「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ──
大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
2/19(木) 13:18配信
初任給は日本を41%上回るが新卒採用はほぼ皆無。
海を渡り異国の大学を目指す若者たちの実態

「SKY」の一つ、延世大学のキャンパスを歩く学生たち(撮影=筆者)
3月に入ると日本では新年度に向けた就職活動が本格化する季節となる。企業説明会やインターンシップの募集が各地で始まり、多くの学生が将来のキャリアに向けて動き出そうとしている。その一方で、隣国の韓国では、全く異なる雇用環境のもとで、若者たちが厳しい現実に直面している。【佐々木和義】
韓国経営者総協会が2月1日に発表した「韓国・日本・台湾の初任給国際比較と示唆点」によると、韓国で大企業に入社した大卒1年目の年俸は日本を41%、台湾を37%上回っていた。協会関係者は「企業が人材獲得競争を繰り広げ年俸を引き上げ続けたことから人件費負担が大きくなった」と分析する。
とはいえ高給は一部で、賃金格差や就職難などの厳しい現実から、裕福な家庭の子女が日本に向かう流れが起きている。
2024年の大卒1年目の平均年俸は日本の3万7047ドルに対し、韓国は4万6111ドルで、大企業に絞ると日本(従業員1000人以上)は3万9039ドル、韓国(従業員500人以上)は5万5161ドルとなっている。
大企業と平均の差は日本は2000ドル未満だが、韓国は1万ドル近い格差があり、20歳から34歳の若年労働者の58.6%が初任給200万ウォンを下回ったという調査もある。
格差は企業規模に加えて非正規雇用が多いことを示している。
<大企業で新卒者を公開募集するのはサムスンだけ!?> 韓国では企業が新卒者を採用して育成するシステムは皆無に近い。新卒者を公開募集している大企業はサムスンくらいで、大半が経験豊富な即戦力の中途採用だ。 定年を前に退職して起業する会社員が少なくなかったが、景気後退を受け、安定した再就職を求める中高年が労働市場に増えてきた。
業と同時に就職した「現役」と卒業1年以内に就職した「一浪」は若年就業者683万2000人の67.8%で、3人に1人に相当する220万人余りが1年以上、就活を続けている。2年以上就活する「三浪」も133万8000人(19.6%)に達し、苦労して得た職も18.9%が週36時間未満のパートタイム、28.3%が1年未満の短期契約だ。
韓国では労働者保護の観点から試用期間は最長3カ月、契約社員は2年以内に定められ、期限を超えて雇用すると正社員採用が義務付けられているが、これを逆手に取る企業が後を絶たない。繁忙期などに3カ月以内のインターンを採用し、2年ごとに契約社員を入れ替えるのだ。正社員になれないインターンは3カ月、契約社員は2年ごとの就活生活を余儀なくされる。
若年者の雇用環境が悪化するなか、日本留学にチャレンジする裕福な家庭の子女が増えているという。希望する職に就けない若者の日本就職が増えているが、裕福な家庭の子女ははじめから韓国就職を考えない。 日本は大卒就職率が100%近いうえ、団塊ジュニアの定年が迫るなか人材不足に悩む企業が少なくない。就労ビザを取得して日本で働く韓国人は2017年の2万人から2023年には7万人へと増加した。
<スペックと脱韓国>
子女が現地で就職して市民権を手にすれば、親が引退後に「ヘル・コリア」を脱出する足がかりになる期待もある。韓国に戻っても戻らなくてもメリットがあるというわけだ。 ところが、スペックは韓国企業の新卒採用が前提で、大企業が新卒を採用しなくなった今、海外大卒のスペックは役に立たない。
海外就職、とりわけ日本就職を目指すなら韓国の大学より日本の大学が有利である。 <日本就職は、韓国企業への転職にも有利?> 日本は出身大学が人生を左右するケースは稀で、多くの大学が留学生に広い門戸を開けている。そして日本留学にチャレンジする学生はSKYを目指すストレスから解放される。
日本就職は親の移住には繋がらないが、韓国企業に転職する際、優位に働く期待もある。韓国の対日貿易は中国、米国、ベトナムに次ぐ4位とはいえ、取引品目が多岐にわたることから多くの分野で日本語話者は安定的なニーズがあり、なかでも日本企業経験者は高条件も期待できる。 日本経験を武器にした「凱旋」を期待して子を送り出す親もいるが、ヘル・コリアを脱出後、日本に定住する若者が少なくない。
筆者が知るある韓国人は日本の大学に留学し、日本の大手企業に就職。実力が認められて韓国法人の責任者として母国に赴任したが、環境に馴染めず結局日本に「帰国」した。
<止まらない海外流出> 世界最低水準の合計特殊出生率0.72という数字が示すように、韓国は深刻な少子化に直面している。政府は多額の予算を少子化対策に投じているが、若年層が希望する安定した雇用の受け皿がなければ、優秀な人材の海外流出は止まらない。 日本での新年度が始まるこの時期、韓国の若者たちは自国での未来に見切りをつけ、海を渡る決断をし続けている。
就職環境の抜本的な改革なくして、この「脱韓国」の流れが反転することはないだろう。
朝鮮在住の日本人 4万4000人
日本在住の朝鮮人 53万人
