【海外日本人】宮市に続いた高木、宇佐美…。
加速する10代選手の青田買い
以前から噂されていた宇佐美貴史(G大阪)のバイエルン・ミュンヘン移籍が27日、正式発表された。大阪で会見にのぞんだ宇佐美は「ビッグクラブでプレーするという自分の夢があった。今やっているプレーをそのまま出していければいい」と自信をみなぎらせたという。際立ったドリブル突破力とフィニッシュの迫力を誇る彼なら、ドイツでの環境適応次第だが、潜在能力の高さを発揮することは可能だろう。昨季は香川真司(ドルトムント)が衝撃的なデビューを飾って世界を驚かせたが、今度は宇佐美が大きなインパクトを残すかもしれない。
それにしても、最近の日本人10代選手の移籍ラッシュは凄まじい。中京大中京高校卒業前に宮市亮がアーセナルからフェイエノールトにレンタルされ、大ブレイクしたのを皮切りに、同世代選手が次々と外へ出ている。つい先日、彼とともに2009年U-17ワールドカップ(ナイジェリア)に出場した高木善朗のユトレヒト移籍が決定。同い年の宇佐美も続いた。彼らとともにナイジェリアのピッチに立った小川慶治朗(神戸)は「善朗も宇佐美もメンタルが強いし、そこはすごく尊敬できる部分。彼らならやってくれると思う。自分も見習わないといけない。僕も昔から海外でやりたい気持ちは強い」と語っていた。
92年生まれの選手が物心ついた頃、すでに中田英寿や小野伸二(清水)、中村俊輔(横浜)らが欧州の大舞台で戦っていた。そして今、長友佑都(インテル)や内田篤人(シャルケ)らがビッククラブに羽ばたいている。そういうのを見ながら育った彼らだけに「いずれ自分たちも海外に行く」というのが当たり前の感覚なのかもしれない。
とはいえ、宮市も高木も宇佐美も国内で頭抜けた実績を残したわけではない。宇佐美がようやく6月のキリンカップでA代表入りを果たしたものの、まだレギュラーを勝ち得るには程遠い。高木も東京ヴェルディでは出たり出なかったりだった。そういう日本人選手が青田買いされるなど、以前の日本サッカー界では考えられないことだった。少なくとも昨年くらいまでは「A代表である程度実績を残さないと海外には行けない」というのが、大方の常識だったのではないか。
その流れが急激に変わりつつある。その要因は複数考えられる。その1つが長友、内田、香川のビッククラブでの成功だろう。長友がインテルで重要な戦力になり、内田がシャルケでUEFAチャンピオンズリーグ4強を経験し、香川も昨季ブンデスリーガ前半戦MVPに輝いた。「日本の代表クラスの選手たちは欧州トップレベルでも十分やれる」と急激に評価が上がったのは間違いない。日本代表のザッケローニ監督も「アフリカの次はアジアだ」と常日頃から語っているが、欧州全域のスカウトが日本、韓国などに目を光らせ始めたのは確かだ。
18歳の宮市のブレイクもトレンドに拍車をかけた。「A代表経験ゼロの若手がそれだけやるのだから、日本の若い世代にはダイヤモンドの原石がいる」と考えるのは自然の流れ。Jでも出たり出なかったりの高木がユトレヒトとの契約にこぎつけられたのは宮市効果が大といえる。このクラブでは2003年に藤田俊哉(千葉)がプレーし、日本人を受け入れる環境が以前からあったのも大きい。
欧州クラブ側の高評価に加え、Jクラブの方も「選手を売るなら早い方がいい」という考え方にシフトしていることも重要なポイントだ。昨季オフから始まった国際基準に沿った新移籍制度がスタートし、契約が満了すれば選手は自由に海外クラブに移れるようになったからだ。しかし、23歳以下の選手が契約満了で出て行く場合に限っては「育成保証金」が支払われる。香川の場合もドルトムントから4000万円がセレッソ大阪に払われ、クラブ経営に多少なりともプラスになった。そこに着目し「どうせ出すなら23歳になる前」と考えるJクラブが多くなっているのだ。
FIFA代理人数が年々増えていることも10代選手の移籍を加速化させている。シドニー世代が欧州に渡る頃は代理人の数も限られていて、選手が海外移籍を希望してもクラブと窓口になってくれる人を見つけるだけで大変だった。が、今では日本人の代理人がJリーグや高校生、Jユースの試合に足しげく通っているし、海外の代理人が来日することもある。代理人は選手を動かすのが仕事。当然、海外移籍を進める。宇佐美も「バイエルンが熱心だったのも大きかった」と語っているが、代理人を通し熱心なアプローチを受ければ、気持ちが傾いて当然だろう。
日本人10代選手が欧州へ出て行く流れは今後も進むだろう。日本サッカー界の飛躍のためには大きなプラスだが、Jリーグを日常的に見ている側としてはやや寂しい。外に出ていった者をしのぐような選手が次々と出てきてくれればいいのだが…。次なるスターの台頭を今から期待したいものだ。