2013年11月28日、韓国銀行(中央銀行)が2013年10月の国際収支速報値を発表した。絶好調の輸出に支えられて経常黒字額は月次ベースで過去最高の95億1000万ドルとなった。2013年通年では、原子力発電所の稼働停止で原油や天然ガスの輸入が急増している日本の経常黒字額を初めて上回ることが確実な情勢だ。
韓国にとっては喜ばしいはずの発表だが、産業界は逆に警戒感を強めている。
商品収支の黒字が急増、万年赤字だったサービス収支も黒字転換
現代重工業、世界最大のコンテナ船建造を落札スマホや自動車などの輸出が牽引し、商品収支の黒字が急増した。
◆2013年に入って韓国の経常収支黒字額が急速に拡大している。
5月以降の黒字額を見ると、5月が86億4000万ドル、6月が72億4000万ドル、7月が67億7000万ドル、8月が56億8000万ドル、9月が65億4000万ドルとなり、10月には5月の最高額を更新した。10月の黒字額は前年同月比50%増だった。
最大の牽引役は、スマートフォン、乗用車に代表される商品収支の黒字急増だ。10月の商品収支黒字額は70億ドルを突破した。
さらに万年赤字続きだったサービス収支や旅行収支も黒字に転換している。サービス収支は、特に海外での建設工事受注急増に伴う受取額の急増が牽引役になっている。また、旅行収支は、中国人観光客の増加で、小幅ながら黒字に転換している。
2013年の経常収支の黒字額も上方修正が続いている。つい2カ月ほど前に、黒字額が600億ドルを超えるという予測が出たが、これが630億ドルになり、12月初めの現時点では700億ドルに達するという見方が広まってきた。 日本の経常収支黒字額は、600億ドル+αと見られ、2013年には史上初めて韓国の経常収支黒字額が日本を抜くことが確実だ。
もちろん、経常収支の黒字額が単純に経済力を示すわけではまったくない。だが、韓国にとっては、経常収支黒字額で日本を抜くなど数年前には想像もできなかったことだ。史上初の「日韓逆転」の大ニュースでも、今回は浮かれた報道なし
5年前の2008年を振り返ってみよう。日本の経常収支黒字額は1470億ドル。韓国は328億ドルだった。そもそも韓国が黒字に転じたのは1980年代半ばだ。その後、1990年代になっても黒字と赤字を行ったり来たりしていた。日本は一貫して1000億ドル以上の黒字を計上しており、圧倒的な差があったのだ。
日本の経常黒字額が急減しているという事情があるにせよ、「日本を逆転する」は、韓国では最も大きなニュースになるはずだ。半導体やカラーテレビ市場での世界シェア、信用格付けなど、「日韓逆転」の経済ニュースは、メディアで大々的に報じられてきた。
ところが、「経常収支の逆転」は一部テレビニュースが詳しく報じたが、総じて「淡々とした」トーンだ。それどころか、「過去最高の経常収支を警戒せよ」という論調が目立つ。浮かれた受け止め方はほとんどないと言ってよい。どうしてか。特に韓国の産業界で「悪いことの前兆ではないか」との意識が強いためだ。
その理由はいくつかある。
1つには、「経常収支黒字額が過去最大」とは言うが、その中身を一皮めくって見ると、決して楽観できる内容ではないのだ。
当たり前の話だが、貿易やサービスの収支の差が「黒字額(または赤字額)」だ。韓国の経常黒字拡大は、スマホや乗用車の輸出が増えたことが大きな要因だが、もう1つ、大きな理由がある。赤字額がさほど増えなかったのだ。
韓国銀行の統計を見ると、2013年10月の商品輸入は前年同期比5%増の456億ドルだった。伸び率自体が黒字額の伸びに遠く及ばない。2013年1~10月の累計で見ると、前年同期比で1.2%減となっているのだ。
◆輸入の低調によるところが大きい「不況型黒字」
これはどういうことか。韓国は一般的に言えば、日本などから部品や素材、生産設備などを輸入して完成品を組み立てて輸出するという構造だ。輸出が急増しているのに輸入がそれほど伸びていないのは、「必要最低限の部材の輸入はするが、生産設備などの輸入は控えているから」(韓国紙デスク)だ。
つまり、将来の生産増や雇用拡大につながる設備投資は増えていないということだ。統計を見ると、2013年1~6月(上半期)の設備投資は前年同期比で8.2%のマイナスとなっている。7~9月期には同1.8%増となったが、商品輸出の伸びに比べるとまったく弱い水準だ。
設備投資と並んで国内消費も引き続き弱く、これも「輸入低調」の大きな要因となっている。だから、韓国の産業界では、2013年の経常収支拡大を「不況型黒字」と呼ぶ向きもあるのだ。
サムスン電子や現代自動車の活躍で、スマホや乗用車の輸出は確かに増えてはいる。海外建設工事も受注が拡大している。中国人観光客も多い。こういう経済へのプラス効果もあるが、投資も消費も弱く、これが輸入を停滞させ、結果的に黒字額をさらに膨らましたのだ。
韓国銀行が10月の国際収支統計を発表した翌日(11月28日付)の「毎日経済新聞」の社説のタイトルもだから「史上最大の黒字に隠れた危険信号を読み取れ」となっている。 もう1つ、産業界がもっと警戒していることがある。…
◆「ウォン高進行」に強い警戒感
もう1つ、産業界がもっと警戒していることがある。経常収支の黒字額が拡大していることで、「ウォン高」がじわじわと進行しているのだ。 輸出依存度が高い韓国の産業界が最も嫌うのが「ウォン高」だ。「親大企業・財閥」を掲げた李明博(イ・ミョンバク)政権は、だから露骨なほどに「ウォン安」誘導を図った。
ところが、2012年後半から状況は一変している。「1円=14ウォン」前後で推移していた、円/ウォンレートは、2013年に入って1円=11ウォン前後が定着していた。経常黒字の増大が定着したこともあり、最近は1円=10ウォンの水準に近付きつつある。
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「韓国経済新聞」は11月29日付の1面トップで「サムスン電子、現代自動車、ウォン高非常経営」という記事を掲載した。両社ともに現在策定中の2014年の経営計画で大幅なウォン高を前提とした「非常体制」に突入したという内容だ。
この記事によると、両グループを含めた韓国の30大グループの「想定為替レート」は、2013年には「1ドル=1089.1ウォン」「1円=12.11ウォン」だったが、2014年は「1ドル=1069ウォン」「1円=10.74ウォン」に変更したという。 ドルに対してより円に対する変動幅が大きく、これが自動車や鉄鋼の世界市場での競争力に大きな影響を与える恐れがあるという。
◆企業は足元の業績確保で精一杯
では、また「ウォン安誘導」に戻ればいいのか。そうもいかない。米政府はここ数年、韓国政府の為替介入に関心を持ち、各種報告書の発表などで韓国政府を牽制している。韓国政府も、為替操作という疑惑を持たれないよう、「為替水準は市場に委ねる」という方針を繰り返している。
「過去最大の経常収支は、もちろん、よいニュースではある。だからといって諸手を上げて喜べるかと言われると、まったく そうでもない。それどころか、自分の会社の足元の業績確保で精一杯だ」。韓国のある大企業役員は、こう語っていた。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39338?page=1
★韓国の為替操作は見え見えだが。★サムスン、現代の失速が確実で先が見えない韓国経済。