【今、何が問題なのか】手に負えなくて…機内で捨て子、ロシアに返された男の子
2010.4.19 14:23
米テネシー州の33歳の未婚女性が極東ロシアから養子に取った7歳の男の子を、手に負えないといってワシントン発モスクワ行きの航空機に一人で乗せ、養母の責任を放棄して、米露間の大問題になった。ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(44)は米テレビに「あるまじき行為だ」と怒りの声を上げた。きょうのテーマは「ロシアに返された男の子」とした。
歌手マドンナ(51)や女優アンジェリーナ・ジョリー(34)の養子取りへの並々ならぬ熱意を見れば分かる通り、米国人の大人と外国人の子供との養子縁組はけっして珍しくない。ロシアからは昨年、1586人が養子として米国の家庭に迎えられた。返された男の子もその一人だった。
UA機内で捨て子
AP通信などによると、この男の子は8日、ワシントン発モスクワ行きのユナイテッド航空機に一人で乗せられた。米国人の養母が書いたロシア教育(科学)省あての手紙を持たされており、そこにはこうあった。
「この子は落ち着きがなく乱暴で精神的な問題がある。ロシアの施設の職員はそのことを教えてくれなかった。この子のために最善を尽くしたが、家族、友人、そして自分自身の安全を考え、残念ながら手放すことにした」
航空機内での“捨て子”だった。養母は、あるロシア人に200ドル(約1万9000円)を支払い、男の子をモスクワの空港でピックアップし、ロシア教育科学省前に置いてくるよう依頼していたという。
“捨て子事件”はロシアのメディアでも大きく取り上げられた。メドベージェフ大統領は米ABCテレビのインタビューに、「道徳的な問題だけではない。これは違法行為だ」と養母を非難した。
ロシア政府は米国の家庭との間での養子縁組を凍結する方針を決めた。
極東から米南部へ
養母宅は南部テネシー州のシェルビービルにある。大国の首脳から「違法行為」があったと指摘され、取り締まる立場にある地元のランドル・ボイス保安官は戸惑いを隠せなかった。つめかけた大勢の報道陣を前に「これは極めて特異なケースだ。子供はもうここにはいないし…」と語った。
州当局によれば、養母と7歳の男の子とは、養子縁組の手続きが完了していなかった可能性がある。その場合、保護責任者遺棄のような罪に問うのは難しいという。
養母の母親が語ったところでは、養母は看護婦で、養子を取ったのは子供がほしい一心からだった。極東ロシアのパルチザンスクの施設にいた男の子を紹介され、昨年9月にシェルビービルに引き取った。
男の子は最初、うれしそうに見えた。だが、すぐに乱暴が始まった。おもちゃやゲームを取り上げると、たたく、叫ぶ、つばをはきかけるなど、あらゆるしぐさで反抗する。自宅が燃える様子を絵に描き、「こんなふうにしてやる」と脅すようにもなったという。
今年2月、養母はこの男の子の養育をあきらめた。
「温かい家庭」への過信
クリスチャン・サイエンス・モニターによると、昨年、米国の家庭に養子として迎えられた子供は、中国人が最も多く3001人、これに次ぐのがエチオピア人(2227人)で、ロシア人は3番目に多かった。ロシア人の養子は1991年以降、計約6万人に上る。
今回、7歳の男の子はモスクワ行きの航空機内に捨てられたため、大騒ぎになった。だが、養子問題に詳しい人たちは米公共ラジオ(NPR)に、国内の子供、海外の子供を問わず、養子に取られた家庭になじめないケースが全体の15%程度あると指摘している。
なじめない子供たちは米国内の施設に入れられたり、出身国に返されたりするが、放置されたり、虐待されたりすることもある。温かい家庭が子供の心の傷を癒やす。安易にそう考えるのは間違っているという。
(内畠嗣雅(うちはた・つぐまさ))/SANKEI EXPRESS
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100419/erp1004191428009-n1.htm