ヴァンフォーレ甲府の“大型ストライカー”ハーフナー・マイクの株が上がっている。
6月22日のJリーグ第17節終了時点で得点ランキング4位タイの6ゴール。そのうちアルベルト・ザッケローニが視察に訪れた試合で3ゴールを決めており、「日本代表入りへアピール」などと注目するメディアも増えてきた。
このハーフナー・マイクの最大の特徴と言えば、空中戦の強さ。
恵まれた体躯だけでも相手との競り合いに勝つには十分なのだが、落下地点に入るポジショニング、タイミングや駆け引きも巧い。そのため、競り合いにも余裕が出てくる。ヘディングの強さだけでなく、ジャンプして競り合う相手を押しつぶすような胸トラップからのシュートも彼ならではの武器だ。
強さもあり、巧さもある。
昨年、20得点を挙げてJ2得点王に輝いた実力はJ1でもいかんなく発揮されている。これまでの6得点の内訳を見るとヘディング2点、利き足の左足3点(PKの1点含む)、右足1点。足技のレベルも高く、どこからでも点が奪えている。
「1つのチャンスをモノにするため」に集中力を切らさない。
彼にたくましさを見たのが6月15日、アウェーでの鹿島アントラーズ戦だった。
鹿島にボールを支配され、前半はチームでわずかシュート1本のみ。鹿島の攻撃を何とか防いで後半にギアを上げたものの、お互いにゴールを奪えないままロスタイムに突入した。
タイムアップ間近、右サイドから出たボールを受けたマイクの左足が火を噴いた。シュートが相手DFとGKの股を抜くという痛快なゴールで下位に低迷するチームに貴重な勝ち点3をもたらしたのだ。数少ないチャンスが、いつ訪れるかわからない。最後の最後まで集中力を切らさなかったことが、このゴールにつながったと言える。
試合後、彼はこう言った。
「どうしてもチャンスが少なくなってしまうのは、開幕戦のジュビロ戦から痛感させられたことだし、1つの決定機を外しちゃいけないという思いがチームとしても強くなってきた。1つのチャンスをモノにするためには、僕らは試合が終わるまでしっかり戦い抜くことを続けていかなければならない」
名古屋のコーチ、父であるディドの前で決めたシュート。
ここまでの甲府の総得点はリーグ14位の11得点。その半数以上をハーフナーが決めている。我慢の戦いのなかから、少ないチャンスを活かしてゴールにつなげる。ユースから昇格した横浜F・マリノスでは出場機会に恵まれず、J2のサガン鳥栖、甲府と渡り歩いてきた。磨きをかけてきたタフなメンタリティーが、彼の勝負強さを生み出している。
今シーズンが開幕する前、名古屋グランパスでコーチを務める元日本代表GKコーチのハーフナー・ディドにキャンプ地の別府で話をする機会があった。今季の名古屋についてひとしきり聞いた後、最後に息子の話を振った。
彼は「他のチームのことでしょ?」と苦笑いしながらも、一言だけ言った。
「今年のシーズンは今まで以上に気持ちが入っているはずですよ。だから、どれだけ成長しているのか、戦うのを楽しみにしていますよ」
5月15日の名古屋戦で息子は父の面前でゴールを奪い、チームを勝利に導いた。父に成長を見せつけた瞬間だった。
強さもあり、巧さもある。3-4-3のトップ中央を務める資格がある。
ハーフナー・マイクが今後ザックジャパンに名を連ねてくる可能性は十分にある。
というのも、4-2-3-1の1トップまたは3-4-3の3トップ中央を務めるポジションでメンバーに生き残っているのは前田遼一、李忠成の2人だけ。今回のキリンカップでは森本貴幸が外れて興梠慎三が入るなど、指揮官が新たなストライカーを探していることは間違いない。
特に3-4-3の3トップ中央には、4-2-3-1の1トップよりも周囲のフォローが少なくなるために個の強靭な強さが必要条件になってくる。わかりやすく言えば、真ん中で“でん”と構えるタイプだ。
キリンカップのチェコ戦では李が体を張って懸命に務めたものの、欧州の強豪を相手にするとボールキープには苦労していた。元来、強さで勝負するタイプではないだけに、仕方のないところではあった。
今のところポストプレーに秀でる前田遼一が適役ではあるが、ザッケローニがタイプ的にハーフナーに目をつけてもおかしくはない。
指揮官がウディネーゼ、ミランで3-4-3を用いてセリエAに旋風を巻き起こしたとき、3トップの中央に置いたのは“ジャーマンタワー”との異名を持ったオリバー・ビアホフであった。191cmの長身を誇り、ヘディングの圧倒的な強さと優れた得点感覚でゴールを量産するばかりか、味方を活かすためのキープ力も抜群だった。
代表は「サッカーをやっていくなかで目指していく場所」
ハーフナーに話を戻そう。
代表レベルになるとまだ物足りないところはある。
淡白なミスが目立つこともあれば、細かいプレーで荒い部分もある。しかしながらビアホフの姿がだぶる部分も決して少なくない。
空中戦の強さに加えて懐も深く、ボールキープには長けている。槙野智章や柏木陽介らと同世代の1987年生まれで、伸びしろにも期待できる。
ハーフナー自身、代表入りにようやく意欲を見せ始めている。
「サッカーをやっていくなかで目指していく場所ではある。でもまだまだ自分にはミスも多いし、そういうところを変えていかないといけないと思っています」
日本代表は8月に韓国戦を控えている。
連戦の続く“勝負の夏”で結果を残していけば、道は拓けるかもしれない
父親のディドはオランダのトップリーグで活躍後、1986年にマツダSC(現サンフレッチェ広島)にGK兼コーチとして来日。母親はオランダの7種競技の元チャンピオン。弟は名古屋のユースチームでセンターバックで活躍中。1994年に家族全員で日本国籍を獲得したphotograph by YUTAKA/AFLO SPORT