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■磐田復帰を決意させたチームメートとファンの温かさ
こうして、イ・グノのPSG移籍は幻に終った。それでも、若い彼には将来性がある。今回の件は一つの大きな経験、糧(かて)になっただろうし、仮に欧州行きの失敗を本当に恥じていたのであれば、Jリーグへの復帰、それも同じチームでプレーすることを選ばなかっただろう。
今や韓国を代表¥するFWへと成長したイ・グノだが、その素顔はとても謙虚で、決しておごり高ぶることもない。そして何より、彼は日本が好きだ。磐田を発つ前のインタビュー取材で本人に会ったとき、こんなことを言っていた。
「チームメート、特に前田遼一さんは、僕を生かすために、とても献身的に動いてくれるし、気を使ってくれます。だからゴールを量産できるんです。また、韓国語が話せるGKの吉原慎也さんのおかげで、チームにもすぐに溶け込むことができました。そして何よりも、ファンの熱い声援も力になります。この磐田という街も、韓国の地方都市に似た雰囲気があっていいですよね。とてもサッカーに集中できる環境なので、選手にはとてもいい場所です。チームも街も、とても好きになりました」
チームへの強い愛着が感じられる言葉だが、磐田で過ごした3カ月でイ・グノが特に感じたのは、チームメートとファンの温かさだった。短い期間のなかでも、互いの信頼を築き上げられたからこそ、彼は磐田に戻ってきたのだ。
来年は東アジア選手権が日本で開催され、2010年W杯を前に、日韓の壮行試合も予¥定されているという。代表¥戦でもイ・グノのプレーが見られるのは楽しみの一つだが、それだけ今季はとても大切な時期だと言える。だからこそ、今、彼にとって一番大事なことは、持ち前のスピードとパワー、そして決定力を絶え間なくJリーグで磨いていくことであろう。
■イ・グノは“第2のファン・ソ¥ンホン”となるのか?
前述のとおり、Jリーグで好調を維持していることから、イ・グノは韓国でも注目を浴びている選手だ。その証拠に、8月12日に行われるパラグアイ代表¥とのAマッチに向けて、韓国代表¥にも招集されている。
「必ず代表¥のレギュラーポジションを獲る」と意気込むイ・グノ。その気持ちも分からなくもない。19歳で98年フランスW杯を経験し、00年のシドニー五輪にも出場し、ブンデスリーガ、プレミアリーグでプレー経験もあるイ・ドングッ(全北現代)が2年ぶりに代表¥に復帰。代表¥で2トップを組んでいた、パク・ジュヨンも健在だ。
現在の韓国代表¥は“第2のファン・ソ¥ンホン”を探すことが課題だと言われているが、韓国メディアでは、その“ポスト”としてイ・グノの名が挙がることが多い。ただしファン・ソ¥ンホンとイ・グノとでは、攻撃スタイルが異なる。ピッチを縦横無尽に走り回るパク・チソ¥ンの豊富な運動量、抜群のスピードを生かしたノ・ジョンユンの突破力、そしてチェ・ヨンスの力強さ―¥―¥イ・グノの場合、それぞれの先達たちの強みを持ち合わせた、新しいタイプのストライカーなのだと思う。
果たして来年のW杯まで、イ・グノはどれほどの成長を遂げるのだろう。いずれにしても、常に結果を求める向上心があるならば、代表¥でレギュラーを獲得して“ファン・ソ¥ンホン2世”と呼ばれる日も、そう遠くはないはずだ。
一方、所属する磐田は現在、リーグ9位(第20節終了時)。昨年は入れ替え戦に回ったとはいえ、もちろん今の順位に甘んじるつもりは毛頭ないだろう。名門復活に向けて、これからの後半戦が重要になってくることは言うまでもないが、そのためにはイ・グノの爆発が必要不可欠だ。今回は、移籍不履行の“サプライズ”でJリーグをにぎわせてくれたが、次はゴールラッシュという“サプライズ”で、日本サッカー界をアッと驚かせてほしい。“真の救世主”となるためのイ・グノの戦いは、まさにこれからである。