巨大な骸骨の妖怪

相馬の古内裏(1845年ごろ) 歌川国芳
非常に有名な1枚。描かれているのは、平将門が討ち取られたあと、その娘とされる滝夜叉姫が呼び出した骸骨の妖怪です。滝夜叉姫はこの妖怪で父亡き後、その遺志を果たそうとしました。※滝夜叉姫は伝説の人です。作者は奇才・歌川国芳(うたがわくによし)。まずは彼の作品から紹介します。
とどめの一撃

甲越勇将伝 武田家廿四将 三討死之内 諸角豊後守昌清(1847年ごろ) 歌川国芳
ビカーッて漫画みたいになっています。150年前にすでにこんな表現が使われていたことに驚き。対決

和漢準源氏 乙女 天羅国斑足王悪狐華陽夫人顕 歌川国芳
国芳晩年のシリーズの1枚。武者絵と妖怪画を得意とした国芳らしいダイナミックなタッチですね。海老VS鳥

禽獣図会 大鵬 海老 歌川国芳
神獣を題材にしたシリーズ『禽獣図会』(1839~41)の一枚。荒波をバックにした真っ赤な海老が飛び出さんばかりの大迫力!VS鯉

西塔鬼若丸 歌川国芳
武蔵坊弁慶の若いとき。鬼若丸こと弁慶が巨大な鯉を退治したという有名なエピソード。鯉の迫力と、それを押さえつける鬼若丸の力強さ。浮き草で挑む金魚(無謀

金魚づくし 百物語(1839年頃) 歌川国芳
国芳のユーモアセンスを存分に楽しめる『金魚づくし』シリーズ全8枚のうちの一枚。普通、百物語といえば100話目が終わって100本目のろうそくが消え ると化け物が現れるのですが、金魚の世界では化け物ならぬ化け猫が現れたもよう。腰を抜かす金魚、逃げようとする金魚、果敢にも浮き草の刀で立ち向かおう とする金魚…と、金魚たちのリアクションが素晴らしすぎます。お稽古するネコ

猫のけいこ(1841年) 歌川国芳
江戸時代後期に男性たちの間で流行したお稽古事「浄瑠璃」を猫で描いた団扇絵。なんと、女のネコ師匠とネコ弟子2匹の着物の柄が猫の大好物となっている。 国芳、芸が細か過ぎ。ちなみに説明すると、ネコ師匠の着物の柄は、鈴に小判、猫の足跡、目刺し。手前のネコ弟子はフカヒレ、奥のネコ弟子はタコの柄。猫文字するネコ

猫の当字 なまず(1841~1843年ごろ) 歌川国芳
またまたネコ。国芳は大の猫好きでした。シリーズ『猫の当て字』のうちの一枚。「なまづ」という字を人文字ならぬ猫文字で表現。猫の表情が豊かでとってもかわいい。かなり無理な姿勢をしている猫もいるが、それもまたおもしろい。滝の迫力すごい

『六様性国芳自慢 先負』 文覚上人(1860年) 歌川国芳
滝に打たれる文覚上人を描いたものだが、なんといっても目を引くのが流れ落ちる滝の表現。垂直に落ちてきた水が上人の頭に当たって放射線状に飛び散っている。ものすごくデザイン性が高いです。着弾の描き方

甲越勇将伝 本庄越前守繁長 歌川国芳
上杉謙信の重臣・本庄繁長を描いた武者絵。弾が当たり放射線状に炸裂する盾がかっこいい!鬼が吟じてる

百人一首之内 大納言経信(1840~42年頃) 歌川国芳
平安時代の歌人・源津経信が和歌を詠んでいると朱雀院の鬼が現れ漢詩を吟じた、というシーン。風流な場面ではありますが、鬼がとりあえず怖い。この口から出てるのが鬼が吟じた漢詩だそうですが、漫画のセリフみたいな表現ですね。斬新です。あいかわらず滝の迫力がすごい

賢女烈婦伝 初花 歌川国芳
北条氏政の家臣の娘・初花が死して幽霊になってなお、敵討ちをせんとする夫のために滝に打たれ祈っている。はかなげな初花の姿とダイナミックな滝の組み合わせ。初花のけなげさが際立っています。160年前にこのセンス…

