ソウルから高速鉄道と車を乗り継ぎ、3時間余り。韓国の中央部に位置する工業団地の一角に、子会社の東レ尖端素材韓国(TAK)の主力工場が広がる。日覺昭廣社長が「東レの成長を支える最重要拠点」と語る場所だ。
韓国を代表する電子メーカーであるサムスン電子とLGディスプレーの工場が隣接。東レ尖端素材韓国は地の利を生かし、ここで両社のスマートフォン向け素材を一括生産している。韓国国内での光学フィルムのシェアは35%に迫る勢いだ。
サムスン先代の遺言
日覺社長は韓国を最重要拠点に位置付け、新規投資を惜しまない。(写真:村田 和聡)「末代まで東レに足を向けて寝るな」。サムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長は、グループ創業者で父親の故李秉喆(イ・ビョンチョル)氏から何度もこう言われた。 東レとサムスン。両社の関係を紐解けば、1972年まで遡る。 李秉喆氏はサムスングループの祖業の1つである繊維事業強化のため、同年にポリエステル繊維などを生産する第一合繊を設立した。その際、同社に共同出資した上で、合繊の基本技術や生産設備を提供したのが、東レだった。サムスングループは合繊での成功を足掛かりに、電子や機械、金融などに事業を拡大。韓国最大の財閥にのし上がることができた。いわばそのお膳立てを東レが担ったことになる。 第一合繊はその後、サムスングループから分離。経営を引き継いだ韓国セハングループが1999年に経営難に陥ると、東レは同社に出資し、合弁会社の東レセハンを設立した。 当時はアジア通貨危機で韓国経済が打撃を受けた時期だったが、中興の祖である故前田勝之助会長(当時)が「苦しい時期にこそ新規投資すべき」と社内の慎重論を押し切り、最終決断を下した。
社員の4割はサムスン出身者
その判断の正しさはすぐに証明された。サムスン電子がスマートフォンで成功するのに合わせ、TAKの業績も好転。競合のLGディスプレーからも引き合いが強まり、TAKのIT素材事業は2002年度に67億ウォンだったのが、2013年には50倍の3459億ウォンに急拡大した。