微粒子は、やはり小惑星「イトカワ」の表面物質だった。約60億キロの宇宙の
旅をへて小型探査機「はやぶさ」が地球に届けた回収容器内の物質の素性が
判明した。
約1500個の微粒子は直径100分の1ミリ以下のサイズだったが、電子顕微
鏡による観察で、カンラン石や輝石などであると分かった。
これらの石は、地球にも存在する。だが、含まれていた鉄とマグネシウムの比
率が地球のものと異なった。どの粒子にもその特徴がみられたことが、イトカワ
の岩石由来とする決め手となった。
計画を遂行した宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授は「7年間の飛行
が完結した」と語った。プロジェクトにかかわったすべての研究者と技術者の努
力と粘り強さをたたえたい。
はやぶさの飛行は、終始はらはらどきどきの連続だった。一時は宇宙の迷子
になりかけたこともある。満身創痍(そうい)になりながらも、故障したイオンエン
ジンの生き残った機能を組み合わせるという離れ業を演じ、小さなはやぶさは
今年6月、地球に戻ってきた。
その健気(けなげ)さは、感動を呼んだ。科学や宇宙に関心を持っていなかっ
た人をも、世代を超えて感激させた。普通なら専門家しか味わえない「発見の興
奮」を子供たちまでが共有した。
3億キロのかなたから、はやぶさが送信してきたイトカワの奇妙な姿は、世界
中をびっくりさせた。それだけでなく微量ながらも太陽系の起源の解明につなが
る小惑星の粒子までももたらしたのだ。
小惑星からのサンプルリターン(試料回収)は、米露でさえ成し得ていない快
挙である。この成功は、人類の知の前進に大きな足跡を残すことになった。
宇宙の科学探査は、日本の得意とするところだ。だが、実利に結びつきにくいという理由から今の政府によって縮減されかねない状況にあった。それが、はやぶさの大奮闘で危機を脱しつつある。
科学は、経済成長の原動力となる以外にも真理の発見という人類の財産を築
くのだ。はやぶさは、日本の科学研究の退行を押しとどめる役目も果たしてくれ
た。
はやぶさ効果は、これから世界に広がっていく。微粒子は世界の研究室に配
布され、多様な研究がスタートする。どんな発見がもたらされるか、大いに楽し
みだ。



