【正論】
帝京大学教授・志方俊之 行動基準示しレー
ダー照射防げ
2013.2.18 03:25 [正論]1月30日午前10時頃、尖閣諸島北方約180キロの東シナ海を航行中の海上自衛隊護衛艦「ゆうだち」が、約3キロ離れた中国海軍フリゲート艦から射撃管制用レーダーを照射された。電波特性や入射角など細部は未公表だが、わが国の外交・防衛態勢について改善すべき点がいくつか指摘できる。
≪官邸に第一報上げるべき事案≫
まずは、防衛行動の第一線と国家の意志決定を行う首相官邸との間の迅速な情報伝達に関する課題だ。報道では、自衛艦が照射を受けて、それを総理大臣が知るまでに6日かかったとされている。
平時、公海上ですれ違う外国艦艇に射撃管制用レーダーを照射することは、国際的には異常な「挑発的行為」とみなされる。そうでなくても日中関係は尖閣をめぐり微妙な時期にある。極めて政治的な事案と判断するのが普通だ。
詳細な報告は後日に回すとしても、「照射を受けた」という情報は艦長- 自衛艦隊司令官- 海上幕僚長- 統合幕僚長のルートで、当日中に防衛相に、そして直ちに外相と自衛隊の最高司令官たる首相に上がると考えて当然だろう。
海自内で情報を滞留させたとは考えにくい。まず官邸への速報があり、その後の分析・確認作業に6日を要したのが、本当のところか。首相官邸が知った後、中国に正式に抗議し国際社会と国民に知らせるまでに、6日間かかったのなら、その遅れは当然あり得る政軍関係の国際常識の範囲内だ。
国際社会の理解を得るに堪える事実を海自に報告させて、どこまで公表し、どの部分を軍事機密として伏せるかを決める。米軍と共有する技術的「防衛秘密」の部分は、一方的には公開できない。
次に、国家間の「予防外交」の必要性である。中国との間でも、事態を公にする前の調整があっていい。今回の非は一方的に中国側にある。中国側が、国際的な失笑を買うようなものであれ何らかの「言い訳」を考え出す時間(今回は結果的に6日)を与えるのも、「予防外交」のひとつである。
≪中国式「文民統制」に疑問≫
その言い訳は、「関係部門に問い合わせる」から「(射撃管制用ではない)艦載レーダー」「日本側の捏造(ねつぞう)」へと二転三転した。中国国内紙には、強い論評を避け、海洋での中国海軍の過激な活動を抑制する動きを促し、今回の一件が、日中関係よりも重視する米中関係の悪化にまで発展しないようにとの姿勢を示すものもある。
今回の事態は、中国共産党中央の「文民統制能力」について、鼎(かなえ)の軽重すら問われかねない状況でもある。加えて、中国は北朝鮮に核実験を思いとどまらせることにも失敗して、厳しい国際的視線は平壌以上に北京に注がれている。あまり国際常識に反する振る舞いもできない。中国も今回はさすがに分が悪いと考えているのか。
だとすれば、平時には行わない射撃管制用レーダーの照射にまで踏み切ったのは、なぜで、中国のどのレベルで決定されたのか。
現場、艦長レベルの勇み足であれば、「軍律の緩み」だ。軍部、海軍司令部レベルの士気高揚策であれば、中央の目を海軍に向けさせておくための「政治への圧力」だ。中央政府レベルならば、暴走しだした軍部への融和策であり、「文民統制の緩み」でもある。
どのケースも、日中間の各レベルにおける緊急連絡体制「海上連絡メカニズム」の構築が、喫緊の課題であることを告げている。
≪挑発行為すれば容赦しない≫
さらに、力と力が接近している現場には「危機回避メカニズム」を設けなければならない。今回のようなにらみ合い状態での部隊行動基準を策定し、内外に明示しておくことが、そのひとつとなる。
海上で3キロの距離といえば、まさに指呼の間である。そんな接近状況で、いきなり射撃用レーダーを照射されたのだから、「ゆうだち」内は、「総員、戦闘配置に付け!」となり、まさに一触即発の緊張感に包まれたに違いない。
航空部隊の場合、自衛隊法第84条に「対領空侵犯措置」が定められ、それに基づいて第一線まで部隊行動基準が示されている。冷戦時代より減ったとはいえ、今も年間約400回を超す緊急発進が行われているにもかかわらず、これまで撃墜といった深刻な事態が起きていないのは、これ以上の挑発行為をすれば容赦しないとする国際基準に沿った「わが国の意志」が明確にされ、相手もそれを承知しているからにほかならない。海においても空と同様の行動基準を作っておくことは急務である。
中国の3戦(世論戦、心理戦、法律戦)を覚悟し尖閣実効統治の手を緩めないこと、南西諸島の監視・防衛能力を強めること、国家意志の迅速な決定に必要な「日本版NSC(国家安全保障会議)」を創設すること、あらゆる事態を想定して訓練しておくこと、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を再点検・強化することの重要性は言うまでもない。
安倍晋三政権には、レーダー照射事案を機に、防衛、政治、経済上の手段を駆使した「予防外交」の展開も、期待してやまない。(しかた としゆき)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130218/plc13021803270004-n1.htm
YTN
面白がって
嘘報道するな
日本戦闘機、中国機に5mまで接近
