「韓国の民画」 ソウルの博物館・尹館長に聞く
「民画が体系化され、独立した研究分野になることが私の夢」と語る尹烈秀・嘉会民画博物館館長=西宮市中浜町、西宮市大谷記念美術館
暮らしの美や家族の幸福への願いを主題とした韓国の「民画(みんが)」。百数十年前、旅の絵師が描き、庶民に親しまれた芸術が近年、注目を集めている。ソウル市にある嘉会(カフェ)民画博物館の尹烈秀(ユンヨルス)館長(62)は「どの絵にも民衆の心が映し出されている」と魅力を語る。西宮市大谷記念美術館で開催中の「韓国の民画と絵本原画展」(同館、神戸新聞社主催)では、同博物館の収集した36点を日本で初めて紹介している。(神谷千晶)
民画とは、李(り)朝末期の19~20世紀前半、朝鮮半島の中産階級や庶民の家庭で、祭事や招福、子どもの教育のために描かれた絵画の総称。民間信仰に深く根差し、例えば本展の出展作にも多い牡丹(ぼたん)は、華麗に咲くことから富貴の象徴とみなされ、結婚式場を飾る屏風(びょうぶ)などによく登場した。
また虎は厄よけの象徴として好まれた。ユーモラスな雰囲気のものが多く、当時の人々の親近感が伝わる。
指で描いた「葡萄(ぶどう)図」や、道徳的な意味を持つ漢字を図案化した「文字図」には卓越した技法も見られるが、民画の多くは素朴で味わい深い筆致が特徴だ。
「宮廷画家による鑑賞目的の芸術作品とは違い、民画は無名の絵師が注文に応じて描いた実用品。だから署名もなく、大部分は誰がいつ手がけたのか分からなかった」と尹館長。だが「絵には必ず作者がいるし、技法の継承もある」と考え、2002年の同博物館設立後、まずは地域の分類を試みた。
韓国北東部・江原道にいた絵師の子孫を訪ね、家系図を調べるなどした結果、その地域の絵師の系譜が判明。また「文字図」のモチーフにも地域的特性があり、江原道には山水や花鳥の図柄が多いことが浮かび上がったという。
戦前、日本の民芸運動の創始者、柳宗悦は民画を高く評価。だが人々に広く知られるようになったのは2000年ごろのことという。経済的発展を遂げて自国文化への関心が高まったことなどが背景にある。
現在、韓国では民画を再現して楽しむ人が増えているという。「もともと庶民の生活の一部。また暮らしに溶け込む日が来るだろう」と尹館長は話す。
展覧会では、現代韓国の視覚芸術文化として絵本の原画80点も展示。5月23日まで。水曜休館(5月5日は開館、同6日休館)。同美術館TEL0798・33・0164
(2010/04/13 11:49)