正恩体制 権威付けの強行発射 威信に傷負い15日に金主席100周年
2012.4.14 21:39 (1/3ページ)[核・ミサイル事情]
金日成主席生誕100年の15日を前に平壌で、金正恩労働党第1書記らが出席して中央報告大会が開かれた。開会を前に待ちくたびれてか、居眠りする女性兵士の姿も=14日(AP)
「人工衛星」と称する北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を受け、米国は13日、食糧支援中止を表明、国連安全保障理事会も北朝鮮を非難する報道関係 者向け談話を発表した。国際的な圧力が高まる中、金正恩(キムジョンウン)体制は発射失敗により威信が傷ついた最悪の状況で15日、最大の祝典、金日成 (キムイルソン)主席生誕100年を迎える。
核ミサイル開発に特化し、政治経験の乏しい金正恩第1書記に速成で権威付けする-。北朝鮮は、金正日(キムジョンイル)総書記の生前から「正恩氏イコール核ミサイル」戦略を打ち立ててきた。今回の失敗はその第一歩が崩れたことを意味した。
「金正恩同志の軍事、科学技術での卓越した見識が偉大性を体現している」
昨年12月の金総書記死去以降、新体制はこう国内外に宣伝してきた。まさに第1書記の偉大性を象徴するのがミサイル開発だった。
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国営メディアは2009年のミサイル発射でも金第1書記が指揮所で発射に立ち会っていたと報道。共同通信によると、今回のミサイル発射前にも招待した外国人記者に指揮所長が「金正恩同志が一つ一つ指示を下さっている」と金第1書記の指揮を強調した。
韓国政府関係者によると、13日早朝、ミサイル基地のある東倉里(トンチャンリ)は濃霧が立ち込めていたという。発射前から失敗を予想する米韓専門家もいた。いかに金主席生誕100年に合わせた日程ありきの強行発射だったかをうかがわせている。
金第1書記の権威付けは、最初から核ミサイルの一枚看板だったわけではない。国内安定化に向けた最重要課題の経済問題でも後継者内定後の09年11月、デノミネーション(通貨呼称単位切り下げ)を実施。中朝関係者は「権威付けが目的だった」と説明する。
しかしデノミは闇市場に頼る北朝鮮経済に大混乱を引き起こした。朴南基(パクナムギ)党計画財政部長らを責任者として粛清することで幕引きを図ったが、金第1書記の功績と聞かされてきた国民に不満がくすぶり続けた。
昨年12月の指導者就任直後から食糧問題に心を砕く姿をアピールし続けたが、米国からの食糧支援がミサイル発射予告で白紙になり、中国を除く支援の可能性が断たれた。正恩体制には「ミサイルに懸ける」道しか残されていなかった。
威信を懸けた発射の失敗だけに日韓の専門家からは「今後、デノミ時以上の粛清が行われる」との見方が出ている。ただ、デノミ失敗とは大きく事情が違う。
朝鮮半島情報筋によるとミサイルは軍部の専権事項とされ、古くからの元老勢力が発言力を有してきた。そこに金総書記の「遺訓」として李英浩(リヨン ホ)総参謀長や金正覚(キムジョンガク)人民武力部長ら第1書記の側近勢力が強く発射を推した。ミサイル開発部門幹部にも2月に大将や上将称号を授与し た。軍部を一枚岩に維持する名分でもあり、たとえ不備が見つかっても中止進言はあり得なかった。
正恩政権は核ミサイル開発を中心にした軍事優先路線継承を宣言。今回失敗しても核実験や新たなミサイル発射実験の強硬策で挽回するほかない。ミサイル開発陣を簡単に粛清するわけにはいかないのだ。
「ミサイル発射の決定に関与していなくとも側近グループと距離のあった軍元老らをスケープゴートとして処分することで、逆に体制引き締めを図るのではないか」。北朝鮮の内情に通じる消息筋の一人はこう分析する。