
菅直人首相(64)が中部電力浜岡原子力発電所の全面停止を打ち出した。浜岡原発は東海地震の想定震
源域に立地しており、今後巨大地震に見舞われる可能性が高い。停止の判断自体は否定されるものではない
が、それを打ち出すにあたってどれほどの配慮をしたかは疑問が残る。
海外への売り込みを主導
浜岡原発を止めることによる国内の電力供給源対策もしかりだが、東日本大震災以降とりわけ目につくのが
海外への配慮のなさだ。
現在13基の原発が稼働し、今後も増設が予定される中国では国営新華社通信が菅首相の発表を英語版の
みで速報した。東京電力福島第1原発事故を受け原発への不安が高まっているのは中国国内も同じ。原発の
安全性を否定しかねない首相の唐突な発表が地震の多いアジアの原発立地各国にどんな影響を与えるか、配
慮を欠いたと言わざるを得ない。
そもそも原発をトップセールスで海外に売り込む政策を推進してきたのは他ならぬ民主党政権だった。菅首相
は昨年10月、ベトナムのグエン・タン・ズン首相とハノイの首相府で会談し、ベトナムが新たに建設する原子力
発電所2基の建設を日本が受注することで合意している。
失墜する国際信用力
一昨年、アラブ首長国連邦(UAE)の原発受注競争で韓国に敗れた日本は、ベトナムでの原発受注に力を注
いできた。民間企業がバラバラで受注活動を展開した反省から、原発メーカー、電力会社、政府出資の投資フ
ァンドによる新会社を設立。昨年6月には、政府の「新成長戦略」で原発を含むインフラ輸出を重要な戦略分野
と位置づけ、官民挙げて海外輸出を働きかけてきた。
昨年5月の大型連休中には仙谷由人国家戦略担当相と前原誠司国土交通相(いずれも当時)が東京電力を
含む日本企業のトップを伴って訪問し、官民一体のトップセールスを展開。10月の日越首脳会談直前には松本
剛明外務副大臣(当時)が0泊3日でハノイに飛び、鳩山由紀夫前首相とともに最終交渉に臨む念の入れよう
だった。
日本側は「原発の運転、保守で優れ、人材育成でも協力できる」(東京電力の勝俣恒久会長)と強調し、受注
を獲得しただけに、日本の原発事故対応はベトナムをはじめとする諸外国にも関心をもって受け止められてい
る。
高品質で安心・安全な商品を海外に提供し続けることで日本は輸出大国として地位を築き上げてきた。海外
ユーザーの諸外国に納得いく説明を欠いた今回の唐突な原発停止発表は日本の国際信用力を失墜させたと
言わざるを得ない。
自国中心主義のツケ
震災発生以来の政府の対応は、自国中心主義の対応が端々にかいま見える。4月に東京電力が福島第1原
発の低レベル放射能汚染水を海に放出した際には、在日各国大使館向けの連絡が放出後だったことが判明
し、問題となった。
2011年度第1次補正予算をめぐっても、政府・民主党は、諸外国向けの政府開発援助(ODA)を1000億円
削って財源に充てる方針で臨んだ。結局野党からの批判を受けて削減幅を500億円に圧縮したが、民主党政
権が傾ける外交への熱意に疑問符が付く対応だったことは間違いない。
津波被害で多数の死者・行方不明者を出した今回の震災では、海外の多くの国が義援金の拠出や救援部隊
の派遣を申し出てくれた。津波が、港から約1キロ内陸の高台にまで押し寄せた宮城県女川町では、インドの
国家災害対策局対応部隊(NDRF)が捜索活動を展開。自衛隊も活動を見合わせた地域で、死者への弔いか
ら器具を用いず遺体を体で包むように抱きかかえ、がれきが積み重なった水の中から運び出していった。
しかし、ここでもインド大使館を訪れ、積極的にお礼をいって回ったのは、現在は野党・自民党の森喜朗元首
相だった。(政治部 赤地真志帆)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110521/plc11052107010005-n1.htm
日本は危険だという認識が広がったようです。