド外務次官のニルパマ・メノン・ラオ氏は、ディール(取引)重視の米外交政策は「インド太平洋で継続性と戦略的な安定を提供する同盟国として、日本の重要性を必然的に高める」と論じている。
インドから台湾に至るまで、各国・地域の政府はその不安定さを痛感している。インド政府は先週、米国と通商合意をまとめたが、明らかにホワイトハウス側に有利な条件の下で厳しい交渉を経た後だった。詳細は最終調整中だが、どちらが勝者だったのかに疑問の余地はほとんどない。
トランプ氏と中国の習近平国家主席との会談が4月に予定されているが、台湾政府は米中外交のてことして自らの将来が論じられるのを不安視している。そして、インド太平洋地域の多くの国が導き出している教訓は、トランプ政権の支援は条件付きで、気まぐれにも見える変化に左右されるということだ。
そうした警戒感をより切迫したものにしているのが、中国だ。威圧的な貿易措置や南シナ海での船舶への嫌がらせ、観光や重要鉱物の制限といった経済手段を選択的に使うことで、中国はこれまで、気に入らないと見なす行動を直ちに罰することができると示してきた。
高市氏が昨年、台湾海峡の危機が日本の安全保障に直接関わり得ると示唆した際、中国が示した激しい反発は、そうした現実を浮き彫りにした。
中国との安定した関係を望むと繰り返し述べる一方で、台湾有事の発言を高市氏が撤回しない事実は示唆的だ。中国の圧力はむしろ裏目に出て、日本国内では経済の対中依存を減らす方針が支持を集め、レアアース(希土類)やエネルギー分野での強靱性の強化が進んでいる。
自信を深める日本政府は、中国が望む地域秩序形成を難しくする。多くのアジアの中堅国にとって、それは日本を魅力的なカウンターウエートにしている。
こうした地域情勢は、日本自らの安全保障論争も変えつつある。防衛費は過去最大に達し、かつてタブー視されていた防衛力強化の議論が主流になり始めた。
高市氏は今、機会とリスクの双方に直面しながら、憲法改正を見据えている。第2次世界大戦後に米国主導で立案され一度も改正されていない平和憲法の見直しを長年にわたり主張してきたが、対応には細心の注意が求められる。
今のところ、追い風は高市氏に吹いている。今回の総選挙圧勝は米国の不安定さと中国からの圧力が強まるインド太平洋地域で、より大きな役割を果たすための貴重な政治的安定を日本にもたらした。
アジアの多くにとって、そうしたパワーバランスは歓迎されるだけでなく、ますます不可欠になっている。中国にとっては、まさにそれが厄介だ。