わき毛処理で考える儒教の教え
<連載・水野俊平の韓流おもしろ雑学>
この夏、韓国で「わき毛処理」のCMが話題になりました。去っていく彼女を引き留めようとする男の子が、偶然、彼女のわき毛を見てしまい、恋心が冷めてしまうという内容でした。ネット上ではこのCMに出てくる女の子に「わき毛女」という愛称までつけられています。このCMを見てはっと思い当たることがありました。
韓国の女性はいつからわき毛をそり始めたのか? 私が韓国に初めて行った80年代の半ばころは、まだ韓国の女性たちはわき毛の処理をしていなかった人が多かったのです。いちいちわきの下を確かめさせてもらったわけでも、正確な統計調査で調べたわけでもないから、あくまで推測ですが。
もちろん、日本では80年代には処理している人のほうが大多数派でした。そのころの日本ではAV女優で処理していないわき毛を売りにしていた人もいたくらいです。
だから、韓国に行って、りんとした美女が黒々と生やしているのを見て仰天しました。また、見てはいけないものを見てしまったような、幾分得した? 気分にもなりました。
それが80年代の後半から処理する人が多くなり、90年代の初めころからは処理している人のほうが多くなったのです。今は処理していない人のほうが珍しいんじゃないかな。あくまで推測ですが。でも、これはやっぱり時代の流れです。
今から100年以上前、朝鮮王朝の末期に「断髪令」というおふれが出たことがありました。当時の朝鮮の男性は頭にまげを結っていたのですが、これを切って洋風の髪形にしろというおふれでした。これに民衆が激しく反発して反乱まで起こり、結局、断髪令は撤回されてしまうのです。どうして民衆が断髪令に反対したのかというと、これは儒教の教えに反するものだからです。
儒教の経典の1つである「孝経」には「身体髪膚/受之父母/不敢毀傷/孝之始也」(体と髪と皮膚は両親からもらったものだから、あえて傷つけないのが親孝行の始まりだ)という一節があります。
親からいただいた毛なんだから粗末にしてはならないということです。韓国の女性がわき毛をそらなかった理由は儒教の影響もあってのことだと思います(多分)。わき毛が見えるような服を着なかったからか、単に関心がなかったからかも知れませんが。それが100年後にはすっかり意識も服装も変わり、わき毛をそったり抜いたりするようになり、今では「除毛クリニック」という脱毛業界の活性化につながり、わき毛処理のCMまで放送されるようになったというわけです。
◆水野俊平(みずの・しゅんぺい) 1968年(昭和43)1月5日生まれ、室蘭出身。北海商科大教授。登別南高(現登別青嶺高)-天理大朝鮮語学科。90年に渡韓し、全南大大学院国語国文学科博士課程修了後、同大の日本語講師に。05年帰国、現在は札幌在住。CS放送フジテレビ「韓タメ!DX」に出演中。
[2007年10月5日10時45分 紙面から]