【写真で見る】試合後、サポーターの声援に応える長友
6万5856人をのみ込んだスタジアムの喜怒哀楽は、この男の一挙手一投足とともにあった。
前半4分、長友が左サイドを駆け上がれば絶叫と拍手がとどろき、フラッシュの閃光が瞬く。後半13分にはDF2人を振り切り右足シュート。ボールが枠外に外れると、天を仰ぐ長友とともにスタンドもため息をついた。
「点を取って勝ちたかったです。上にいくためには、まだやるべきことが多い。もっと熱く走ってみなさんの期待に応えられるようにしたい」
2試合連続のスコアレスドローに終わったが、収穫はあった。苦戦してきた3-4-3の新布陣で、再三攻撃のチャンスを作った。ザック・ジャパン発足以来、10戦負けなし。昨夏の南アW杯から14試合連続無敗と、日本代表記録も伸ばした。
14戦すべてに出場し、激動の1年を締めくくった長友に朗報も届いた。インテルのクラブ幹部が「条件面でまとまった」と、完全移籍が合意に達したことを明かした。
関係者によると、6日夜に現所属のインテルと保有権を持つチェゼーナの幹部が会談し、移籍金650万ユーロ(約7億6000万円)で交渉が成立。長友が受け取る年俸は推定200万ユーロ(約2億3400万円)。インテルが長友のために支払う総額は、約10億円にも上ることになる。さらに、1~2人の若手をチェゼーナに貸し出す破格の契約で、今週中にも正式発表される。
海を渡ったのはわずか1年前だ。地方の小クラブ・チェゼーナで欧州デビューし、レンタル契約で加入したインテルではリーグ13試合2得点を記録し、イタリア杯制覇をけん引した。完全移籍のオプションの権利行使は、この半年間での活躍が認められた証しだ。
「やっとスタートラインに立ったくらいの気持ちでいますよ」。激動の一年を終え、しばし翼を休める。エリート街道からほど遠い道を、努力と根性で切り開いてきた。破竹の勢いで進む“成り上がり”の先には、さらにまぶしい未来が見える。