金正男「告白」本 体制批判のヤバすぎる中身- ゲンダイネット(2012年1月22日10時00分)
<「祖父に容貌だけ似た弟に人民を満足させられるか」>
20日発売の一冊の 本に、全世界が注目している。本のタイトルは「父・金正日と私 金正男独占告白」。昨年12月に死去した北朝鮮の金正日の長男・正男(40)と、東京新聞 の五味洋治編集委員との対話録である。正男の生の言葉を集めた本が出版されるのは、世界初のこと。発行元の文芸春秋には発売前から、韓国はもちろん、米国 や英国、豪州など世界中のメディアの取材依頼が殺到しているのだ。
五味氏は04年9月に北京国際空港で正男と偶然出会った。同じ年の 12月に正男からあいさつメールが届いたのを機に数回やりとりを続けたが、すぐに連絡が途絶えた。ところが10年10月、三男の正恩が後継者デビューした 1カ月後に正男が突然メールを送りつけ、対話は再開。今月3日まで、北京とマカオでの2度のインタビューを挟み、150通以上ものメールのやりとりを続け た。本に出てくる正男の「告白」は赤裸々だ。
金正日死去の直前(先月10日)には「祖父(金日成)に容貌だけ似ている正恩が、どれだけ人々を満足させられるか、心配です」と危惧し、葬儀後(今月3日)はさらに踏み込んで、祖国の行方を分析してみせた。
「37年間の絶対権力を、(後継教育が)2年ほどの若い世襲後継者が、どう受け継いでいけるか疑問です。若い後継者を象徴として存在させ、既存のパワーグループが、父上の後は引き継いでいくとみられます」
正恩とは「平壌では住んでいる場所が違ったので、全く面識がない。会ったことがない」と答え、3代世襲については「物笑いの対象」「社会主義理念にも符合しない」「中国の毛沢東主席でさえ世襲はなかった」と痛烈に批判した。
<新橋のガード下のおでん屋にも出没>
自分が父から遠ざけられた理由は「(9年間のスイス留学後に)私が完全な資本主義青年に成長して、北朝鮮に帰った時から、父上は私を警戒した」と記し た。中国式の経済政策の「改革・開放」や、核実験、ミサイル発射実験に対する国際社会の憂慮を直言するたび、父の怒りを買ったという。
拉致問題については「両側(北朝鮮と日本)の主張が今のようにするどく対抗する状況では、解決策がそんなに簡単とは思えません」、核開発も「北朝鮮のよう に地政学的に敏感な場所にある生存危機を感じている国が、核を放棄するのは簡単ではない」と語るいっぽうで、日本を襲った大震災と原発事故には、「苦痛を 味わっている日本の住民たちがただ心配です」と気遣う。さらに「原発は地球生態系のために良くない」と、脱原発まで主張するのだ。
従来のディズニーランド好きの放蕩息子というイメージとは異なり、常識的な国際感覚を持つ平和主義者という一面が浮かび上がってくる。
ちなみに日本への入国は計5回。東京・新橋の第一ホテルを定宿にし、ガード下のおでん屋によく食べに行ったという。
これだけ内情を暴露して、正男は大丈夫なのか。いっそ日本に亡命して、拉致問題の解決に尽力して欲しい。
(日刊ゲンダイ2012年1月19日掲載)