みかけハこハゐが とんだいゝ人だ(読み:見かけは怖いが、とんだいい人だ)(1847年) 歌川国芳
これ当時の人たちがついてこれたの?と心配になる飛ばしっぷり。大勢の男たちが集まって“いい人”をこしらえてみた…という、ナンセンスに慣れた現代人でもリアクションに困るハイセンス。鼻担当がたいへんそう。カエルがキモ可愛い

天竺徳兵衛 歌川国芳
江戸時代前期に実在した商人で探検家の天竺徳兵衛を描いたもの。四代目鶴屋南北の歌舞伎でなぜかガマガエルを使役する妖術使いとなったらしい。役者絵も得 意だった国芳だが、やっぱり目を引くのはガマガエルでしょう!ギョロっとした目とかブツブツとか気持ち悪いんだけど、しばらく見てるとなんかかわいい気も してくるから不思議。異種格闘技 VS巨大イノシシ

忠孝名誉奇人伝 山本勘助(1845年) 歌川国芳
描かれているのは武田家の天才軍師として名高い山本勘助。勘助が押さえ込んでいるのは巨大なイノシシ!イノシシの毛についた雪がなんともデザイン的。異種格闘技 VS大猿

碓井又五郎 飛騨山中ニ打大猿ヲ 歌川国芳
飛騨に伝わる大猿伝説が画題と思われる。又五郎と巨大な化け物猿との格闘が熱い!そして又五郎が非常にイケメン!! 白いモフモフした毛がちょっと気持ちよさげな猿の口から吐き出された炎のインパクトがすごい。臨場感すごい

東海道五十三対 桑名 船のり徳蔵の伝 歌川国芳
歌川国芳、広重、三代豊国という当時の人気絵師3人が競演したシリーズ『東海道五十三対』の1枚。画題となっているのはその土地に伝わる伝説や物語、名物 で、この桑名は嵐の海で突如現れた巨大な化け物にもたじろがなかった桑名徳蔵という船乗りの伝説が描かれている。まん丸目玉の化け物は恐ろしげだけど ちょっとユーモアを感じる。3枚ぶち抜きの迫力

讃岐院眷族をして為朝をすくう図(1850年ごろ) 歌川国芳
曲亭馬琴の『椿説弓張月』のエピソードを画題にした3枚続きもの。3枚ぶちぬきでダイナミックに描かれているのは鰐鮫という想像上の怪魚。猫好きの作者自画像

歌川国芳 自画像 歌川国芳
顔を隠しているが傍にたくさんの猫がはべっているので本人と知れる。国芳の工房にはつねに猫がたくさんいたそうで、本人も猫好きらしい穏やかな性格かと思いきや、着ているどてらの柄は地獄変相図。この地獄絵は本人の大のお気に入りだったそうです。もう訳が分かりません。次は歌川豊国(三代)(うたがわとよくに さんだい)。オサレな浮世絵を遺しています。
あまりにオシャレ

御あつらへ三色弁慶(1860年) 歌川豊国(三代)
まさかの背景チェック&3色グラデーション。すげーオサレです。本当に江戸時代の作品なのかと、オーパーツ的感覚になります。このまま包装紙とかに使えそう。3人の男たちもいかにも江戸っ子らしい粋なイケメンたちです。普通に今っぽい

今四天王大山帰り(1858年) 歌川豊国(三代)
こちらも背景の太目のチェックが斬新な一枚。シンプルかつ大胆な背景が男たちのかっこよさを引き立てています。ちなみにこの4人は、 坂田金時、卜部季武、碓井貞光、渡辺綱で、彼らを粋でいなせな町火消に見立てています。次は、「明治の写楽」ともいわれた豊原国周(とよはらくにちか)。
影のアイデア

楽屋二階影評判 梅王 片岡我童(1883年) 豊原国周
人気役者の楽屋でのようすを影絵を使って描いたシリーズ。影を使っているところがユニークですね。なんだかちょっと覗き見している気分にもなります。次は月岡芳年(つきおかよしとし)。浮世絵界自体の需要がなくなっていく幕末・明治に、バラエティに富んだ作品を発表した芳年。そんな彼についた異名は「最後の浮世絵師」。
まるで格闘漫画

