「親ロ派」とはどんな集団か 多くのプロ級戦闘員
2014/7/26 23:43
日本経済新聞 電子版
ウクライナ東部ですでに3カ月以上も政府軍との戦闘を続ける親ロシア派武装勢力の総数は4千人以上とも、2万人とも推定され、地元出身者だけでなく、ロシア各地から数多くの志願兵が続々と加わる。1991年のソ連崩壊に伴い多発した民族、地域紛争を実際に戦った経験を持つプロに近い戦闘員だ。

「ドンバス(ウクライナ東部)への義勇兵」「ドンバス支援を」。ロシアの交流サイト「ブ・コンタクテ」をはじめインターネット上には、戦闘員を募集するいくつものページがある。モスクワなど都市の街角にも、連絡先を記した募集のポスターが貼られる。
親ロ派武装勢力には数多くの独立した部隊が存在し、連携しながら戦闘を続けている。ロシアの大衆紙のインタビューに応じたある部隊の幹部によると、応募資格は軍事経験のある26歳以上で、平均年齢は約35歳。「極東などロシア全土から応募者がある」という。
こうした志願兵の多くが、旧ソ連地域やバルカン半島の紛争に参加した実戦経験を持つ。モルドバでロシア系住民が独立を宣言した沿ドニエストル紛争やロシア南部のチェチェン紛争などで、転戦した事例もある。正規軍に属した人も多く、重火器や最新兵器の扱いにも習熟している。
民族主義的な思想を持った人物が多いのも特徴だ。ロシアのプーチン政権を支える保守層や民族主義政党の「祖国」、左派のロシア共産党の支持者も少なくない。歴史的にロシアの辺境防衛に当たってきた軍事・社会集団「コサック」も部隊を送り込んだ。
雑多な部隊を統率するのが、ドネツク州で親ロ派が一方的に創設した「人民共和国」の軍事部門を率いるイーゴリ・ストレルコフ司令官(別名はギルキン)。ロシア国籍で、チェチェン紛争などを転戦した。ロシア連邦保安局に勤めた経歴があり、ウクライナ保安局はロシア軍参謀本部情報機関の現役将校とみなす。
ドネツク州の親ロ派トップのアレクサンドル・ボロダイ氏はモスクワ出身。沿ドニエストル紛争で志願兵となり、軍事ジャーナリストやPRのコンサルタントの経験がある。ストレルコフ氏とは90年代から顔なじみで、ともに南部クリミア自治共和国政府のアクショーノフ首相の右腕となり、3月のロシアによるクリミア編入で暗躍した。
一方、ルガンスク州で親ロ派を率いるワレリー・ボロトフ氏は同州出身。ソ連軍空てい部隊に入り、アゼルバイジャンのナゴルノカラバフ紛争を戦った。そのボロトフ氏が7月初め、ナンバー2の首相代行に任命したのがマラト・バシロフ氏。ロシア中部出身で、プーチン政権に近い新興財閥「レノバ」傘下の企業で幹部を務めた。
親ロ派勢力には、足並みの乱れも見える。ウクライナの治安部隊出身者が多い有力部隊「ボストーク(東)」を率いるアレクサンドル・ホダコフスキー司令官はストレルコフ司令官らとの対立が伝えられた。ロイター通信には23日、親ロ派がマレーシア機撃墜に利用された可能性もある地対空ミサイルを保有すると認めた。
ロシアはウクライナ情勢の不安定化を狙って親ロ派勢力の指導者を「工作員」として操り、武器や戦闘員を送り込んでいると批判される。プーチン政権がどこまで親ロ派に強い影響力を持つのかは不透明な部分もあるが、「ロシア系住民を守る」彼らを見捨てれば、ロシアの保守層の支持を失う懸念が出ている。(モスクワ=石川陽平)