2010.06.01
鳩山由紀夫首相(63)の退陣論が日に日に強まっている。普天間移設問題で迷走を重ね、内閣支持率は「退陣水域」の10%台まで下落。7月の参院選での民主党惨敗が濃厚となってきたためだ。参院民主党の悲鳴を聞き、小沢一郎幹事長(68)は1日夕にも首相との再会談に臨む。ともに「政治とカネ」の問題を抱え、「首相と一蓮托生」といわれた小沢氏だが、新たな傀儡総理を担ぐことで延命を図るつもりなのか。
「しっかり協議して、協力してこの国難に立ち向かっていこう(という話をしたい)。国民の暮らしのために、何がベストか考えながら、新政権にふさわしい形でこれからも行動していきたい」
首相は1日朝、官邸前で記者団に政権続投の意欲を語った。その言葉、表情からは、自ら退陣する様子は一切なかった。ただ、民主党内、特に参院の改選議員からは「鳩山降ろし」のマグマが爆発し始めている。
前日(5月31日)の民主党役員会では、改選組の小川敏夫広報委員長(62)が「党の統治能力が問われている。首相は辞めざるを得ない」と、真正面から退陣論をブチ上げた。
小沢氏側近である高嶋良充参院幹事長(69)も記者団に、「非常に困難な事態に陥っている。党と政府の最高責任者である鳩山首相の決断にかかっている」と暗に退陣を促した。
ただ、小沢氏自身は同日の党正副幹事長会議で、「あらゆる状況が厳しい。社民党が政権離脱し、非常に厳しい状況だ」と、参院選の危機感を表現するだけにとどめた。
首相の任期は法律上定められておらず、本人が「辞める」というまでは簡単に辞めさせられない。当然、小沢氏はこれを十分理解しているからだ。
ただ、水面下で囁かれてきた首相退陣論が一気に吹き出してきた背景として、「事実上、小沢氏が『鳩山降ろし』のGOサインを出したのだろう。高嶋氏があそこまで言ったのが証拠だ。党内から首相批判をどんどん打ち上げさせて、外堀から埋める作戦ではないか」(党内ベテラン)という見方が強い。
首相と小沢氏は1日夕にも再会談するが、厳しいやり取りが予想される。
これまで小沢氏は、自身は裏方に回り、扱いやすい「御輿(みこし)」を首相に担いで、絶大な権力を握ることを得意としてきた。
自民党時代は、海部俊樹首相の下で幹事長を務め、自民党離党後は非自民連立政権を立ち上げ、細川護煕首相、羽田孜首相を担いで新生党代表幹事として力を誇示。昨年の総選挙前に民主党代表を退き、日本有数の政治家一族出身の鳩山氏を代表に担いで、16年ぶりの政権交代を成し遂げた。
「ところが、首相の稚拙な政権運営のせいで、70%以上あった内閣支持率は10%台に下落した。小沢氏としては『このままでは参院選敗北は濃厚で、やっと取り戻した政治権力を失いかねない』『選挙前に首相交代するしかない』と考え始めたのではないか」(同)
当然、小沢氏や周辺とすれば、次期首相もコントロールの利く「傀儡総理」がベスト。現時点で、小沢氏側が担ぐ可能性のある「ポスト鳩山」候補は、菅直人副総理兼財務相(63)や、原口一博総務相(50)といわれる。
永田町では、与野党の議席が伯仲する参院で首相の問責決議案が提出された際、民主党から数人が「棄権」に回ることで可決させるなど、首相を追い込むプランもささやかれている。
これに対し、党内の「反小沢」グループの抵抗は必至だ。
内閣の支持率低下は、首相の責任だけでなく、小沢氏の「政治とカネ」の問題も大きい。報道各社の世論調査でも、首相の退陣を求める声は50%前後だが、小沢氏の幹事長辞任を求める声は70%を大きく超えている。ある中堅議員も「国民の間では、『鳩山嫌い』より『小沢嫌い』の方がはるかに多い。小沢氏の傀儡総理が出てきても、国民の支持は大して上がらない」と指摘する。
「反小沢」グループの長老格である渡部恒三元衆院副議長(78)も31日、国会内で記者団に、「今のままではいけない。しかし、鳩山君だけに責任をかぶせて、もっと悪いヤツ(=小沢氏)が生き残るんだったら、もっと悪くなる。難しいところだ」と語った。
こうした状況を掴んでいるのか、首相の強気は崩れていない。首相周辺も「動揺するとつけ込まれる。今週は慎重に行かないといけない」と述べ、頭を低くして何とか苦境を乗り切る構えだ。
ただ、国民感情を無視したそれぞれの政界生き残り策が果たして成功するのだろうか。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100601/plt1006011640008-n2.htm