今からバイクを運転する兄ちゃんに、雪の降る寒い日に冷えた缶ビールを渡すのか?あげるなら暖かい缶コーヒーだろ。そういう疑問は残るが、私は違う状況で缶ビールを渡されたことがある。大学のサークル活動(子供会)でキャンプの代金を集めていた時の話だ。
その日キャンプ費集金のために、初夏の午後の住宅街を歩きまわっていた。夕方に最後の家に入ったとき、その家のお母さんとちょっと雑談になった。大学は忙しいのでしょう?理系は実験とか大変なのでしょう?そんなことを話しかけてくれた。その時、飲み物を出しますね、でも学生さんならこういうのが好きよねと言われて、冷えた缶ビールを出してくれた。
缶の周囲がすでに汗をかいていて、握ると痛いくらいに冷えていた。開けた瞬間にパシュッと音を立て、白い泡が少しだけ外に吹き出した。口に当てて飲むと、芳醇な麦の薫りと味まで感じられた。二十歳になったばかりの三年生でまだ酒に慣れていなかったから、飲み終えたときには明らかに酔っているのが分かった。
あの時のビールは生涯で一番うれしく、一番うまかった。いまどんなビールを飲んでも、あの時の感動は味わえない。
ビールを渡されて嬉しいのは、これからの暑い日だよね。
(あれ、あまり青春とは関係なかったな)