芳年武者无類 源牛若丸・熊坂長範(1883年) 月岡芳年
平安時代末期の大盗賊・熊坂長範を討ち取る牛若丸を描いたもの。武者絵の名手・歌川国芳に師事していただけに芳年も武者絵を多く手がけています。さてさ て、牛若丸といえばご存知、のちの源義経ですね。牛若丸の若々しい軽やかさ、それと対照的な熊坂長範のヒールっぷりがいいですね。格闘漫画のような雰囲気 も感じられます。孫悟空と月の兎

月百姿 玉兎 孫悟空(1889年) 月岡芳年
芳年の晩年の傑作シリーズ『月百姿』。これは月にちなんだ伝説などを題材にした全100枚の連作です。芳年は苗字と同じことから月に思い入れがあったらし い。まん丸お月さまをバックに宙を飛んでいるのは『西遊記』で有名な孫悟空。かわいらしい兎と一緒になんだか楽しそうですね。背景の黒と薄いピンクのコン トラストがなんとも素敵。グロ注意

魁題百撰相 佐久間大学(1868年) 月岡芳年
月岡芳年は、無惨絵の描き手としても数多くの作品を遺しています。彼は、別名「血まみれ芳年」と呼ばれ、江戸川乱歩や三島由紀夫、谷崎潤一郎などに深く愛されました。しかし、グロいなー。さっきの孫悟空の絵を書いた人と同一人物とは思えません。振り幅すごい。妊婦の腹を裂こうとする鬼婆

奥州安達がはらひとつ家の図(1885年) 月岡芳年
黒塚の鬼婆伝説を題材にした作品。題材への是非はあるが、とんでもないインパクト。130年前ぐらい前の絵です。大きなお腹の妊婦さんが吊られているすぐ下で鬼婆がすごい形相で包丁といでます。言葉が出ません。弁慶VS牛若丸 @五条橋

義経記五条橋之図(1881年) 月岡芳年
かの有名な牛若丸と弁慶の五条橋での決闘の場面です。剛の弁慶、柔の牛若丸という感じでかっこいい!またそれを見守るかのような月がいいですね~。月夜の静けさと躍動感が絶妙なバランスの傑作です。最後は、女性浮世絵師の葛飾応為(かつしかおうい)。
光と影の表現すごい

吉原格子先の図 葛飾応為
光と影の表現がまるで西洋画のようだがこれもれっきとした江戸時代の浮世絵。不夜城・吉原を描いた作品が数多あるが、これほど印象的なものも少ないんじゃないかな。幻想的でいてどこか刹那的な感じもするこの絵からは吉原という特殊な世界の匂いがただよう。ポーズが繊細すぎ

三曲合奏図 葛飾応為
琴、胡弓、三味線を弾く3人の女性。真剣な表情、しなやかで力強い指先、クネっとした座り姿…どれをとっても絶妙!特に背を向けて琴を奏でる女性が秀逸。着物の色や柄も粋でかっこいいなぁ。唯一無二の繊細なタッチで傑作を遺した葛飾応為。その苗字からわかるように、彼女はあの天才浮世絵師・葛飾北斎の実の娘なのです。北斎をして「美人
画にかけては応為には敵わない」と言わしめたその腕で、周囲からの評価も高く、ついた異名は「おんな北斎」。現在、応為の作品は10点あまりにしか発見さ
れておりませんが、最後に彼女が携わった非常に珍しい作品を紹介します。

唐獅子図(1844年)
この鮮やかで力強い浮世絵。真ん中の獅子は父・葛飾北斎の作、周りの花を描いたのはその娘・葛飾応為。そう、唯一無二の天才2人による親子合作です。完成したのは、北斎が死ぬ5年前、83歳のとき。幕末・明治に活躍する新世代が力をつけるなか、旧世代・北斎と新世代・応為は、お互いになにを想って合作したのか?興味はつきません。