銀行に資金調達のあり方を改善させるのは容易ではない。
かつて米国のある裁判官は、ポルノを定義するのは難しいが、「見ればそれと分かる」と言った。破綻寸前の銀行についても同様のことが言える。
過去2年間の実例から、いかなる形であれ、破綻の原型を導き出すのは難しい。米リーマン・ブラザーズやアイスランドの複数の銀行など、自己資本比率の高い銀行が破綻する一方で、自己資本比率が比較的低い銀行が生き延びた。
ごく平凡なリテール銀行が吹き飛ぶ一方、中身の分からないブラックボックス取引を手がける業者が発展したりした。規模の大小を問わず、潰れる銀行が出た。破綻の運命にある銀行は、その銀行が実際に破綻という地獄に陥らない限り、そうとは見分けられないのかもしれない。
ホールセール借り入れへの依存
ただし、ほとんどの破綻には共通の要因がある。ホールセール借り入れへの過度の依存だ。欧米の金融システムが過去20年間で拡大する中、銀行の資産は預金高の約2.5倍にまで膨らみ、その結果、銀行は預金以外の資金調達を模索せざるを得なくなった。
2007年秋、英ノーザン・ロックは資金繰りが悪化し、取り付け騒ぎに見舞われた〔AFPBB News〕
短期の借り入れに大きく依存していた米ベアー・スターンズや英ノーザン・ロックは、取引相手に債務の借り換えを拒まれると、現代版の「取り付け騒ぎ」に見舞われた。ほかの大半の銀行も信用の喪失に見舞われ、国からの調達に頼るしかなかった。
当然ながら、規制当局は、銀行の自己資本を増やすとともに、各行により安全な資金調達先を確保するよう強制すれば、金融システム全体が安全になると考えている。
国際決済銀行(BIS)や各国の規制当局は、流動性に関する新ルールを検討している。ニュージーランドは既に具体的なルールを策定している。
こうした規制が今後どこまで実施されるかは不明だが、銀行が、預かった現金のみを融資資金としていた理想的な過去に戻ることは、もはやあり得ない。預金のみに頼ることを強いれば、銀行のバランスシートは大幅に縮小し、経済は壊滅的な打撃を受けるだろう。
しかも、すべての預金が動かないカネだというわけではない。イングランド銀行の試算によると、2008年第4・四半期だけで、ロシアから英国に預けられていた1000億ドル相当の預金が引き揚げられたという。
欧米の銀行システムの資金調達は質的に改善するどころか、2009年に入って一段と不健全さを増している。各行は増資や長期の借り入れで資金を調達し、預金をかき集めてきたが、大局的に見ると、こうした努力はほとんど何も違いを生んでいない。
米国の8大商業銀行を見ると、良質な資金調達の割合は過去6カ月間で、全体の78%から80%へと微増したにすぎない。
米国の投資銀行の中で生き残ったゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーに至っては、いまだに短期の借り入れに頼っている(図参照)。
これらの借り入れは大抵、担保で保証されており、信頼度はそこそこ高いが、ベアー・スターンズが実証した通り、市場が崩壊すれば中央銀行の支援なしでは干上がってしまう危険がある。
英国では、ホールセール借り入れへの依存度が高いロイズ・バンキング・グループが、いまだに調達資金の半分が1年以内に満期を迎える状況にある。
資金源に大きな変化
借り入れ期間の長さは大きく変わらないとはいえ、その資金源には変化が見られる。米国とユーロ圏、英国では、中央銀行による融資と銀行債券の公的保証が約2兆7000億ドルに達している。国際通貨基金(IMF)の試算によると、これは銀行がホールセールで調達した資金の約9%に相当する。
政府支援は資金の中身が特に悪い銀行に集中する。だからこそ、ベルギーのデクシアは同国政府から820億ユーロ(1170億ドル)の資金注入を受け、ロイズは最大1000億ポンド(1620億ドル)の資金注入枠を与えられているのだ。
もともと、政府による支援はパニックが収まれば速やかに引き揚げられるはずだった。米国の主要な債務保証制度での新たな保証の付与は10月に終了する(既に付与された保証は2012年に期限が切れる)。欧州の制度は大半が年内に終了する予¥定で、保証の期限は2012年から2014年にかけて切れていく。
大手金融機関は、短期借り入れへの依存を断ち切れるか? 〔AFPBB News〕
これらは、銀行が自力で負債を借り換えられるようにするだけでなく、債務の満期を先に延ばすことで、変動の激しい短期借り入れへの依存を断ち切ることを期待しての措置だ。
資金調達を巡る緊張は和らいでいる。調査会社の英ディーロジックによると、欧米の銀行は2009年に入って政府の保証なしで6450億ドルの債券を発行しているという。
とはいえ、銀行が直接的な政府保証から乳離れすると同時に資金調達方法を改善できると考えるのは、かなり非現実的に思える。
の理由の1つは、債務の膨大さにある。
欧米の銀行は18兆ドル前後に上る既存の短期借り入れを回転させながら、平均すると1年におよそ1兆5000万ドルずつ満期を迎える長期の債務の借り換えを行っていかなければならない。証券化市場が打撃を受け、銀行への信用が失墜した今、これは決して簡単なことではない。
思うようには借り入れができない
デクシアも必要な資金を十¥分に調達できていない〔AFPBB News〕
資金を特に必要としている銀行が、思うように借り入れをできるかどうかも、やはり不透明だ。ロイズは3日、政府保証のない無担保の10年債を国債より193ベーシスポイント高い利率で発行した。英国で最も安全な銀行HSBCと比べると、これは約2倍の利率だ。
ある銀行の関係者によると、この利率は「非経済的」なだけでなく、ロイズは15億ユーロしか調達できなかった。これは焼け石に水にしかならならい額だ。
7月には、デクシアがよく似た5年債を国債利回りより160ベーシスポイント高い利率で売り出した。こちらも、発行規模は10億ユーロと、必要な額に比べるとわずかだ。
大部分の銀行にとっては、やっとのことで切り抜けていくというのが現実なのだろう。政府支援は延長される可能¥性がある。預金高が少なすぎる銀行は徐々に縮小していき、うまみのある融資の機会に乗じることはできなくなるだろう。
資金調達の構¥造を変えられないと見れば、規制当局は代わりに資産の流動性を高めることに注力するかもしれない。欧州の監督機関は銀行に対し、仮にホールセールの資金市場が1カ月にわたって凍結されても生き延びられるだけの現金を持つよう求めている。
最後は政府頼み
こうした「演習」も、実績はまちまちだ。ベアー・スターンズは破綻前、必要な調達額が600億〜1000億ドルだったのに対し、約180億ドルの流動資金を手元に置いていた。現在でもやはり、驚くほど多額の緩衝用手元資金が積み上げられている。ゴールドマン・サックスは現時点で、資産の5分の1に当たる1710億ドルの流動資金を持つ。
銀行は将来、さらに莫大な資本と現金を持つことになるだろう。それでも、最終的な資金の拠り所としては国を頼ることになるなるはずだ。