【朝鮮学校無償化】“無視”された拉致
被害者家族の訴え 総連と一体化ゆ
えの限界 (1/2ページ)
2010.11.5 21:10
高等学校等就学支援金の支給に関して記者会見する高木義明文科相(中央)=5日午後、東京・霞ケ関の文科省(大山実撮影)朝鮮学校への高校授業料無償化の適用基準は、教育内容を問うものではなく、拉致被害者家族らの再三の訴えは無視されたに等しい。半年を超える政府・与党の議論では、北朝鮮の影響のもと、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と一体化した運営が行われ、生徒らが思想教育の“犠牲”になっているという根本的な問題が顧みられることはなかった。(桜井紀雄)
当日の面談
「『生徒の学ぶ権利』というが、大韓航空機爆破事件もでっち上げと教え、正しい歴史を学ぶ権利を奪っているのは朝鮮学校だ」。4日、衆院拉致問題特別委員会で参考人に招かれた増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟で拉致被害者の家族会事務局長の照明さん(55)はこう懸念を表明した。しかし、高木義明文科相には、家族の声は届いていなかった。
基準発表の5日朝には、柳田稔拉致問題担当相と面談。適用について懸念を伝えられたが、それも閣議後のわずかな時間だけ。具体的にどの教育内容が問題なのか、詳しい説明を受けることもなかった。
柳田氏は「いうべきときは言う」と表明してきたが、担当相として拉致被害者家族の意見を代弁したとは言い難い。文科省の基準発表後、民主党政策調査会の部門会議が開かれたが、特段の反対意見も出ず、すんなり了承された。
「やぶ蛇も」
北朝鮮問題の専門家らが歴史教科書の金日成・金正日父子礼賛や反日的記述とともに問題視してきたのが、北朝鮮の介入と朝鮮総連との一体化だ。
教科書内容の変更には、北朝鮮本国の決裁が必要で、朝鮮総連幹部が朝鮮学校長を兼務するなど、一体化人事が行われている事実がこれまでに明らかになっている。さらに生徒らは総連の政治組織に強制加入される。このような政治の介入についても文科省の基準は“不問”に付している。
ただ、基準では、就学支援金が生徒の授業料に充てられているかを証明する資料の提出を義務づけており、「いままでゼロだったものが、情報が得られる立場になった」(鈴木寛文科副大臣)との評価だ。
しかし、朝鮮総連が学校経理とは別に、学校行事を利用して集金をしている実態も判明しており、総連関係者は「職員でさえ、集めた金がどこに行くか分からない。無償化で寄付金など総連による別の集金が増える心配もある」と訴える。
一方で、無償化議論をきっかけに計約8億円もの補助金を朝鮮学校に支給し続けてきた自治体に見直しの動きが出始めている。
補助金額の多い大阪府や東京都が見直しの検討を始めているほか、神奈川県でも松沢成文知事が「独自のルールが必要だ」として調査の意向を表明。状況によっては、無償化が適用された場合に年2億円と予測される就学支援金の額を上回る補助金が停止される可能性もある。朝鮮総連内でも「無償化はやぶ蛇になるのでは」との声も上がっているという。